久留米大学医学部麻酔学教室
手術麻酔

麻酔科医って

 全身麻酔の場合、手術中の意識はありません。何かを訴えたり、自分で自分の体を守ることもまままりません。麻酔に使用する薬は呼吸、心臓の動き、血圧、体温などに影響します。そこで麻酔科医は近くにいて、危険な状況に陥らないように絶えず気を配っています。
 例えば、全身麻酔の時には人工呼吸を行い、酸素が十分に体のすみずみまで行き渡るように監視しています。また、点滴による水分や栄養の補給調節をした、出血が多ければ輸血をしたり、血圧が上がったり、下がったりしたらすぐに回復する処置を行います。
 手術前も患者さんの状態が改善するのを待った方が良いと判断される場合、あるいは手術中に患者さんの状態が急変し手術の続行が危ぶまれる場合、手術を延期・中止するのも麻酔科医の重要な役割です。

手術までの麻酔を受ける準備 

  • 手術前はどんなことに気をつけるの?

1.禁煙をしましょう。(喫煙により肺の合併症が起こりやすくなります。)
2.深呼吸の練習をしましょう。
3.痰を出す練習をしましょう。(手術後は痰が多くなります。)
4.できれば、ひげを剃りましょう。(呼吸の管を固定するためです。)
5.爪を切りましょう。(マニキュアも落としてきて下さい。)
6.常用薬を主治医に教えましょう。

  • 麻酔科医の術前回診

 手術の前日夕方(月曜日手術の場合は金曜日)に麻酔科医が病室を訪れ、カルテの記載事項から患者さんの情報を収集します。その後診察しお話を伺います。緊急手術でない限り、風邪をひいている場合、ぜんそく発作が見られる場合、糖尿病や高血圧がコントロールされていない場合等は安全の為、手術を延期する場合があります。

  • 手術前の絶飲食

 安全に麻酔を行うためには、胃の中の食べ物を空にしておくことが大切です。麻酔の時、胃の入り口の力が抜けて吐いてしまうことがあります。嘔吐あるいは胃から逆流した食べ物が肺のほうへ入り、窒息や重症の肺炎が起こる危険性が高くなります。決められた時間以降は食べ物や水分を口にしないでください。

  • 手術室に向かう前に

 手術中の安全確保のため、身につけている物はすべて取り外して手術室へ来ていただきます。入れ歯、めがね、コンタクトレンズ、指輪、ブレスレット、ピアス、ネックレス、時計などはすべてはずしてください。

  • 当日朝のお薬

 普段飲んでいるお薬のうち、必要な物(たとえば高血圧のお薬)は、当日の朝も内服することがあります。なるべく少量の水で内服して下さい。

  • 麻酔前投薬

 手術当日、不安感を和らげるため、あるいは手術の準備のために、注射もしくはお薬が病室で投与されることがあります。

  • 手術室への移動

 病棟の看護師さんの付き添いで、車付きの搬送用ベッド(ストレッチャー)もしくは車椅子で手術室まで移動します。

全身麻酔を受けるにあったって 

  • 全身麻酔って?

 痛みを感じる部位である中枢神経系(脳)に作用して痛みを感じないようにします。全身麻酔下では痛みや意識がなくなり、手術中の記憶は残りません。吸入麻酔薬をすっている限り、または静脈麻酔薬が点滴で投与されている限り眠り続け、止めると目が覚めます。

  • 全身麻酔の手順は?

1.マスクによる酸素吸入を行います。
2.点滴から麻酔薬が投与されます。(およそ十数秒で眠くなります。)
3.意識がなくなった後、人工呼吸用のチューブを気管に入れます。
4.手術が行われます。
5.麻酔からの覚醒(場合によっては麻酔を覚まさずに病棟へ戻ることもあります。)
 手術が終了して麻酔薬の投与を止めると、麻酔から覚めてきます。
 指示に従えるようになり、呼吸がしっかりしていればチューブを抜きます。
6.マスクからの酸素吸入、病棟へ戻ります。

  • 合併症について

1.歯牙損傷
2.嗄声、咽頭痛
3.吐き気、嘔吐
4.術中覚醒
5.手術中の体位によるこり、痛み
6.アレルギー反応
7.悪性高熱症           など

区域麻酔を受けるにあたって

 局所麻酔薬を使って神経を一時的に麻痺させます。その結果、手術を受ける部位を含む体の一部がしびれ、痛み刺激を感じなくなったり、動かなくなったりします。意識は保たれたままです。硬膜外麻酔と脊髄くも膜下麻酔があります。

硬膜外麻酔って?

  • 硬膜外麻酔って?

 脊髄は体の隅々までのびている神経と脳の中継地点であり、外からの衝撃を和らげるため水(髄液)に浮いた形になっています。更にその周囲を硬い膜と背骨が取り囲むように覆い、脊髄はしっかり守られています。
 硬膜外麻酔は脊髄を取り囲む硬い膜と背骨の間の狭い空間(硬膜外腔)に局所麻酔薬など痛み止めの薬を注入し、手術中・手術後の痛みをとる麻酔法です。多くの場合、直径1mmにも満たない柔らかいチューブを留置して、持続して痛み止めの薬を注入できるようにしています。
 全身麻酔としばしば併用されます。その場合、全身麻酔前の意識がある時に行います。

  • 硬膜外麻酔はどうやって行われるの?

1.横向きになります。(膝を抱え込むようにして、えびの様に背中を丸めます。)
2.背中を消毒します。
3.皮膚を麻酔します。
4.硬膜外腔に針を進め細いチューブを入れます。
5.仰向けにもどります。

  • 合併症について

1.血圧低下と吐き気
2.頭痛
3.下肢の知覚異常
4.局所麻酔中毒
5.麻薬性鎮痛薬の併用による副作用
6.感染
7.下肢の運動麻痺
8.チューブの断裂    など

脊髄くも膜下麻酔って?

  • 脊髄くも膜下麻酔って?

 腰から細い針を、脊髄を取り囲む背骨・硬い膜を通過させ、くも膜下腔に進めます。そこから局所麻酔を注入して、痛みを取る麻酔法です。
 硬膜外麻酔に比べて麻酔効果が確実で、知覚麻痺、運動麻痺がより強く現れます。チューブの留置は通常行いません。

  • どうやって行われるの?

1.横向きになります。
2.背中を消毒します。
3.皮膚を麻酔します。
4.くも膜下腔に針を進め、局所麻酔を注入します。(まもなく足が温かくなり痺れてきます。)
5.仰向けにもどります。(足が思うように動かなくなります。)
6.手術部位の麻酔効果を確認します。
7.ご希望により入眠していただきます。
8.手術終了したら病室へ帰ります。(下半身のしびれは数時間かけて徐々に取れてきます。)

  • 合併症について

1.血圧低下と吐き気
2.頭痛
3.神経障害
4.髄膜刺激症状   など