今月の寄生虫
マラリア原虫
 マラリアの病原体であるPlasmodiumの原虫をマラリア原虫と呼びます。現在、世界中で1年間に3億の人が感染し、そのうち100万人以上の人が死亡していると推定されています。人に感染を引き起こすマラリア原虫には、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫および四日熱マラリア原虫の4種が知られていますが、中でも熱帯熱マラリア原虫は悪性マラリアとも呼ばれ治療が遅れると死に至る確率が高くなります。
  マラリア原虫は、ハマダラカによって媒介されてヒトに感染し、直ちに肝細胞に侵入しますが、この肝臓型の時期には明らかな症状は現れません。肝臓型原虫は その後、熱帯熱マラリアで5日から1ヶ月、その他のマラリアでは数週から数カ月の潜伏期を経て肝細胞から放出され、一斉に赤血球に侵入して赤血球型原虫へ と発育し、激しく増殖します。この急性期の症状は、赤血球の破壊を伴った激しい悪寒と高熱で、熱帯熱マラリア以外のマラリアでは周期的な発熱が繰り返され ます。赤血球の破壊が進むと患者は貧血・脾腫を引き起こしますが、熱帯熱マラリアの場合にはさらに脳症状や腎不全などの致命的な合併症を引き起こすことが あります。
 治療には、基本的にクロロキンを用いますが、熱帯熱マラリア原虫にはクロロキン耐性を獲得した原虫が出現しており、またその他の薬剤 にも耐性の場合があり、感染地域によって治療薬を選ぶ必要があります。重症の場合には硫酸キニーネを使用します。また、三日熱マラリアと卵形マラリアは肝 細胞中に休眠体が残存し再発の原因となるため、プリマキンを用いた根治療法を行います。
P.falciparum

Plasmodium falciparum(輪状体と生殖母体)
(感染血液の薄層塗沫標本 ギムザ染色)

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