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  よくいただくご質問

    ~ドクターに聴きたいこと~
      1.  痛みについての1回目
      2.  抗がん剤との併用についての1回目
      3.  がんの原因についての1回目
      4.  がんの原因についての2回目「遺伝性のがん」
      5.  がんと食事について1回目
      6.  がんと食事について2回目
      7.  がんと食事について3回目
      8.  がんと食事について4回目
      9.  睡眠について
      10.  がんと運動について

   1.痛みについての1回目


   Q1. 痛みをコントロールする方法をおしえてください。
   A氏(大腸がん)。ワクチン○回目の投与。
  このところ食欲はあるが、睡眠がうまく取れないときがあるとのこと。 抗がん剤投与を
  受けた夜などはとくに睡眠障害が起こりやすく、睡眠薬を使用しているとのこと。
  また下腹部痛や背部痛にたいしてはカロナールとロキペイン服用にておさまることが
  多いが時にうまく除痛できないことがあるとのことです。
     
 A1. 痛みの段階に応じた鎮痛薬を利用してください。
  ワクチンの効果を減少させるのは「食べられないこと」と「眠れないこと」ですので
 しっかりした痛み対策が必要です。 WHO(世界保健機構]では痛みを、軽度、軽度-中等
 度、中等度-高度の3段階に分けています。 また、各段階において以下のような鎮痛剤が推
 奨されています。

 いたみの強さ 鎮痛剤の種類
 軽度 非オピオイド鎮痛剤(製品名:上記のロキペインやカロナールなど多数)
 軽度-中等度 非オピオイド鎮痛剤  + 弱いオピオイド鎮痛剤(リン酸コデイン、
少量のオキシコンチンなど多数)
  中等度-高度 非オピオイド鎮痛剤 + 強いオピオイド鎮痛剤(オキシコンチン、
モルヒネ剤、デュロテップなど多数)

  A氏のお話をお聞きすると、弱いオピオイド鎮痛剤を頓服用としていつも所持し、突然
 の強い痛みやロキペインやカロナールでおさまらない場合に服用するのがお勧めです。オ
 ピオイド系のお薬は、副作用としては便秘などいろいろありますが、注意してお使いにな
 れば決して怖い薬ではありません。むしろ頓服として使用することで体調を崩さずにワク
 チン効果も期待できますので是非主治医に相談してください。

 参考文献:
  ・がん疼痛治療のレシピ(春秋社、952円+税、執筆・監修:的場元弘)
  ・オピオイドによるがん疼痛緩和(エルゼビア・ジャパン、4200円+税、
                国立がんセンター中央病院薬剤部 編著)
  ・トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント第2版 
            (医学書院、3800円+税、武田文和 監訳)
 
 
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   2.抗がん剤との併用についての1回目
  

  Q2. 抗癌剤はつらいのでもうやりたくないです。併用をやめてもよいですか?
  B氏(胃がん)はワクチンX回目の投与。胃がんに罹患してからいろいろがん治療について
  勉強して「抗がん剤」は身体によくないのでワクチンと抗がん剤の併用はうけたくないが
  よろしいですかという質問をうけました。
 A2. ワクチン単独でのがん細胞抑制には限界があります。
  B氏は抗がん剤服用にたいして強い不信感をお持ちの方で、初診以来、幾度かご相談を
 うけておりました。最終的には患者さんご自身がお決めになることですとお断りした
 上で、私どもとしては副作用の少ない抗がん剤の服用をお勧めしておりました。その理由
 は、ワクチン単独でのがん細胞抑制には限界があるからです。

  とくにB氏の場合胃がんですので、これまでのワクチン臨床試験結果ではワクチン単独で
 は臨床効果に限界がありました。幾度かお話いたしたのちにB氏はセカンドオピニオンを胃
 がん専門医に求められて、その結果ペプチドワクチンと副作用の比較的すくない抗がん剤の
 併用を少量から開始をしております。現在のところ、吐気や食欲不振などの予想される副作
 用が出ていないとのことでした。今後とも、「よく食事できているか」「よく眠れて
 いるか」
の2点に注意して、もし、いずれかが現れた場合には、かかりつけ医に相談して
 いただくことをお願いいたしました。

2015年3月3日の追記事項:
  最近の5年間で、がんワクチン外来でワクチンを受けられた進行胃がんの方が100名ほど
 になり、現在論文として発表する準備をしておりますが、副作用が比較的強くないレベル
 の抗がん剤との併用で、抗がん剤単独に比べて、良好な臨床効果(生存期間の延長)が得
 られております。一方、抗がん剤との併用を拒否されたかたや、長期間にわたり抗がん剤
 が併用できないほど体力が低下している方、腹水貯留の方などへのワクチン効果はそれほ
 ど良好でない傾向でした。

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   3.がんの原因についての1回目


 Q3. がんの原因について教えてください。
   C氏(大腸がん)はワクチンのX回投与。40歳代で発がんし、また肉親も大腸がんに罹患し
  たので「がんの原因や遺伝」について不安や疑問をお持ちであるとのこと。
 A3. 結果として遺伝子が傷つく(変異する)ことががんの原因となることが多い
  ようです 。

  がんの原因については、日常の生活のなかでの食べ物が35%、タバコが30%、ウイルス
 感染が10%位をしめ、お酒などもあります(下の図を参照してください)。

 
   参考「大阪府医師会HP」を参考に作成

  この原図は米国がん研究所のリチャード・ドール卿が長年の疫学研究をもとに1981年に
 報告されたデータに基づいて作成されています、現在でも広く受け入れいれられています。
 一方遺伝性の発がんは10%以下と言われています。

  詳しく説明すると少し専門的になりますが、例えばタバコを吸うことにより、体を構成す
 る細胞の遺伝子に「傷」がつきます。遺伝子の傷は、DNAの変異を意味します。ヒトの
 細胞のなかにはDNAが存在し、そこに我々のからだを構成しているタンパク質などの情報が
 暗号として記録されています。遺伝子の変異とは、その遺伝子の暗号に間違いが生じること
 を意味しています。タバコ、 食物の焦げ、紫外線、ウイルス感染などさまざまな外的要因
 (発がん要因)が遺伝子突然 変異を引き起こすことが分かっています。傷がつく遺伝子の種
 類として、細胞を増殖させるアクセルの役割をする遺伝子(がん原遺伝子)の活性化と、
 細胞増殖を停止させるブレ ーキとなる遺伝子(がん抑制遺伝子)の不活化が起こります。
 がん原遺伝子とがん抑制遺伝子は正常細胞の生き死に関係していますので、そこに傷(変
 異)がつくと細胞はどんどん増えて死ななくなります(不死化)。

  このように、がん細胞は、正常な細胞から、長い時間をかけて、遺伝子に2個から10個
 程度の「傷」がつくことにより段々と発生します(多段階発がん)。遺伝性のがんについ
 てはQ4で改めてお答えします。

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   4.がんの原因についての2回目「遺伝性のがん」


 Q4.遺伝性のがんについて教えてください。
  D氏(大腸がん)は40代で発がんし、また肉親も大腸がんに罹患したので「がんの原因や遺
 伝」について不安や疑問をお持ちであるとのこと
 A4. うまれつきの遺伝子の異常により発がんするケースのことをいいます。
  Q3で掲載した「がんの原因」の図の中に「その他が13%」という項目がありますが、
 そこには遺伝性のがんが含まれます。生まれつきの遺伝子異常が主な原因で発がんする
 ケースを「遺伝性のがん」いいます。 遺伝性のがんはがん全体では5-10%を占めると
 言われています。

  遺伝性のがんの特徴は若年性の発がん、複数の臓器に多発するがん、特定のがん種
(たとえば大腸がん)が家族内で複数名おられる
などです。 発がんの原因になる遺伝子
 の異常は60種類以上が知られています。がんの種類では比較的多いのが大腸がん、乳がん、
 卵巣がんです。

  D氏には遺伝性がんを対象とする「遺伝子カウンセリング」を受けられることをお勧め
 しました。受診されることにより、ご本人及びご家族のがんに関連する遺伝子の情報を知る
 ことができます。 その結果、既に発症している場合にはその治療方針、再発予防や進行阻止
 を、また健常のご家族の場合にはがん発症予防対策を知ることができます。
  現在では発がんの研究が飛躍的に進んでいますので、その予防も可能になってきており
 ます。例えば大腸の遺伝性がんでは大腸の炎症を食事療法やお薬(抗炎症剤)で抑えること
 により発がんが予防できます。

  希望される場合には有料ですが遺伝子異常の有無の検査を受けることができます。また同
 じ病気で悩んでいる多くの患者さんやご家族がおられ、それぞれが対処されていることを知
 ることもできます。遺伝性がんを対象とする「遺伝子カウンセリング」を受けられる主な大
 学病院やがんセンター施設は以下の如くです。
 なお、D氏は「久留米大学病院遺伝外来」
(http://www.hosp.kurume-u.ac.jp/medical/heredity.html)を受診されました。

●栃木県立がんセンター がん予防相談外来  
 〒320-0834 栃木県宇都宮市陽南4-9-13  
  ℡ 028-658-5151 (栃木県立がんセンター代表) 
 (http://www.tcc.pref.tochigi.lg.jp/consultation/01-03-02.html)

●埼玉県立がんセンター がん遺伝カウンセリング外来
 〒362-0806 埼玉県北足立郡伊奈町小室818番地  
  ℡ 048-722-1111 (埼玉県立がんセンター代表)   
  (http://http://www.saitama-cc.jp/department/iden-counseling.html)

●国立がんセンター中央病院 遺伝相談外来  
  〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1   
  ℡  03-3542-2511 (国立がんセンター中央病院代表)
  (http://www.ncc.go.jp/jp/ncch/index.html)

●がん研究会有明病院 遺伝子診療部外来  
  〒 135-8550  東京都江東区有明3-8-31  ℡  03-3570-0541 (医療連携課)
   (http://www.jfcr.or.jp/hospital/department/clinic/central/genetherapy/feature.html)

●慶応義塾大学病院 臨床遺伝学センター外来   
  〒160-8582 東京都新宿区信濃町35番地   ℡  03-3353-1211
  (http://www.hosp.keio.ac.jp/shinryo/gene/index.htm)

●信州大学医学部付属病院 遺伝子診療部
  〒390-8621 長野県松本市旭3-1-1
  ℡  0263-35-4600 (信州大学医学部付属病院代表)
  ( http://wwwhp.md.shinshu-u.ac.jp/departmentlist/bumon/idennsi.php)

●京都大学医学部付属病院 遺伝子診療部
  〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54  
  ℡  075-751-4350 (直通ダイヤル)
  (http://www.cac.med.kyoto-u.ac.jp/clinical_genetics_unit/index.html)

●独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 家族性腫瘍相談室
  〒791-0280 愛媛県松山市南梅本町甲160   ℡  089-999-1114 (直通ダイヤル)
(http://www.shikoku-cc.go.jp/hospital/guide/kranke/outpatient/support/genetic-familial/)

2015年3月3日の追記事項:
「遺伝性のがん」については、新しく開設したがんワクチンセンターホームページ「患者さん
 のお悩みコーナー」の第2回目で取りあげています。合わせてお読みください。

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   5.がんと食事について1回目


   Q5. がんと食事について教えてください。
  E氏(肉腫)はワクチン8回目の投与。以前より「がんと食事」についての相談を受けていま
 したが、最近御主人が配達の夕食を食べた後に体調を崩したので、ご自分で御主人の分も合わ
 せてお造りになるようになったとのことがあり、再度「がんと食事」について、相談を受けま
 した。
 A5.今回は西洋医学的な研究成果に基づいた「がんと食事」について説明します。
  Q3で「がんの原因」について取り上げましたが、がんの原因の35%は食事にあると言
 われています。そこでこのコーナーでは「がんと食事」について取り上げます。第1回目は
 西洋医学的な研究成果に基づいた「がんと食事」についてです。

 ① 不適切な食事は新しいがん細胞の増殖につながる。
   抗がん剤やワクチンで身体の中にあるがん細胞を排除しても、もし食事が不適切であ
  れば新しいがん細胞が次々に生まれてきます。 その結果、抗がん剤やワクチンの効果が
  帳消しになる可能性があります。 例えとしてはタケノコをお考えください。タケノコを
  とっても竹の地下茎を断たないとタケノコは次々にでてきます。 地下茎から水が供給さ
  れます。
   がん細胞にとって「竹の地下茎」とは血管のことであり、 水とは食事から摂取される
  栄養分のことです。 実際にがんの栄養血管を攻撃するお薬が最近次々と開発されていま
  す。がんの栄養血管を断つことでがん細胞に栄養がいかなくなり、がん細胞が死滅しま
  す。 また新しいがん細胞の誕生を防ぐことができます。ですから、「がんに効く食事」
  をとることはがんの予防と治療の両方にとって、とても大切なこと
です。

  ② 「日本人のためのがん予防法」での食事項目
   まず日本の国立がんセンターの「日本人のためのがん予防法」での食事項目をみてみま
  しょう。そこでは「食事は偏らずバランスよく。食塩の摂取は最小限に。 野菜不足、
  果物不足は避ける。加工肉や赤肉(牛、豚、羊など)は取りすぎないようにする。 飲食
  物を熱い状態で取らない。」と記載されています。 また米国対がん協会では4つのガ
  イドラインを出しています。
    (ⅰ) 食べ物の大半を植物性の食べ物から選びましょう
    (ⅱ) 高脂肪食品、特に動物性の高脂肪食品を控えましょう。
    (ⅲ) 身体を動かし、健康体重を目指し維持しましょう。
    (ⅳ) お酒を飲む場合でも控えめにしましょう。

 ③ 米国での食事を含む生活一般についての提言書
   更に米国では世界がん研究資金の支援を受けて1997年までの膨大な研究成果(がん
  と食生活についての4000論文以上)を調査して次のような提言書を出しています。食事
  を含む生活一般についての提言書です。
    (1) 食物供給と摂取:野菜、果物、豆類、精製度の低い澱粉質主体(玄米、全粒
       粉のパンなど)の主食、植物性食品が中心の食事にする。
    (2) 体重の維持:痩せと肥満は避ける。成人期の体重増加を5kg未満に抑える。
    (3) 身体活動の維持:仕事を通じて運動量が多くない場合には、1日1時間の早歩
       き、またはそれに相当する運動をする。週に1時間以上、強度の運動をする。
    (4) 野菜と果物:1年を通して、1日400gから800g、または5盛り以上の、野
       菜と果物を食べる。
    (5) 他の植物性食品:1日400gから800g、または7盛り以上の、穀類、豆類、
       芋類などを食べる。できるだけ加工されていない食品を選ぶ。砂糖を避ける。
    (6) アルコール飲料:飲酒は勧められない。もし飲むのであれば、男性1日2杯、
       女性は1杯未満にとどめる。
    (7) 肉類:赤みの肉を食べるなら、1日80g未満に留める。赤みの肉より、魚や鶏
       肉のほうが好ましい。
    (8) 脂質と油脂:高脂肪食品を避ける。特に動物性脂肪を避ける。適量の植物油
       を使う。
    (9) 塩分と塩蔵:高塩食品を避け、調味料や食卓での塩の使用を避ける。ハーブ
       やスパイスを調味料に使う。
    (10) カビの防止:かびた可能性のある食物を食べない。
    (11)  食品保存:冷蔵庫や他の適切な方法で食品を保存する。
    (12)  食品添加物と残留化学物質:適切に規制されていれば、添加物や農薬など
        の残存化学物質は害にならない。しかし、不適切な使用は健康への害と
        なる可能性がある。
    (13) 調理:焦げた食物を食べない。肉汁を焦がさない。直火で焼いた魚や肉、
        塩づけや燻製の肉を控える。
    (14) 栄養補給剤:上記の提言を守れば、がん予防のための栄養補給剤を飲むこと
        はおそらく不要である。
    (15) 喫煙:タバコを吸わない。

 ④ 西洋医学的な手法で食事のがんに与える影響をまとめるには限界がある
   この提言は世界的に受け入れられています。 しかし提言内容にはいくつかの限界が
  あり、がんの予防やがん治療に役立つでしょうが十分とはいえません。 なぜならば
  この提言書は1997年までの科学的研究成果をまとめたものであり、その後の
  新しい研究成果を反映させていません。

   最近の成果をまとめた提言書は、探した限りでは見つかっていません。 またこの
  提言書は政府の正式発表に近いので社会全体や国民生活に配慮した内容になってい
  ます。 さらに西洋医学的手法での研究成果のみが対象になっています。西洋医学的
  研究では無作為化比較試験という手法が主に採用されます。  
   対象の患者さんもしくは健常者を無作為に2つのグループにわけて、片方には試し
  たいお薬もしくは食品を取ってもらい、もう片方には偽薬もしくは非投与とすると
  いう手法です。よく考えますと食事はその都度10種類以上の違う食材を違う調理法で
  調理したものから構成されます。 食べる時間、場所、お相手の有無なども違います。
  従って食事のがんに与える影響を、西洋医学的な手法でまとめることには大きな
  限界があります。
単一の食材にして、例えば、玄米食が白米食に比べてがんを予防
  するかどうかを調べるとしましょう。 その玄米はどこの田んぼで取れた米なのか?
  どのように調理されたのか?で違います。また大量に同質のものを試験に提供する
  ことは困難です。
   次にトマトが前立腺がんを予防するかどうか調べるとしましょう。 試験に提供さ
  れるトマトは、いつだれがどこで作ったのかで味も栄養も違いますし、調理法でも
  大きく違います。 更に食べ合わせを考えると全て一回一回違います。 しかし西洋
  医学的研究手法では条件を一定にしないといけません。
ですからヒトの「がん
  と食事」の研究をまとめ上げることは至難のワザです。

  ⑤ カロリー制限はがんの予防や治療に有効である可能性が高い
   1997年以降の発がんと食事に関する研究成果の一部を紹介します。 例えば猿を
  使った研究では80%カロリー制限食で飼育すると殆ど発がんしない
という報告が
  なされる一方でヒトが糖尿病に罹患するとがんを併発しやすいということが分かり
  ました。更にがん細胞はせっかく私どもが摂取した糖分を横取りする巧妙な仕組
  みをもっている
ことが解明されました。従ってカロリー制限はがんの予防や治療に
  有効といえそうです。

  ⑥ むくみや腫れを抑える食事はがんの予防や治療に有効である
   また、がん細胞は炎症(むくみや腫れ)という生体を守るために起こる免疫反応の仕組み
  を巧みに活用し、むくみや腫れを起こさせて栄養血管を作らせて、そのなかで免疫担当
  細胞のうち、腫れを起こす細胞群に囲まれて増殖していることがわかってきました。
   がん細胞は自分を守ってくれる生体反応(免疫反応)を周りに集めて自分の増殖を続け
  ているらしいのです。 そこにはがん細胞を攻撃する免疫細胞(キラーT細胞など)が入っ
  ていきにくいようになっています。 従ってむくみや腫れを抑える食事はがんの予防や
  治療に有効といえそうです。

  ⑦ 食事療法はがん予防や治療にとって十分ではないが必要である
   このように最近の研究からは、がん細胞が好きな食生活とは「糖分を多めにとること
  と、むくみや腫れを起こしやすい食事をする」ことであるらしいということが示唆され
  ます。 腫れやむくみを防ぎ炎症を抑えるビタミン類や微量栄養元素は従来からよく知ら
  れています。 それらは野菜、特に生野菜に多く含まれています。そのために現在では
  菜食中心の食事や 野菜ジュースが見直されています。 但し、そんな食事をしていても、
  がんにならないということも保障できませんし、既にあるがんが治るということも定か
  ではありません。
   このように「がんと食事」については「これが絶対正しい」ということはありませんし、
  禁煙や運動という生活様式全体が深く関係しています。 しかし今日お伝えしたことは
  少なくともがんの予防や治療には十分ではないが必要であるということができます。

参考文献:・「がん」になってからの食事療法。米国対がん協会著、坪野吉孝訳・解説 
       法研(出版社)
     ・「がんに効く生活」 ダビッド・S・シュベール著 NHK出版

2015年3月3日の追記事項:
  Dietary Guidelines for American 2010がインターネットで入手できます。1997年の
 記載に比べて人口甘味料や人工油脂類に注意するように記載されておりますし、一日の
 塩分必要量は2グラム以下と記載されております。 膨大な文献も添付されております。
 近々にはDietary Guidelines for American 2015がイ ンターネットで入手できると予
 告させております。 また日本での関連資料はおおむね、米国の提言と類似しております。


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   6.がんと食事について2回目


  Q6. 玄米菜食と野菜ジュースを毎日飲んでいるのに体調がよくなりません。
 
 F氏(大腸がん)はワクチン初回投与。手術、抗がん剤投与や免疫療法をうけても有効性が
  得られず、1年前より「がんと食事」について勉強して(文献1と2)玄米菜食と野菜ジュ
  ースの大量摂取(2L/日)を実践してきた。 しかしがん増殖の歯止めがかからないとの
  ことでどのようにすればよいか相談をうけた。
 A6. 食事療法にも限界があります。
  前回もとりあげましたが食事はがんと深く関係しています。そのために世界中で多くの
 がんに効く食事療法が試され、発表されています。 その中で1930年代から最も長く実践
 されているのが「ゲルソン療法」です。 また、2005年になり、ダビッド.S.シュレベール
 博士が「がんに効く生活」(NHK出版 )を出版して、「がん患者の生活様式について」
 自らの闘病経験に基づいて記載しております。 一般的には、食事療法にも限界があり
 ます
し、西洋医学的な治療を合わせて実践しても有効性が得られない場合が殆どです。
  しかし、「がんに効く生活」に記載されている内容をすべてもしくは一部分実践した
 場合には長期生存が得られる可能性は高まるように思われます。 そこで今回はまず、
 その本のうち食物に関連した部分について取り上げます。 それ以外の部分を含めて一読
 されることをF氏にはお勧めしました。
 
 ダビッド.S.シュレベール著「がんに効く生活」から食物に関する部分のまとめ

 まとめ:西洋医学によって開発された医療技術を活用するとともに、適切な食事療法、
 運動療法、 及び精神の平穏な生活をおくることで、炎症や血管新生を抑え、がんを攻撃
 する免疫細胞 を活性化させ、がん細胞の増殖する環境をなくすもしくは抑えることが
 できる。
  キーになる文章
  ① 今日、がんを治すことができる代替治療法はひとつもない。
    
外科手術、化学療法、放射線治療、免疫療法といった西洋医学によって開発された
   技術に頼らずに、がんを治療することは考えられない。
  ② 統計学でのがん患者余命予測には限界があり、がん患者の余命は予測困難で
    ある。
    
同一のがんでも必ず長期生存者が存在する。これを「グールド博士は、自らも罹患
   した中皮腫の余命グラフを研究して、長期生存者を長い尻尾群と呼び、自分もその一
   人になった」
  ③ がんと闘うための4カ条  
    1.発がん物質のデトックス(解毒)*注1)  
    2.がんに対抗できる食生活 *注2)  
    3.適度な運動  
    4.精神的な平穏

    *注1)禁煙・禁酒・精製砂糖、精白小麦粉の過剰摂取をしない・動物性脂肪(肉、
        乳製品、卵)・マーガリンの過剰摂取をしない・環境汚染物質を避ける。
    *注2)以下の食べ物のうち多種類をかつ毎日摂取する:緑茶・ターメリック(ウコ
        ン)とカレー・ショウガ・アブラナ科の野菜(キャベツ類)・ホウレンソ
        ウ類・ニンニクや ネギ類・カロチノイドを豊富に含む野菜(人参やカボチ
        ャ、サツマイモ、トマトなど)や果物(柿、スカッシュ、杏など)・大豆類・
        キノコ類・ハーブ類・海藻類・オメガ3脂肪酸を含む食べ物(サケ、イワ
        シ類)・亜麻仁・セレンを含む食べ物(有機玄米、魚、甲殻類)・ヨーグル
        ト・ベリー類・柑橘類・ザクロ果汁等。
   ④ がん細胞の増殖を抑える3カ条  
    1.がん細胞攻撃の免疫システムを賦活化させること
    2.がん細胞が成長し、新しい領域を侵略するのに必要な炎症を作りださないこと
     *注3)
    3.がんの増殖に必要不可欠な血管の新生とそこからの栄養を供給させないこと
     *注4)
   *注3)炎症とがんの関係: 身体の組織が傷つくと修復するためにまず血管を広げて
      免疫担当細胞を呼び込み、異物( 細菌や死んだ細胞)を排除し、その後に修復
      を開始させる。新たに栄養源を運ぶための毛 細血管を作らせる。 このために赤
      く、腫れ、熱く、痛いとう反応(炎症反応)がおこる。傷ついた組織が修復され
      れば炎症は消える。しかし、がん細胞は炎症を起こさせる物質を作ったり作ら
      せたりし ていつも炎症反応を持続させているので「癒えない傷」と言われてい
      る。従って炎症を起こさないこと、今ある炎症を抑えることががん治療に有用
      である。
   *注4)がんの栄養源を断つには: がんは血管から栄養を得るため炎症を引き起こし、
      新しい毛細血管を作らせる(血管新生)ので、その毛細血管を枯らすことで栄
      養源を断つことができる。 お薬としてはアバスチンなどの血管新生抑制薬があ
      り、自然界では緑茶、キノコ、ハーブ 、緑色野菜などの食べ物が知られている。
      また炎症を抑えるお薬としてはステロイドホルモンやロキソニンなど多数販売
      されているし、自然界では 注2)にあげた野菜や果物に炎症を抑える作用が
      あることが知られている 。
    
  炎症と発がん(代表例
    ・胃がん:ピロリ菌感染
    ・肺がん:タバコでの炎症
    ・喉頭・咽頭がん:タバコでの炎症
    ・食道がん:タバコ、食道炎
    ・中皮種:アスベスト炎症
    ・肝臓がん:肝炎ウイルス感染
    ・大腸がん:大腸の炎症
    ・子宮頚がん:パピローマウイルス感染
    ・膀胱がん:タバコ、寄生虫感染
    ・血液がん:白血病ウイルス感染
    ・上顎洞がん:EBウイルス感染
    ・皮膚がん:紫外線での炎症
    タバコには数十種類の発がん物質が含まれるので炎症のほかに直接発がんもおこす。
    紫外線やウイルスにも発がん作用あり。


2015年3月3日の追記事項
   がんワクチンセンターを受診された患者さんで、玄米菜食と野菜ジュースの大量摂取
 (1 ~2L/日)を実践して体調を崩しておられる方が多数にのぼることが判明しました
  ので 、今回追記いたします。

   玄米菜食の問題点:
  ① 玄米を発芽させないで食べるとかえって体に良くない
    玄米を発芽させないで炊飯しますと玄米の良さ(発芽部分に体調をよくする作用を
   もつ各種成分が誕生)がなくなるのみでなく、味もよくなく食欲低下をきたしやすく、
   更に消化不良になり、下痢・軟便を引き起こし、腸の炎症を引き起こす可能性もあり
   ます。
   ② おいしく、安全に玄米を食べるための注意点
    玄米は、必ず、農薬のかかっていないお米もしくは、低農薬の玄米を選んでくださ
   い。そして、発芽させてから、圧力釜で、炊飯してください。 発芽させるには、炊飯
   前に、夏ですと半日くらい、冬ですと1日くらいは、玄米を水につけることが必要で
   す。 発芽しているかどうかは炊飯後に一粒ごとに目のような斑点(発芽点)があるか
   どうか 確認してください。そしていただくときは、ゴマなどをかけて食べると消化が
   よくなります。
   ③ できれば「市販品」を購入するのではなく「ご自分で発芽」させてください
    
発芽させる手間が面倒ということで、市販されている発芽玄米を食しておられる方
   もおられますが、あまり推奨できません。 一度発芽させてから加工処理しております
   ので、もう一度、水にもどしても生命を芽生えることはありませんし、味も、自分で
   作った発芽玄米とは大違いです。それから、がんワクチン外来においでの方の大半は
   60歳以上ですので、消化機能は低下しております。 3食とも発芽玄米では、長続きし
   ませんので、3分や5分つきにするとか、一日1回にすることをお勧めします。

   野菜ジュースや水分の大量摂取(1~2L/日)の問題点:
  ① ジュースを大量に飲むと体は冷える
    まず体が冷えてしまいます。 水ぶくれ(漢方では水毒とも言いますが)になり、体調
   不良の原因になります。 大便は軟便になりやすく、それも体調不良の原因になります。
   体が冷えてしまいますと、血流が悪くなります(漢方では瘀血とも言います)。 がん
   細胞は、瘀血状態の体を好む
といわれております。 がん患者さんの多くは60歳以上
   ですので、若いときに比べると、体温維持能が低下しており、すぐに冷え症になり
   がち
です。とくに閉経後の女性の多くは冷え症です。
  ② 野菜ジュースががんに効くという科学的根拠はない
    
ジュースや水で腹いっぱいになり、必要な食べ物をとれなくなることもありますし、
   食欲も低下します。 何よりも大切なことは、野菜ジュースや水分の大量摂取(1~2
   L/日)の問題点は、がんに効くという科学的根拠に乏しいことです。
    厚生省では専門家に依頼して、民間で流行している「がんに効く方法」(民間療法と
   ここでは呼びます)が、本当に有効なのかどうか調査をしました。 その結果、調査し
   たかぎり、がんに効くといえる民間療法はなかったと報告
しております 。 海外で
   も実施しておりますが、同様の結果であります。
     反面、運動を取り入れる患者さんは、運動を取り入れていない同じ病気(たと
   えば大腸がんや乳がん)の方よりも明らかに長生きしていると報告
しております。
   野菜ジュースや水分の大量摂取(1~2L/日)の問題点については、星野恵津夫先生
   が書かれた「がん漢方の奇跡」に、詳しく書かれております。 また同書は、がん治療
   のための漢方薬について、詳しくかつ解りやすく書かれております 。ご興味のある方
   は是非ご覧ください。

     参考文献: 「がん研有明病院で今おきている 漢方によるがん治療の奇蹟」
          星野恵津夫 著 海竜社  1429円+税


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   7.がんと食事について3回目


 Q7. 抗癌剤の中止時期と再発予防に適した食事を教えてください。
  G氏(胃がん)はワクチン12回目投与。抗がん剤とワクチン併用療法にて、がんがいまは
 消えた状態にあるので、今後抗がん剤を中止したいがいつ頃がよいだろうかという相談と、
 どのような食事をすれば再発が防止できるかという相談を受けました。
 A7.抗がん剤は主治医とよく相談し、食事だけでなく運動も心がけてください。
 
ただし、食事療法にも限界はあります。


  このままの、がんが消えた状態が続けば、今服用されている抗がん剤はいずれ中止する
 時期がくるでしょうから主治医とよく相談されるようにと、まずお答えしました。また、
 「がんの再発を防止するためには、やはり、食事に気をつけ、また運動を取り入れて、腫
 れやむくみを起こさないようにしたほうがよいと思われます」(Q5、Q6も参照してくだ
 さい)と申し上げました。しかし、食事療法には限界があり、西洋医学的な治療と合わせ
 て、実践しても有効性(再発防止)が得られない場合が多く見られます。
 前回のQandAコーナーに記載しましたが、デビッド.S.シュレベール氏「がんに効く生活 」
 には「西洋医学によって開発された医療技術を活用するとともに、適切な食事療法、運動療
 法、及び精神の平穏な生活をおくることで、炎症や血管新生を抑え、がんを攻撃する免疫細
 胞を活性化させ、がん細胞の増殖する環境をなくすもしくは抑えることができる」 と記載
 されています。ぜひお読みくださいとお伝えしました。

追加事項(2014年5月20日)
 ① 厳格すぎる食事療法がときにがんの再発の原因となる
  「長く食事療法を続けていると、だんだんとつかれてしまうことがあります。体調良好
  な状態がつづくとつい気をぬく場合があります。そのようなときに限って、無理をして
  長い旅行や仕事を目いっぱいするようになると、体調不調になり、カゼ症状が出ること
  がよくあります。がんの再発は、そのような、体のなかに炎症がおこる(カゼ症状など
  で高熱がでる)ことを契機としてよく再発しますので、注意してください」とも付け
  加えました。 「そのような事態を避けるのは、あまり厳格な食事療法を長く続けな
  いで、ほどほどにして、時には好きな食事をしてください
」と申し上げました。

 ② 漢方薬ががんや自己免疫病に対して注目されている
   漢方薬が西洋医学ではなかなか有効性がえられないがんや自己免疫病に対して注目
  されています。西洋医学も漢方などの東洋医学も、がんという「病の帝王」のような
  病気には必要になります。漢方やがんと食事に興味のある方、抗がん剤の副作用で悩
  んでおられる方は、「がん漢方 」(北島政樹監修、今津嘉宏編)(南山堂)や「漢方によ
  るがん治療の奇跡」(星野恵津夫、海竜社)をご覧ください。
   シュレベール氏に代表される、炎症や血管新生を抑えることががん治療に有効である
  という考え方は、2000年代からの新しい抗ガン薬時代を築きあげたジュダー・フォー
  クマン氏 の「がんの栄養源を断つにはがんの血管を作らせないことががんの治療に
  有効」とする学説とその証明である「血管新生抑制因子」の発見に大きく影響を受け
  ています。

  (文献:O;Reilly, M.S.,Folkman,J.他、Angiostation: Anovel angiogenesis inhibitor
  that mediate the suppression of metastasis byLewis lung carcinoma. Cell 79, 315-
  328, 1994 )1930年代にゲルソン療法を開発したゲルソン氏が「がん細胞は一種の浮
  腫状態にある」と予言したことは、その後になって、フォークマン氏らにより「がん
  組織は浮腫状態にあり、炎症と血管新生を繰り返して増殖を続けている」という研究
  成果によって立証されたといえます。

    一方、東洋医学では、がんに対して、薬膳という食事療法を2000年も前から開発
  してきました。今の日本ではそのような薬膳の材料が入手困難ですが、そちらに興味
  のあるかたは、「防がん・抗がんの薬膳」(辰巳洋,源草社)を参考にしてください。
   実際には、その薬膳の中に含まれている成分を、健康保険を使って、かかりつけの
  先生から漢方薬として、処方してもらうのがおすすめ
です。

   薬膳や漢方薬では、がんの周りの腫れ(炎症)を、瘀(お)血状態と表現しています。その
  腫れをとる漢方薬を駆瘀血剤と呼んでいます。 代表的な駆瘀血作用のあるお薬は、
  桃仁、牡丹皮、当帰、紅花、蘇木、川芎、赤芍などです。 それらが含まれる漢方薬に
  は、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、通導散、当帰芍薬散などです 。 興味のあるかたは、
  少し専門的ですが、「治療漢方44の鉄則」(坂東正造編)(メデイ カルユーコ
  ン社)
を参考にしてください。 繰り返し説明しておりますが、がん細胞が体のなかで
  増えるには栄養を血管から得る必要があります。
そのためにがん細胞は周囲に
  腫れ(炎症)を作り血管を作らせます。がんは治らない傷と シュレベール氏は呼んで
  います。その腫れをつくらせないような生活(食生活、運動、睡眠、カゼをひかない
  など)が、彼の名著「がんに効く生活」です。 その著書は2009年に出版されて全世
  界でベストセラーになりました。

   その結果、世界各地から講演の依頼が続き、シュレベール氏は多忙な生活をせざる
  を得なくなり、疲労が重なり、遂に、脳腫瘍の中でも、もっとも予後の悪い膠芽腫に
  悪性転換しました。そして世界中から惜しまれて永眠されました。もっとお知りにな
  りたい方は「さよならは何度でも」(デビッド.S.シュレベール,水声社)をご
  一読ください。なお、このQ and Aでは、再発予防の方を取り上げましたが、すべての
  がん患者さんに、共通する「がんと食事」として記載しております。  

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   8.「がんと食事」について4回目


 Q8.胃全摘の患者はどのように食事をすれば良いのですか?
  I氏(胃がん)はワクチン4回目投与。初回受診時に、胃をすべて摘出しているためにどの
 ような食事をすればよいかという相談を受けました。
  
 A8. 食事1回の量を減らし、回数を増やし、がんの嫌う内容の食事にしてください
  6回位にわけて少量毎を食事されることや、メニューについては、がん細胞の嫌いな食事
 内容(これまでこのコーナーで紹介した「がんと食事」についての内容)についてご説明
 し 、その資料もお渡ししました。

 ① 減塩や野菜だけの食事では食欲がわかなくて困っています。
  ところが、ワクチン4回目になり、減塩や野菜だけの食事では食欲がわかず困っている
  という相談をうけました。そこで、最近出版された、あまり塩分とか特定の事項や人参
  など特定の食べ物にこだわることなく、食べ物が精製か未精製かにこだわったハイマン
  先生の著書を紹介いたしました。

   「超代謝ダイエット:ニュートリゲノミクスに基づく7つのカギ」: マークハイ
    マン著 中央アート社 2600円+税」

  この書は、栄養遺伝学的視点から現代人の食事について警鐘をならしております。
  精製食品(白米、精製パン、うどんやケーキなど通常のお店で販売されている食べ物)
  は、遺伝子の働きを疲弊させ、肥満や慢性炎症を引き起こすが、未精製食品(玄米、
  野菜、お魚など農家、八百屋や魚屋にあり、新鮮で無精製で、何も手を加えていない
  食べ物)は、肥満や慢性炎症を引き起こさずに、健康維持に不可欠であると主張して
  おります。
    そのなかでも、がんの進行と直接関連のある炎症については6つのステップをあげ
  て炎症を抑える食事を勧めていますので紹介します。
   (1) 炎症をおこす要因を除く: 糖分過剰摂取、精製食品、トランス脂肪摂取、
      運動不足、
      喫煙等のほかピロリ菌感染症などが要因になります。
   (2) 炎症シグナルを切る: 精製食品を少なくし、運動し、ストレスを少なくする
      と核因子カッパBという炎症をおこす 遺伝子のスイッチを切ることができる。
   (3) 炎症を減らす未精製食品をとり、炎症を起こす精製食品を避ける。
   (4) 炎症を減らすハーブを使う:緑茶、ショウガ、ターメリック(ウコン)等
   (5) 炎症を減らすサプリメントを使う:乳酸菌食品等
   (6) 炎症の程度を検査する: C反応性蛋白質(炎症が起こった時に肝臓で産生さ
      れる蛋白質 でどこの病院でも簡単に計れ ます)。CRP(C-reactive protein)
      といわれています。正常値は0.3mg/dL 以下です。

 ② 栄養学的観点からみた食事と免疫学的観点からみた食事  
    この本には、読者が自分で採点できるコーナーや日本食版メニューなどもあり、
   少し専門的ですが、読みやすくなっております。ハイマン先生はボストン近郊で
   ダイエットに失敗して体調を崩した患者さんを永年治療されておられ、その経験か
   ら、肥満、高血圧、高脂肪症、さらには「がん」を治療するため 、医食同源
   のお考えのもとに、栄養遺伝学的な見方から食事について書かれています。

    ハイマン先生は「食べ物が遺伝子に話しかける仕組みのこと」を栄養遺伝学と
   定義しております。私のように免疫を研究している者は、食べ物は最初に胃や
   腸の免疫担当細胞に話しかける(接する)と考えてきましたので、新しい見方
   として注目しています。
ちなみに免疫は「自分と自分でないもの(異物)を見分
   けて、自分でないもの(異物)だけを攻撃する身体の仕組み」と定義されています。

    ヒトを含む哺乳類は、何万年も前から食べ物を摂取して生きています。 その食べ
   物とは、つい年位前までは、未精製の食べ物(農家、八百屋や魚屋にあるもの )が
   主でした。 それらが胃腸から摂取される場合、未精製の食べ物はそれ自体が異物では
   ありますが、私たちの体のなかの免疫細胞は異物としては認識しません(これを食物
   寛容と言います)。 従って、通常は免疫反応(アレルギー反応)を起こしません
  (ただし一部のかたは特定の 食べ物へのアレルギー反応を
   おこします)。 しかし、この200年位前から次々と精製食品や人口食品(トラン
   ス脂肪酸など)が、私たち の体内に入ってきています。 免疫学的にみて、これらの
   200年以内にでてきた食品に対して、哺乳類が異物として認識し ているのかいないの
   か定かではありませんでした。

    ハイマン先生は、栄養遺伝学の観点から、精製食品や人口食品は、遺伝子の
   機能を狂わせ 、炎症反応を惹起すると警鐘を鳴らしています。

   炎症反応は免疫細胞が異物を認識したときは必ず起こる反応ですので、免疫細胞は、
   精製食品や人口食品を程度の差はあれ異物として認識している可能性があるといえ
   ます。今後の研究で精製食品や人口食品に対する免疫反応の有無については、解明
   されてくるでしょう。
    上段で記載しました専門的な考察は、別として、減塩や野菜だけの食事では食欲が
   わかず困っておられるがん患者さんやご家族、またダイエットに失敗した方にはお
   勧めの本です。また、肝臓にがんがあり肝機能が悪化しているかたや、甲状腺機能
   低下のかたへのレシピも紹介されています。

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   9.「睡眠」について


  Q9.睡眠についてのご質問:Cさん(血液腫瘍)はワクチンの2回目投与にて来院し
  ました。よく眠れないので睡眠薬を飲んでいますが、大丈夫でしょうか? 病気のこ
  とを考えるといろいろ心配になり眠れないので、つい睡眠薬をのみますが・・・・

   ( 同じようなご質問が随分よせられましたので、今回このコーナーで取りあげました。
    Cさんはがんによる症状、例えば、痛みや発熱などは見られない方です。もし痛みがあ
    る場合は、そちらの治療がまず必要です。このコーナーの最初に取り上げていますの
    で、そちらをお読みください。)

 A9. 睡眠と免疫は深い関係がある事を説明しながら以下のように対応します。

 ① 「身体の中にリンパ球は2兆個ほどあり、そのリンパ球の一部が夜の間に増えます。
  そのためには、ヒトによって個人差はありますが、概ね8時間くらいは休んでいただか
  ないとその作業がうまくいきません。細胞や蛋白質が作られるには約8時間かかるから
  です。免疫機能を維持するための誰でもできる最も簡単で確実な方法は「ほどほどに
  食べて夜8時間は電気を消してヨコになること」です。眠っているという自覚がなく
  とも、電気を全て消して布団やベットでヨコになっていても同じ免疫効果があります。
  その間にがん細胞にとって怖いT細胞や抗体をつくるB細胞もふえます(図)(図は
  文献を参考に作成しています。) 免疫のバイオリズム(生体時計)では、朝になると、
  私たちが食べたり飲んだりする行動をとるのと同様に、異物を排除したり生体を守る
  ようなナチュラルキラー(NK)細胞やキラーT細胞が活発に働き始めます。図ではN
  K活性を示しています。一方、夜になると、今度は免疫細胞や関連蛋白質が増える必
  要がありますのでヘルパーT細胞や抗体をつくるB細胞が増加します。

           
 
 ② 電気が普及する前には人類は暗くなるとヨコになっていました。それにより免疫機能
  は維持できていました。電気のある現代でも免疫機能のリズムは変わっていません。
  病気(がん)のことを考えるといろいろ心配になり眠れないのは、多くの方に共通の
  悩みです。そのような場合には、眠れなくとも免疫は、暗いところで8時間ヨコになって
  いれば大丈夫と申し上げております。「無理に眠らなくとも免疫は大丈夫ですよ」と申
  し上げるだけで、睡眠薬のお世話にならなくなった方が随分おられます。

   自然な朝の目覚めは、太陽光が、瞼を閉じていても、そこから入り、網膜→脳→副腎と
  伝わることで起こるといわれております。免疫のバイオリズム(生体時計)の朝ステージ
  の始まりです。そして、太陽の光がなくなった夜には副腎皮質ホルモンの作用がなくな
  り、免疫の夜ステージが始まります(図)。リンパ球や蛋白質が増える時間帯となりま
  す。青色LEDの光は、ラジオや目覚まし時計などに使われていますが、網膜を刺激しま
  すので、視神経から脳に伝わり、副腎皮質刺激ホルモンの分泌を促すことが、最近の研
  究でわかってきました。副腎皮質刺激ホルモンの分泌は次に副腎に伝わり、副腎皮質ホ
  ルモンの分泌を促します。副腎皮質ホルモンが分泌されると、免疫のバイオリズムが朝
  ステージとなります。そのため青色LEDの光でも、免疫のバイオリズムをかく乱する可能
  性があります。
  
  ③ 一日中よく動いた時はどうですか?とこちらからお聞きします。そうしますと「そ
  ういえばよく寝ます」と答える方が多くおられます。当たり前のことですが、身体を動
  かすことと睡眠は連動しています。ですからできれば「一日1万歩」歩いてくれれば、
  よく眠れますとお話しします。
  
  ④ ところで、暗いところでヨコになっている間、リンパ球や抗体など作られますが、
  脳も寝ているのでしょうか?とこちらからお聞きします。Cさんは??というお顔に
  なりましたが、実は医学的にもまだよくわかっていないようです。

   しかし最近、脳は夜ヨコになっている間、その日のさまざまな出来事や情報を整理し
  てファイルをしているという説がでました。夢はその作業の中で生まれるようです。
  もし、それが本当であれば、暗いところでヨコになっているだけで、うまく情報をフ
  ァイルしてくれるように思われます。 現在では、睡眠薬も副作用のあまりないものが
  開発されていますが、やはり長く続けるのはいろいろ問題があります。
   無理に眠らなくとも免疫は大丈夫と思って、脳の夜間の働き(整理整頓)を、睡眠薬
  で無理に止めない場合には、朝の目覚めがすっきりしますと、お話しします。

   ⑤ Cさんは4回目のワクチン受診のとき、睡眠薬いらなくなりましたと話されました。
  Cさんのように、このようなQandA のあとは、殆どの方は眠れないという悩みは解消され
  ているようです。ただしどうしても薬をやめるのは不安という方には、漢方薬の抑肝散
  (よくかんさん)か桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)(どちらも脳血流を増す作用
  があります)を睡眠前に一包お飲みくださいと申し上げております。

  文献:Abo T, Kawate T, Itoh K, and Kumagai K.: Studies on the bio-periodicity of
   the immune response. I. Circadian rhythms of human T, B, and K cell traffic
    in the peripheral blood. J.Immunol 126:1360-1363, 1981.



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   10.がんと運動について


  Q10.がんになったので運動を控えていますが、それで大丈夫でしょうか?
 A10. 世界中から運動を取り入れるがん患者さんは、運動を取り入れていない方
 (たとえば大腸がんや乳がん)に比べて明らかに長生きしていると報告されていま
 す。運動することで大便がよく出るなど胃腸の具合はよくなります。肺機能もよく
 なります。美味しく食べる事ができ、その栄養はがん細胞に横取りされないで自分
 のために役立ちます。身体が疲れると良く睡眠もとれます。自分流で歩くだけで十
 分ですからお金もいりません。どこでもいつでもできます。
  これら全ての理由から、運動は、がん対策としては最も重要なことですし、その
 臨床効果も確実です。是非始めてください。目安は「一日1万歩」です。一日60分が
 目安です。


 ★ 自宅に長くおられる場合には、食事・洗濯・掃除も身体を動かすことになりますので、
  いろいろな理由で運動や散歩が出来ない方はそれで代用できます。万歩計をつけておくと
  歩く場合と比較できますので便利です。また仕事をされている方では、車での通勤を電車
  や徒歩での通勤に切り替ることをお勧めします。電車通勤の方では、一駅手前で降りて自
  宅まで歩くことをお勧めします。

 ★ これまでがんワクチン外来に来られた方で、JR久留米駅から毎回歩いて受診された方と
  か自転車をレンタルして受診された方がおられます。片道徒歩で60分、自転車でも30分
  かかります。その方々では、がんの制御がうまくいっております。しかし、私どもがこの
  方法を患者さんにお勧めしているわけではありません。私どもがお勧めしているのは「一
  日1万歩」を目標に、出来るだけ身体を動かしていただくことです。

  ★ がんの種類や病態によっては運動が危険をもたらす場合があります。例えばがんが骨に
  転移している方が激しい運動をすると骨折の危険があります。また、乳がんなどで腋下の
  手術を受けた方が上腕を激しく動かすと炎症が起こり、がん細胞増殖につながります。ま
  ずは主治医に相談してから、危険を伴わない範囲での適度な運動が大切です。

  ★ 下半身が不自由で歩けない方では上半身のみで運動することが出来ます。たとえば上
  半身だけを使って、歩く時と同様に腕をよく振って体を動かすことです。座布団の上で
  マラソンするイメージです。自分にあった重さにバーベルを使って筋トレすることも可
  能です。少し汗をかくくらいがちょうどよいと思われます。

 ★ どちらも出来ない方には呼吸法(腹式呼吸法)が役立ちます。呼吸法の参考文献とし
  てはすでに多数出版されておりますので、そちらを参考にしてください。それらの本に
  なじめない方には「呼吸の本:(株)サンガ・加藤俊朗/谷川俊太郎著」が読みやすくで
  きていますのでお勧めです。

  ★ 適度な運動が何故、がん細胞の増殖を抑制するかもう少し説明します。
  ①  適度な運動は肥満体質の方などの余計な脂肪分を燃焼させます。余計な脂肪はがん
   細胞の貯蔵庫になっております。がん細胞は食事からの栄養分のみでなく患者さんの
   脂肪からも栄養を奪います。更に余計な脂肪分には、がん細胞増殖に有利なホルモン
   成分や脂溶性成分が豊富に含まれています。
  ②  適度な運動は、ホルモンバランスを良好にします。乳がん細胞の増殖を促進する女
   性ホルモン(エストロゲン)や、前立腺がん細胞の増殖を促進する男性ホルモン(テ
   ストステロン)の過剰分泌を抑えます。
  ③ 適度な運動は、エネルギーを消費しますので、血糖値を下げます。その結果、がん
   組織の炎症を鎮静化させるとともに、がん細胞増殖に必要なインスリンやその関係ホ
   ルモンの分泌を抑制します。
  ④ 適度な運動は、消化管の動き、特に大腸の動きを活発にして、排便を促進します。
   その結果、がんの周囲の腫れを沈静化させる作用があります。
  ⑤ 適度な運動はNK細胞の活性化を促進します。

  ★ がんのリハビリテーションが健康保険対応になりましたので全国の病院で専門医の
  指導を受けることが可能になっております。個々のがん種ごとにリハビリテーション
  マニュアルが確立されております。よく知られているのは、乳がん手術後のリンパ浮
  腫予防のためのマッサージです。頭や頸部のがんでは治療に伴って会話や食事摂取が
  できなくなるリスクがありますので、その予防のためのリハビリテーションが必要で
  す。胸の手術を受けた方、胃や大腸を摘出した方にもリハビリテーションマニュアルが
  確立されております。但し、主治医から運動や散歩を禁止されておられる方もおられま
  すので、まずは主治医と相談してください。
    参考文献: がんのリハビリテーションマニュアル・医学書院;辻哲也編集
         がんのリハビリテーション・中山書店・島崎寛将他、編集