このコーナーは,腎臓病を患っておられる患者さんに腎臓病とはどんな病気かという情報を提供するページです.

I. 腎臓病とは,どんな病気でしょうか?

腎臓は尿を作って,その中に尿毒素を捨てている臓器です.
 腎臓病とは,どんな病気でしょうか? 例えば「胸が痛い」という症状があれば,心臓病かと思って循環器内科の看板のある病院を受診されるでしょう.「お腹が痛い」であれば,消化器を専門とする病院へ行くと思います.ところが,多くの腎臓病では,具体的に「ここが苦しい」「ここが痛い」という症状がありません.従って,例えば「腎臓が悪い」と言われても,患者さんは「尿は出ているのに何で腎臓がおかしいなんて言われるのかわからない」と考えていらっしゃる方が多いと思います.そこで,ここでは,どういった患者さんが腎臓病の可能性があって,腎臓内科を受診していただきたいか,を紹介します.腎臓内科を訪れてほしい患者さんは次のような方です.

1. 検尿で「タンパク尿」「血尿」があると言われた方
2. 「腎臓の機能が落ちている」と言われた方
3.「浮腫(むくみ)」がある方
4. 糖尿病を患っておられる方,特に網膜症がある方
5.高血圧を長く患っておられる方

 

 このような方には,自分の腎臓は大丈夫かということを考えて,腎臓内科のある病院/医院を受診していただきたいと思います.次に,ひとつずつ上記の症状がなぜ腎臓病の疑いがあるかを説明していきたいと思います.

なお,現在,病院/医院にかかっていらっしゃる患者さんは,主治医の先生とよく御相談のうえ,受診していただくようにお願いします


 
  

 1.尿に「タンパク尿」「血尿」が出ていると言われた方
これは,次の3つのタイプの患者さんに分けられます.
1)「血尿がでている」と言われた方
2)「タンパク尿がでている」と言われた方
3)「タンパク尿も血尿も出ている」と言われた方

1)「血尿がでている」と言われた方
 血尿は,腎臓から出る場合も,腎臓以下の尿の路(尿管,膀胱,尿道=まとめて下部尿路と言います)からでる場合もあります.腎臓の炎症(腎炎という)で血尿が出ている場合は,「腎臓内科」で診ることになり,下部尿路からの出血で血尿がでている場合は「泌尿器科」で診てもらうことになります.しかし患者さんには,同じ血尿でも,どこから出ているかわからないと思います.
 我々は,腎炎の血尿と下部尿路由来の血尿を区別して,腎炎であれば腎臓内科で診たり,下部尿路由来の血尿であれば泌尿器科を紹介したりしています.
 以前から何度も血尿を言われていても何ともないため検査を受けていない方や,最近初めて血尿を言われた方は,検査を受けることをお勧めします.

2)「タンパク尿がでている」と言われた方と3)「タンパク尿も血尿も出ている」と言われた方
 タンパク尿は,ほとんどの場合,腎臓の炎症(腎炎と言います)で腎臓から漏れて尿に現われます.従って,タンパク尿があれば,腎炎が疑わしいことになります.腎炎の時はしばしば血尿もタンパク尿と一緒に(あるいは血尿単独で)、腎臓からでてくることがあります.こういった方は,なるべく早く腎臓内科を受診することをお勧めします.

 多くの腎炎は,火事で言えば「ボヤ」です.しかし,「ボヤ」でも放置すれば広がってしまい,家(腎臓)を全焼してしまいます.家(腎臓)が焼けて,機能が低下することを「腎不全」と言います(事項参照).我々,腎臓内科医の最も大事な仕事の一つは,この「ボヤ」を程度の軽いうちに鎮火させて,腎臓の機能が落ちていかないようにすることです.




2.「腎臓の機能が落ちている」と言われた方

この説明はたいへんむずかしいものですので,すこし長くなります.

1)なぜ腎臓の機能が落ちているかわかるのでしょうか?
 「腎臓の機能が落ちている」って何でわかるしょうか? 実は,これは医者も患者さんを診察しただけではわかりません.採血をして検査をして,尿素窒素と言われる物質(BUN)あるいはクレアチニンと言われる物質の血液中の濃度が上がっていることによってしか「腎臓の機能が落ちている」ということは確かめられません.特に血清クレアチニン濃度は,腎機能をよく反映すると言われています.このパートでは,クレアチニンを考えることで,腎臓の機能障害をどう評価するかを考えていきます.
 クレアチニンは筋肉から出てくる物質です.従って筋肉量が多い方,つまり男性,若い方,大柄の方で高めに出ますし,筋肉量が少ない方,つまり女性,高齢の方,小柄の方で低めに出ます.久留米大学病院の基準値(正常値)では,男性0.6〜1.1 mg/dl 女性0.4〜0.7 mg/dlと男性の方が高めに設定されているのは,そういう理由です(施設によって基準値は異なります).例えば,血清クレアチニン値 1.0mg/dlは青年男子では正常範囲と言えますが,女性では高値であり,少し腎機能が落ちていると判断します.

 一般的に言って,男性で血清クレアチニン値が約2.0mg/dl以上,女性で血清クレアチニン値が約1.5 mg/dl以上を「腎不全」と言います(※).しかし血清クレアチニン2.0mg/dl(女性で1.5 mg/dl)程度の腎機能障害では,特に日常生活を脅かすような具体的な症状はふつう有りません.そのために,逆に「あの医者は,腎臓が悪いとか言って脅かして何ともないじゃないか」と思っていらっしゃる患者さんも多いと思います.そこで次に腎臓の機能とは何かを考えていきたいと思います.


※ 腎不全には,慢性腎不全と急性腎不全があり,ここで言う「腎不全」とは,慢性腎不全のことを指します.

2)腎臓の機能とは何でしょうか?
 腎臓の機能とは何でしょう? これもまた,説明するのが大変難しい質問です.簡単に言えば,「尿の中に尿毒素を捨てる力」と理解して下さい.「尿毒素」とは,身体のあちこちでできた老廃物のうち,腎臓が血液中から尿に捨てているものを指します.もちろん尿量がゼロになれば,尿毒素はまったく出ませんから,腎不全といえます.しかし,「尿が(量的に)出ていること」と「尿毒素が(尿へ)出ていくこと」は全く意味が異なります.(透析を必要としない程度の)腎不全の方は,尿量は十分出ているのに,腎臓が「尿の中に尿毒素を捨てる力」が劣っていると理解して下さい.
 「尿の中に尿毒素を捨てる力」のことを,腎臓が「血液中の尿毒素をきれい(クリア)にする」にするという意味で「クリアランス」と呼びます.デパートのクリアランスセールで言う「クリアランス」とほぼ同じ意味です(デパートでは品物がショーケースから売れて「はけていく」という意味でクリアランスという言葉を使います).
 腎臓の「クリアランス」と血清クレアチニンの値とは反比例の関係をとります.
例えば,腎機能が正常時(クリアランス100 %の時),血清クレアチニン1.0 mg/dlの方がいたとします(前述のように,これは主として男性患者さんに当たります.以下,この条件の方に限って考えていきます).その方の腎機能が落ちて,クリアランスが半分の50%になったとすると血清クレアチニン値は2 mg/dlになります.クリアランスが3分の1なら血清クレアチニン値は3 mg/dlに,クリアランスが5分の1なら血清クレアチニン値は5 mg/dlに,クリアランスが10分の1なら血清クレアチニン値は10 mg/dlに上がります.(たいへん大雑把ですが,おおよそこの程度に考えて下さい.)クリアランスが50 %以下の状態では,血清クレアチニン値は2.0mg/dl以上となり,前述したように「腎不全」と呼ばれます.(一般に,筋肉量が少ない女性では同じ程度のクリアランスの低下でも,血清クレアチニン値の上昇は少なくなります.)


3)尿毒症とは何でしょうか?
 前述の患者さんのクリアランスが10分の1になって血清クレアチニン10 mg/dl程度に上がった時にどうなるか考えてみましょう.この状態では,“尿毒素”と言われる物質の血液中の濃度も,正常時のおおよそ10倍程度に上がっていると判断されます.この時,この“尿毒素”の濃度が高い事によって,患者さんはいろんな中毒症状を起こすことがあります.これを「尿毒症」と言います.
 「尿毒症」とは,尿に直接関係ある症状ではありません.尿毒症とは,老廃物である尿毒素が体内に蓄積しておこる中毒症状で,食欲不振,吐き気,嘔吐などの消化器症状,呼吸困難などの心不全症状,「ぼんやりしている」「意識がない」などの精神症状,出血傾向といって「鼻血や歯ぐきの出血が止まらない」,「胃潰瘍の出血が止まらない」,など,いろいろな症状が,全身の臓器に障害がでる状態を指します.この「尿毒症」は多くの場合,透析によってしか治療できません.そして尿毒症の症状が出現した時でも,ほとんどの患者さんの尿は出ています.

4)「腎不全もサイレントキラーである」
 尿毒症が出現するほど重症ではない腎不全の方(男性で血清クレアチニン値が2mg/dl以上で8〜10mg/dl未満の方)の場合,他の大きな病気,たとえば,ネフローゼ,心不全,糖尿病,膠原病などがなければ,ほとんどの場合は症状が少ないものです.倦怠感や疲れやすさを自覚されることがありますが,肉体労働のお仕事でなければ日常生活に大きく支障をきたすような症状は一般的に現われません.ここが,腎不全のやっかいなところで,患者さんによっては,何ともないものだからと受診しない方や通院をやめてしまう方がいらっしゃる原因になっています.
実は,腎不全もサイレントキラーと考えられる病気の一つなのです.サイレントキラーのサイレントとは「静かな」で,キラーは「殺し屋」ですから,サイレントキラーを訳せば「静かな殺し屋」という意味です.長い間,症状がないか少ない状態なのに,最後になって破壊的な症状を引き起こす病気という意味でサイレントキラーと呼ばれます.サイレントキラーの代表は高血圧です.高血圧では,「血圧が高い」だけでは痛くも痒くもありません.すなわち「血圧が高い」ことによる直接の症状は「サイレント」です(ほとんど“無い”ということです).しかし高血圧を放置すると,血管が障害されて脳卒中や心筋梗塞などの重篤な状態が出現することがあります.脳卒中や心筋梗塞は急激に起こり,しばしば死に至りますが,そこに至るまでの間,高血圧だけであれば患者さんが困る,具体的な症状がありません.そのため,高血圧のことをサイレントキラーと呼びます.腎不全も同様で,最終段階である尿毒症症状に至るまで患者さんが困る具体的な症状が少ないことが腎不全の特徴です.ですから,サイレントキラーと考えてほしい病気のひとつなのです.
従って,調子が良いからと通院を勝手に止めてしまったり,クスリを中断してしまうのは,非常に危険なことと考えて下さい.

5)「夜間尿」は腎不全の症状のひとつです.
 さて,腎不全では症状が少ない,少ないと言いましたが,全く無症状というわけではありません.実は,腎機能が正常の半分以下になると(血清クレアチニン値が男性で2.0mg/dl以上,女性で1.5mg/dl以上),多くの患者さんが気付いている,ある症状が出現してきます.それは「夜間尿」と言って「寝ているはずの夜中にトイレに立ちたくなる,あるいは立ってしまう」という症状です.これはどうしてでしょうか? 
 正常の腎臓は,少ない水分しかとらなかったら,少ない水分(尿量)で尿毒素を出すという働きをしています(これを腎臓の「濃縮力」と言います).寝ている夜間は水分をとらないものですから,正常の腎臓は尿量を少なめにして尿毒素を濃くして尿に出しているので,トイレに立つことはふだんありません.ところが腎不全で濃縮力が劣ってくると,尿毒素を出すためにある程度の尿量(水分)が必要になります.従って,夜間水分をとらないにもかかわらず尿ができてしまう,ということになり,夜中にトイレに立つということになります.患者さんによっては,2回も3回もトイレに立つということがあります.
 この症状を患者さんによっては,「歳のせいだ」とか,「前立腺のせいだ」と思っておられる方もいらっしゃいます.確かに,そういう場合もありますし,また心不全や肝臓病の患者さんでも夜間尿がでることはあります.ですから,あなたの「夜間尿」の原因が腎不全によるものかどうかは主治医の先生とよく相談していただかないといけません.ここでは,腎不全でも「夜間尿」という症状がでるのだということを御理解下さい.
 「腎臓の機能が劣っている」と言われた場合,「尿は夜もたくさん出ているので,腎臓の機能が落ちているわけはない」と考えてある患者さんは少なくないと思います.そう考えている患者さんは,上のような理由によって「夜間尿」は腎不全の結果の症状なのだと理解して下さい.

6)腎不全を治療する方法は?
さて,あなたがもし「腎臓の機能が落ちている」とか「腎不全」とか言われて,さらに「将来,透析が必要になるかもしれない」と言われたとします.そのような方にこそ腎臓内科を受診してほしいのです.我々,腎臓内科医の仕事は,腎不全の原因を調べ,治療を考えることです.それは,次のような手順で行います.
 まず,あなたの腎不全の原因を突き止める必要があります.腎不全の原因となっている腎臓病が治療可能なものであれば,腎不全も治癒可能かもしれません.
 しかし腎不全の原因が慢性腎炎や糖尿病,高血圧などによるもので慢性的なものであれば,機能回復の可能性は少ないと思われます.その場合,あなたの腎臓を元の正常な状態に戻して差し上げることは現在の医学では正直言って困難です.それでも最近の治療の進歩によって,透析が必要になるまでの期間を十分延ばすことができるようになってきました.この方法には,次のようなものがあります.
1) 食事療法:タンパク質を控え,十分なエネルギーを補うことで,尿毒素ができることを抑え,腎不全の進行を阻止する.また,塩分を控えることで,血圧のコントロールを容易にします.
2) 血圧のコントロール:塩分を控えたり,血圧の薬を使ったりすることによって十分血圧を下げることです.特に最近では,腎不全の
進行を抑えたり,タンパク尿の量を減らしたりする効果がある血圧の薬が明らかになってきています.
3) 腎不全による諸症状や状態を緩和する薬物療法:腎不全によって蓄積した尿毒素その他を薬剤でとる,あるいは中和する治療法です.
 
 以上のような治療法は,素人の判断ではなかなか難しいものです.また,食事療法は,医師の指導のもとに栄養士さんと相談して実施しないと単に栄養失調になることもあり危険です.

 患者さんの中には,腎臓病になって腎臓内科や透析のある病院を受診すると「透析をされる」と思ってなかなか受診されない方がいらっしゃいます.腎臓内科は透析を奨励している科では決してありません.適切な治療法によって腎不全の進行を抑え,透析をできるだけ回避することを患者さんと一緒になって考えていく診療科です.
 一番良くないのは,腎臓の異常を指摘されていながら,過った情報によって自己流の治療を行ったり,病院を受診しなくなったりすることです.通院をやめてしまって尿毒症になってから病院に担ぎこまれてくる患者さんを,我々はたくさんみています.そうなる前にきちんとした治療を受けることをお勧めします.
 それから受診は早ければ早い方が良いと言えます.なぜなら,残りの腎臓の機能が大きいほど(すなわち腎不全の程度が軽いほど),治療の選択の幅が広がり,治療がしやすいからです.




3.「浮腫(むくみ)」がある方
「浮腫(むくみ)」が出る原因はいろいろとあります。心臓や肝臓の病気でも「浮腫(むくみ)」は出ます。腎臓病ででる「浮腫(むくみ)」には2つのタイプがあります。それを説明する前に「浮腫(むくみ)」とは何かを説明しましょう。
 実は「浮腫(むくみ)」とは血管の外に出ている「塩分」と「水分」の量が過剰になった状態のことです。塩辛いもの、例えばラーメンを食べるとします。ラーメンには1杯7〜9グラムの塩分が含まれています。これを食べると,喉が渇いて水分をとります(ヒトは,たくさんの塩分を摂るとたくさんの水分を飲むようにできています)。心臓・肝臓・腎臓の機能がすべて正常の方はこの摂取した塩分と水分が腎臓からすべて排泄されます。ところが、心臓・肝臓・腎臓の機能が落ちている方(心不全、肝硬変、腎不全の患者さん)やネフローゼの患者さんはこの塩分(と水分)の出方も劣っているためにそれが体の中に貯まって,さらに血管から漏れ出てきます。これが「浮腫(むくみ)」です。
腎臓は摂取した塩分(と水分)をその分だけ体外へ(尿へ)出してくれる大事な臓器です。腎臓が障害されると,浮腫(むくみ)が出やすい状態になります.腎臓病で出現する「浮腫(むくみ)」の原因は1)腎不全による浮腫、2)ネフローゼ(大量の蛋白尿)による浮腫,の2つのタイプがあります.
「浮腫(むくみ)」のある方は,腎臓がおかしいのではないかと考えて,近くのお医者さんに診てもらったり,あるいは腎臓内科を受診したりすることをお勧めします.
心臓病や肝臓病でかかっていらっしゃる患者さんで,「浮腫(むくみ)」がある方は,主治医の先生とよくご相談下さいますようお願いします.

なぜ,腎臓の病気で「浮腫(むくみ)」ができるのでしょうか?
1)腎不全による浮腫 2)ネフローゼ(大量の蛋白尿)による浮腫,の2つのタイプは,それぞれ「浮腫(むくみ)」のメカニズムが異なります.それは,次のようなものです.
1)「腎不全による浮腫」とは塩分の出口である腎臓が,口から入った分の塩分と同じ量だけを出してくれないタイプの浮腫です。
2)「ネフローゼによる浮腫」:血液の中にあるタンパクは普通は腎臓からもれて尿に出てくることはありません。しかし腎臓病の一部には,たくさんのタンパクが尿にもれでて、血液中のタンパク濃度が低くなることがあります。(低タンパク血症という)。実は血液中のタンパク質は水分と塩分を血管の内側に引っ張っているという働きがあるので,低タンパク血症になると塩分と水分が血管の外へ出て「浮腫」がくるということになります。

 心臓が悪い方、肝臓が悪い方、腎臓が悪い方は食事指導で「塩分を減らして下さい」とよく言われると思います。「浮腫」は体にとって余計な塩分と水分なので、過剰にたまると心臓や腎臓の負担になります。ですから塩分を指導された量まで減らす必要があるのです。



4. 糖尿病を患っておられる方,特に網膜症がある方
 糖尿病による腎臓病のことを「糖尿病性腎症」と呼びます.現在,新たに透析が必要になる患者さんは日本に毎年3万人いらっしゃいますが,その内の約4割の1万余りの患者さんは,糖尿病性腎症が原因です.
 糖尿病では次第に血管が障害されていきます.腎臓は,心臓からでる血液の2割が通過する,たいへん血管の多い臓器です.糖尿病で腎臓が障害されると,タンパク尿が出始め,しだいにたくさんのタンパク尿がでて,浮腫(むくみ)がでるようになります(ネフローゼという=詳しくは頁目3.参照).やがて,腎臓の機能が劣ってきて,腎不全ということになり(詳しくは頁目2.参照),透析が必要になることも稀ではありません.
 しかしながら,わずかなタンパク尿の出始める頃のごくごく初期にきちんと治療を開始すると,糖尿病性腎症の発症や進行が阻止されたり,また中途からでも,十分な食事療法や血圧の治療によって,その進展を遅くすることがある程度可能となってきています.
 また,浮腫をコントロールすることで血圧のコントロールを容易にすることも大事な治療です.
 糖尿病によって網膜症がある患者さんは,血管の障害がすでに始まっている方ですので,腎臓の血管も障害されている可能性があります.現在なくても糖尿病性腎症が将来発症する可能性があります.
 当腎臓内科では,糖尿病性腎症による透析患者さんを増やさないことを目的として,予防や治療に取り組んでいます.
 なお,受診は糖尿病を診ていただいている主治医の先生とよく御相談のうえでしていただくようお願いします.

5.高血圧を長く患っておられる方
 高血圧を長く患っていると,心臓や頭の血管に障害がでて,心臓病や脳卒中の原因になります.血管が非常に多い臓器である腎臓も同様で,高血圧が長期にわたると腎臓に障害がきていることがあります.高血圧による腎不全で透析が必要になる患者さんも決して少なくはありません.
 当腎臓内科では,患者さんの腎機能を評価し,腎機能障害のある患者さんには,適切な血圧の薬や食事療法を考えています.
 なお,受診は血圧を診ていただいている主治医の先生とよく御相談のうえでしていただくようお願いします.