プロブレム指向型診療記録(POS,POMR)について
久留米大学病院情報部 和田豊郁
プロブレム指向型診療記録とは,単にS・O・A・Pに分けて書くことではない.
医療における患者のプロブレムとは,病気そのもの(診断名)だけではなく,患者の金銭的問題や独居であるとか人間関係とかの家庭環境,入院が長くなると失職するなどの社会環境,家が急な石段を20段ほど上がったところにあるとか,文字通り敷居が高い等々の生活環境といった,環境・外的問題も含まれる.
したがって,プロブレムは最初から分かっているわけでもなく,問診中や身体所見を診ている最中や検査結果を見たときなどに,次々と見つかっていくものである.
プロブレムリストは,その患者に対して何を治療し,何を解決しようとしているのかが分かる一覧表であり,プロブレムが解決するたび,あるいは,新たなプロブレムが出現するたびに随時更新されていく必要がある.
そして,プロブレムごとに主観的情報(S),客観的情報(O),それらの評価(A),治療方針(P)がまとめられるのである.
患者に自由に話してもらうことと,プロブレムごとに記載すると言うこととは両立しがたく,紙でPOSを実現するためには,患者の訴えを一旦書いた後,整理して書き写さなければならず,電子化にて初めてPOS,POMRが実現できる可能性が出てきたのである.
POMRは,次のような仕掛けと運用によって実現できる.
診療記録は改行をもって一文とし,それぞれにタグを複数(いくらでも)設定できるようにする.
タグとは要するにプロブレムであり,既に付けられている病名や既に付けられている名称から選択することも,タグの選択画面から新たに病名や名称を作成することもできればよいわけだ.
ブログでは1つの文章に対してではあるが,自由にタグを付ける機能が実装されており,1つの文ごとにタグを付けるなど,特段目新しい技術ではあるまい.
タグは,診療記録を記載している最中に必ずしも付けなければならないものではなく,いつでも設定・追加・変更ができるようになっている必要があるし,つけないまま,という『運用』にも対応できなければならない.
この場合には,単純な時系列表示のみとなるだけである.
タグ(プロブレム)の設定をしなければ,単にS・O・A・Pに分けて記載されるだけであるが,タグを設定すればタグごとに表示をすることでプロブレムごとにまとめられた診療記録を見ることができる.
教科書的にはプロブレムには#1#2と番号を付けて管理する,となっているが,これは紙運用を前提としていたための方便であり,電子化されたらわざわざ番号で管理する意味はない.
そもそもこの番号には重要性という意味合いは全くなく,単なる整理番号だったわけであるから.
むしろ電子化のメリットを生かして,重要性にしたがって番号を振り直すようにした方が,よりプロブレムリストの意義があるように思う.
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