今月の寄生虫
ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense
 鞭毛虫類・キネトプラスト目・トリパノソーマ科・トリパノソーマ属に分類される原虫(真核単細胞生物)で、ローデシアトリパノソーマ(T. b. rhodesiense)と共にヒトにアフリカ睡眠病と いう重篤な疾患を引き起こします。キネトプラスト目の原虫は、1つのミトコンドリオンとその中に環状DNAの集合体であるキネトプラストを有するのが特徴 です。アフリカ睡眠病はアフリカ中西部から東南部の広い地域に分布し、アフリカ48ヶ国中36ヶ国、5000万人の人々が感染の危機にさらされています。
  ヒトへはツェツェバエという吸血性のハエによって媒介され、ヒト体内では錐鞭毛期型原虫が血液や髄液中で二分裂で増殖します。初発症状としては、ハエに刺 された局所に硬結が現れますが、出現しない場合や見逃されることもあります。いずれにしても、感染が成立すると数週間の潜伏期を経て倦怠感・疲労感・高熱 の後、頸部リンパ節腫大・肝脾腫などの一連の症状が現れます。慢性化するとともに原虫の侵入により病変が中枢神経系に波及すると髄膜脳炎が進行し種々の神 経精神症状が現れて、末期には昏睡状態に陥り衰弱のために死亡します。
 治療は、脳脊髄液に変化が見られない初期〜中期では、スラミンやペンタミジンが選択薬になります。中枢神経期にはヒ素剤を使用しますが、重篤な副作用が現れます。ごく最近、全期間を通して有効なエフロルニチンという新薬が開発されましたが、稀に再発する例があります。
Tbg Wellcome

Trypanosoma brucei(血液中の錐鞭毛期型原虫)
(感染血液の薄層塗沫標本 ギムザ染色)

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