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  ペプチドワクチン療法

   ペプチドワクチンについて
  

 ペプチドとは、タンパク質の断片のことをいいますが、本臨床試験ではでは9〜10個のアミノ
酸からなる人工的に合成したペプチドを用います。使用するペプチドはアメリカ合衆国で行われ
た臨床試験や、本学医学部附属病院で行われている幾つかのがんペプチドワクチンを用いた臨床
試験で使用した製剤と同じ会社に依頼して合成された臨床用高品質の薬剤を用います。
 
 がんペプチドワクチンは、がん細胞に特有のペプチドを患者さんに注射し、患者さん自身の持
っている免疫の力を高めてがんの増大を抑えることを目指して開発されています。すなわち、ペ
プチドによって活性化された、ペプチドに特異的なリンパ球などの免疫細胞がそれを敵と認識し
て働き始め、がん細胞を攻撃し排除するだろう、というのがペプチドワクチンの基本的な考え方
です。従って、がんワクチンには、がん細胞に多く発現するが正常細胞には発現していない、
もしくは発現が極めて少ない抗原をがん関連抗原と呼び、がん関連抗原由来のタンパク質のうち
抗原性を持つアミノ酸配列を化学的に合成したペプチドを用います。このようなペプチドにより
賦活化されたリンパ球の一種である細胞傷害性T細胞(CTL)は、その抗原をもつがん細胞だけを
攻撃し、正常細胞は傷害しないことから、ペプチドワクチンが、副作用の少ないがんの治療法と
して期待されています。攻撃の目印となるペプチドは200種類以上あるといわれていますが、そ
のペプチドは人工的に合成することができます。これを樹状細胞がキャッチするとその情報をT
リンパ球に提示して、獲得免疫のT細胞が同じペプチドを持ったがん細胞などに集中攻撃を仕掛
けるという仕組みになります。
 
 これまでの私たちの研究により、がん患者さんの血液から採取したリンパ球を試験管内で種々
のペプチドと一緒に混ぜて刺激したところ、がんに特異的な攻撃作用を持つキラーT細胞が
HLA-A2、A24、A26、A3、A11、A31、A33陽性のがん患者さんのリンパ球から誘導もしくは
増加することが判明しました。個々の患者さんによって、キラーT細胞を誘導もしくは増加できる
ペプチドは異なりました。これらのペプチドへの反応性は、リンパ球の血液型でHLA-A2、A24、
A26、A3、A11、A31、A33陽性の患者さんのみに限ってみられる特性を有しています。

 今回の臨床試験では、多数のペプチド候補からその後の研究結果より有効性が高いと考えられ
る39種類(HLA-A2陽性患者さんに対しては12種類、HLA-A24陽性患者さんに対しては14種類
HLA-A26陽性患者さんに対しては4種類、HLA-A3,A11,A31,A33陽性の患者さんに対しては9種
類)に対して予め試験管内で検査した結果に基づいて反応性の見られたがんペプチドワクチンの
うち、反応性の高いものから最大4種類のペプチドを投与します。反応が1つのペプチドワクチン
にしかみられない場合、もしくはいずれのペプチドに対しても反応性がみられない場合には、本
試験には参加できません。このように、ペプチドワクチン療法は、患者さんの血液中に存在する
リンパ球もしくは抗体が効率よく反応できる幾つかのがんペプチドワクチンを用いて、がんに特
異的な抵抗力(免疫機能)を増大させることでがん細胞を特異的に攻撃し、殺傷することでがん
の増殖を抑制しようとする科学的根拠に基づいた治療法です。個々の患者さんにより選択するペ
プチドが異なりますので、テーラーメイド(オーダーメイド))型の治療法に属します。

 

 
 
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   テーラーメイドペプチドワクチンについて
  

  あなたは洋服を購入するときにどのようにして決めますか?デザイン・色・機能など様々な因
子がありますが、服のサイズも重要な因子の一つです。Small・Medium・Largeなどの既製のサ
イズの中から、なるべく自分のサイズに合うものを購入します。一方、既製のサイズではなく、
自分のサイズを測ってそれに合わせて洋服を作るものもあります。このような紳士服や婦人用コ
ート類を注文で作る仕立屋・注文服店のことをテーラー(tailor)といいます。テーラーで作られ
たものをテーラーメイド(tailor-made)といっています。
 
 さて、一般的な薬は、より多くの人がその効果を得られるように創薬されています。しかしな
がら、本当にそれらの薬はあなたにとって最も効果があるものでしょうか?答えは100%Yesとは
答えられないということです。見方を換えると、一人ひとりに最適な薬を提供できれば、より効
果的な治療が可能となります。ペプチドワクチンについて言えば、一定のペプチドを投与するよ
りも、一人ひとりに合わせた最適なものを提供するほうがより効率的な治療に結びつけることが
できるということです。これを先の自分にぴったりの服を作るということに準えて「テーラーメ
イドペプチドワクチン」といっています。

 容姿はそっくりな双子であっても性格や考え方が異なるのと同様に、一人ひとりの体内の免疫
機能は異なっています。その人の生活環境などで免疫細胞が遭遇してきたもの(抗原)にはさま
ざまなものがあるでしょう。興味深いことに私たちの体の中の免疫細胞は一度遭遇したもの(抗
原)について記憶する能力を持っています。そのような細胞をメモリー(免疫)細胞といってい
ます。いったん記憶されると、次に同じ抗原が再び体内に侵入してきた際に迅速に対応します。
「がん」という病気において、私たちの体はただ手をこまねいて傍観しているわけではありませ
ん。がんという異常事態に対して、そこにはがんに立ち向かおうとする免疫細胞たちが少なから
ず存在しています。テーラーメイドペプチドワクチンは、一人ひとりで異なる、がんに立ち向か
おうとしている免疫細胞を応援する(免疫機能の増強)ことによってがんを治療するものです。