久留米大学先端癌治療研究センターがんワクチン分子部門と臨床研究部門では久留米大学医学部免疫・免疫治療学講座やその他の協力講座、大学機関、関連病院とがんワクチンの共同開発を行っています。


関連リンク










1 臨床試験とは

臨床試験とは、新しい薬や治療法を開発することを目的に、これまでの医学的研究に基づいて、これらの薬や治療法を人に対して試みる研究のことです。
 臨床試験は、@新しい治療法や薬の初期開発のために医師等が行なう探索的臨床研究(トランスレーショナル・リサーチ)と、A製薬会社などが行なう治験(厚生労働省への医薬品申請のために行なう)に分けられます。どちらも人(患者および健康人)に対して投与が行なわれるものですので、倫理的な条項や厳格な研究姿勢が求められ、第三者によって構成される機関からの審査やチェックが行なわれます。また、近年ではB医師主導治験という医師が実施可能な治験も行われています。
 新しい薬や治療法は「最先端ですべて良いもの」という印象をうけやすいのですが、過去の研究や動物実験などの結果から良いものだろうと判断された薬や治療法の安全性や有効性を確かめるものです。ですから、試験を受ける人にとって必ずしも「役に立つものとは限りません」。しかし、これらの研究の結果や成果は、「将来の患者の助け」になるものであり、参加される方々の協力なしには得られることが出来ません。また、新しい医療の発展に繋がる可能性があります。



2 ペプチドワクチン療法とは

 人のからだは元来、病気と戦う力が備わっています。その一つが“免疫”です。免疫とは、自己(自分の身体の細胞)と非自己(身体の外から侵入した異物:ウイルス、細菌など)を区別し、非自己を速やかに身体から排除しようとするシステムのことです。“がん細胞”も元々は自分の身体の細胞ですが、勝手気ままに増殖を繰り返すため、免疫は“非自己”と認識し排除しようとします。
 では、「がん」を例に、ペプチドワクチン療法の仕組みについて具体的に説明します。
人の身体の中で、免疫の中心を担当するのはリンパ球です。このリンパ球のうちの、キラーT細胞(細胞傷害性Tリンパ球、CTLとも呼ばれます)などが中心になって「がん」に抵抗します。このしくみについては既に科学的に解明されています。キラーT細胞ががん細胞の表面の小さな蛋白質のかけらを見つけ、その蛋白質を目印としてがん細胞を攻撃し、その結果、がん細胞を死へと追いやります。この目印となる小さな蛋白質を「抗原」といい、キラーT細胞はこの抗原の中のごく小さな断片を見つけだします。一般に蛋白は、数百〜数千個のアミノ酸でできているのですが、キラーT細胞が見つけだすのは8から10個のアミノ酸でできた部分です。このごく小さな断片を「ペプチド」と呼び、私どもはこれまでにキラーT細胞ががん細胞を排除する時の目印となる「ペプチド」を200種類以上見つけだしています。この小さなペプチドは人工的に合成することが可能で、体内に投与すると、ペプチドによって刺激を受けたキラーT細胞が活性化し、さらに増殖してがん細胞を攻撃するようになります。この性質を使って「がん」を排除(退縮)させようとする治療法を「がんワクチン療法」といい、「ペプチド」を薬剤として使用する治療法を「がんペプチドワクチン療法」と呼びます。

    
 






 C型慢性肝炎においても、C型肝炎ウイルスを体内から排除しようと免疫システムが働きます。しかし、この免疫システムに逆らってC型肝炎ウイルスは様々な方法で体内に居残ろうとします。そのせめぎ合いの結果、ウイルスが体内から排除されずに肝細胞の中に残った状態が慢性肝炎です。ウイルスを排除する際に大きな役割を果たしているのが、がんの場合と同様、キラーT細胞です。ですから、C型慢性肝炎の患者様でも、ペプチドを投与し、キラーT細胞を活性化することでウイルス排除に近づく可能性が考えられます。











3 対象疾患

平成21年4月より久留米大学病院がんワクチン外来を開設し、種々の臨床試験を実施しております。
対象のがん種については久留米大学ペプチドワクチン事務局のページをご覧ください。

*ペプチドワクチン臨床試験への参加に際して、適応基準および除外基準といった種々の条件を試験毎に設定していますので、対象疾患の患者様であっても、必ず臨床試験にご参加いただけるということではありません。



4 臨床試験への参加条件

ペプチドワクチン臨床試験が対象としている各疾患によって参加条件が細かく定められており、それぞれの試験で条件が違います。



5 試験に用いるペプチドワクチンと投与方法

ペプチドワクチンは「ペプチド」と「アジュバント」と呼ばれる免疫を強めるオイルを混ぜたものを用います。

ペプチド:ここでは人工的に合成された9から10個のアミノ酸から構成されたペプチドをさしています。がん関連抗原よりT細胞が認識可能なペプチド断片を同定し、それらのペプチドをアメリカで合成しています。人に投与できる薬剤基準値(GMPグレード)を満たしたものを使用します。

アジュバント:不完全フロイントアジュバント(国内外の臨床試験で用いられているGMPグレード)を使用します。

     

 臨床試験に参加される患者様の免疫反応性を試験開始前に測定し、各々の患者様にとって反応性のよいペプチドを最高4種類まで選択して投与します。)患者様毎に免疫反応性が異なるので、その方に合ったペプチドワクチンを使用する、という意味で、テーラーメイド型の治療と呼ばれています。ワクチンは原則として1週間に1回の皮下注射で行なわれます。投与部位は、前立腺がんでは主に太もも、C型慢性肝炎では主に側腹部、側胸部などの皮下です。投与量はペプチドごとに1.0 ml〜1.5 mlになります。4種類のペプチドが選択された場合は4本のペプチドワクチンを、4ケ所に投与することになります。
 投与期間は疾患の種類や試験計画によって違いますが、6〜8回が1コース(1セット)になっており、ワクチン投与開始からおよそ3ヵ月程度が試験期間となります。
 その後のペプチドワクチン投与の継続(後治療といいます)については、臨床効果や免疫学的効果などを評価した上で、継続するかどうかを相談させていただくことになります。






6 期待される効果

 これまでの臨床試験の結果、前立腺癌、脳腫瘍、子宮頚癌、大腸癌などで「がん」が元の大きさの半分以下に縮小した症例を複数経験しました。このことにより、ペプチドワクチン単独でも効果が出ることが証明されましたが、その確率は高いものではありませんでした。しかし一方で、手術や抗がん剤による化学療法、放射線療法などの治療を受けられたのち、これらの治療効果がなくなった患者様に対して行った試験では、ペプチドワクチン投与により、長い期間「がん」の進行が抑えられ、より長い生存期間を得られた症例もしばしば見られました。これらの経験から、当ペプチドワクチン療法は他の治療法と異なり、副作用が少なく、がんを小さくしないまでも質の高い余命を提供できる可能性があると考えられます。
 また、C型慢性肝炎の試験では、血液中のウイルス量が半減したり、血清AST/ALT値(GOT/GPT値)が30%以上改善する症例もしばしば認められました。また、後治療としてIFN(インターフェロン)とペプチドワクチンを併用した患者様のうち、数例でウイルスが体内から完全に排除された症例も認められました。





7 予期される副作用   (有害事象)

 ペプチドワクチン療法による副作用としては、ワクチンを注射した部位の腫れ、発赤、かゆみなどが主にみられています。免疫力が高まるとワクチンを注入した部位でも免疫反応が強くなり、このような副作用が出ます。ワクチン療法を長期間継続し、何回も投与を受けている方では投与部位に硬いしこりができることも多いです。他に、発熱や風邪様症状、だるさ、炎症症状(喘息の増悪など)が起こることがあります。これらも免疫反応が強くなった結果おこる全身症状と考えられます。また、下痢、癌の周囲でおこる炎症、それに伴う痛みや出血、その他、自己免疫疾患が誘発される可能性なども否定できません。また、どのような薬であっても、投与された薬に対するアレルギー反応やショックが起こる可能性は常にあります。私どもはこれまでの経験にもとづき十分な観察を行ない、もしこれらが発生した場合も早期に対応できるように努めています。試験によっては、ペプチドワクチンと他の薬剤との併用療法を計画・実施しているものもあります。これらの試験ではペプチドワクチンによる副作用の他、併用する薬剤による副作用や、思わぬ有害なことがおきることも考えられるため、これらにも備えるようにしています。






8 当治療にかかる費用について

 現在、一部のがん種を除き、自由診療による臨床試験を行っています。自由診療に係る費用は全額患者様の自己負担となりますことをご了承ください。




9 試験への参加同意と同意後の撤回について

 この臨床試験への参加を同意され同意書を提出された後でも、いつでも患者様本人やご家族のご都合で中止することが可能です。また、本臨床試験を途中で中止しても何等不利益をこうむることなく通常の診療や標準治療を受けることが出来ます。





10 患者様の人権保護・プライバシー保護について

 本研究は、久留米大学の医療に関する倫理委員会で審査を受け、本研究の遂行には十分科学的な価値があること、研究方法が医学的に適切であること、さらに患者様の人権が守られていることが確認されたうえで、承認されたものです。また、この臨床試験に同意し、参加された場合、常に患者様のプライバシーは厳重に保護され、氏名等は登録番号のみの記入によるデータ資料として保管されます。また、患者様が御本人のデータ資料の閲覧を希望される場合は、いつでも資料を提示いたします。






11 当治療に関連した障害発生時の処置と補償について

重篤な障害により多大な損害を受けられた場合には、誠実に対応させていただきます。



12 ペプチドワクチン臨床試験実施外来とお問合せ先
くわしくは、久留米大学ペプチドワクチン事務局のページをご覧ください。
 


電子メール及び電話での個々の病状に関するご相談はお受けすることができませんので予めご了承ください。


本ホームページに関する苦情・お問合せは、下記電子メールアドレスまでお願いします。
久留米大学がんワクチンプロジェクト事務局
peptide_vaccine@med.kurume-u.ac.jp


HOME/設置の目的と経緯/研究プロジェクト/がんワクチン臨床試験/業績紹介/公開シンポジウム・市民公開講座/久留米大学21世紀COEプログラム/所在地