1.
大腸癌とは ?
2. 大腸がんの症状
3. 大腸がんの検査
4. 大腸がんの治療
5. 直腸がんの手術法
6. 大腸がんの治療成績
7. ホームページに戻る
大腸がんは、結腸がんと直腸がんのことを言いますが、どちらも腸の粘膜
(大腸の一番内側の壁に相当するところ)から発生する悪性の腫瘍です。
がんが発生し始めの頃は、ほとんどが小さいポリープ状の形
(腸の中にできる隆起したもの)をしていますが、
だんだん進行していくと粘膜にとどまっていた“がん”が内壁から漿膜
(腸の一番外側の壁)へ、そして周囲の臓器(小腸、胃、膀胱など)へと
浸潤(水が砂にしみこむような広がり方をすること)し、広がって行きます。
また、この経過中に転移(“がん”がいろんなところに飛び火をすること)
を起こします。この転移の仕方には、“がん”がリンパ管に進入し、
リンパ節に転移をおこすリンパ行性転移と“がん”が血管(静脈)の中に
進入し、肝臓や肺、脳などへも転移が起こる血行性転移、さらに、
お腹の腹膜に“がん”の種をばら撒いたような広がり方をする
播種播種というものがあります。
“がん”の進行の程度は、リンパ節転移や肝臓、肺などの転移の状況によって、
5段階に分類されています。
1.
ステージ0 (stage 0)
Ø “がん”が粘膜の中だけにとどまっている極めて
早期の大腸がんです。リンパ節転移もきたすことはありません。
2.
ステージ1 (stage 1)
Ø “がん”がやや広がっていますが、まだ粘膜下層
(粘膜のやや外側)や筋層(腸の筋肉)の中にとどまっており、
リンパ節転移がないものです。
3.
ステージ2 (stage 2)
Ø
“がん”が筋層を超えて広がっていますが、
まだリンパ節には転移がないものです。
4.
ステージ3 (stage 3)
Ø “がん”がリンパ節転移をきたしているものです。
多くのものは、“がん”が筋層を超えて広がっていますが、
粘膜下層にとどまるものでも、リンパ節転移をきたすものが
10%位あります。
l
リンパ節転移の状態で3aと3bに分類されています。
ステージ3a (stage 3a) :リンパ節転移が“がん“の近くにあるものや、
転移の数(3個以下)が少ないものです。
ステージ3b (stage 3b) :リンパ節転移が“がん“の遠くにあるものや、
転移の数(4個以上)が多いものです。
5.
ステージ4 (stage 4)
Ø
“がん”が高度に進行し、肝臓、肺、骨、脳、腹膜などに
転移をきたしたものです。
大腸がんの症状は、“がん”が発生する頃には全くありません。
ポリープ状になると、
その表面から出血がおこりますが、ごくわずかなために、
自覚症状はほとんどありません。
定期健診などで便の潜血(肉眼的にわからない出血)反応を調べて、
便の中に血液が混じっていることで
精密検査を受けてはじめて大腸がんが発見されることが多いようです。
“がん“がだんだん進行すると、便の中に血が混じっていることに気づいたり、
排便の習慣が変化(便秘傾向がひどくなったり、
便秘や下痢が交替におこるなど)したりします。
肛門近くにできた直腸がんや肛門がんでは、
肛門からの出血に気づいたり、
便が細くなったり、排便困難(力んでも便が出にくい)
などの症状がでます。
さらに、進行すると、”がん“が大腸の中で著しく大きく発育するために、
腸閉塞症状をきたし、
腹部膨満感(腹が張る)、嘔気、嘔吐
などの症状がでます。
結腸がんでは、しばしば、腹部に”しこり“を触れることもあります。
直腸がんでは、便が少しづつしかでない、何回もトイレに行く
などの症状が強く出現します。
大腸がんの重要な危険信号は出血ですが、“がん”が早期なのか、
進行しているかを
区別することができません。
“がん”を早期に発見するためには、危険信号が点滅する前に、
つまり自覚症状が無い時に、
定期的に検査を受けることが大切です。
その他の危険信号としては、家族や親戚の中に大腸がんに
罹った方がおられる
場合には、要注意ということになります。
最近、大腸がんは、遺伝的な要因も重要と考えられていますので、
早めの検査をされることをお勧めします。
ü 注腸X線検査(バリウム検査)
Ø
胃のバリウム検査と異なり、バリウムを肛門から注入し大腸の
レントゲンをするもの。
![]()
![]()
下部直腸癌 S状結腸癌
ü
大腸ファイバースコープ(内視鏡検査)
Ø 下の写真のようなファイバースコープを肛門より挿入し、
大腸を肉眼的に観察するもの。
ファイバースコープ 施行中 大腸ポリープ
ü
腹部エコー
Ø 大腸がんと周囲臓器との関係や、リンパ節転移、肝転移の状態などを
検査
肝転移 肝転移 肝転移
ü
CT
Ø 大腸がんと周囲臓器との関係や、リンパ節転移、肝、肺転移の状態など
検査
肝転移 肝転移 肺転移
肝全体に転移あり
ü
MRI
Ø CT検査とほぼ同様で、周囲臓器との関係や、リンパ節転移、肝、
肺転移の状態などを検査。磁力による検査なので人体には無害
肝転移
ü
PET
Ø 全身における“がん”の存在部位やリンパ節転移などを診断できるが、
絶対的なものではなく、診断能力に限界がある。
![]()
![]()

肝転移 肺転移 骨盤内リンパ節転移
1.
極めて早期のがんに対する治療
² ステージ0の大腸がん(m癌と言われる)に対する治療で、
多くはポリープ状を呈しているため内視鏡的ポリープ摘出術
(ポリペクトミー)が施行される。ステージ0の大腸がんはリンパ節
転移をすることがないため、摘出してしまえば治療は完了する。
ポリペクトミー模式図 実際の写真
2.
早期のがんに対する治療
² ステージ1の大腸がんの中で、粘膜下層のがん(大腸の筋層にまで
がんの浸潤がないもの)は、sm癌と言われ、早期のがんと言って
よいが、転移をきたすものが10%存在する。
粘膜下層へどの程度、“がん”が広がっているかによって以下のように
分類され、治療も異なる。
Ø sm1のがん:粘膜からわずかに粘膜下層に“がん”が広がっているもの
Ø sm2のがん:“がん”の広がりがsm1とsm2の中間のもの
Ø sm3のがん:筋層近くまで“がん”が広がっているもの
l sm1のがんはm癌と同じくらいリンパ節転移をきたすことがほとんど
ないため、内視鏡治療で治療は完了
l sm2の場合には、“がん”の悪性度(たちが良いか悪いか)によって、
リンパ節転移の状態が異なるために内視鏡的治療だけで済むものと、
リンパ節を摘出する開腹手術が必要なものとが決まる。
l sm3の場合には、リンパ節転移をきたす頻度が高いので、リンパ節を
摘出する開腹手術が必要となる。
²
sm癌の治療方針は、学会などで議論されることが多い。
3.
進行がんに対する治療
² “がん”の広がりが筋層以上に及ぶ場合には、リンパ節転移の頻度が
高くなるので、リンパ節を摘出する開腹手術が必要である。
(ステージ1の一部、ステージ2〜4までのものが対象となる)。
² 大腸がんのできた場所によって、手術方法が異なる。
大腸がんのリンパ節の分布です。 右側(向かって左)に“がん”
がある場合、図のように
リンパ節を含めて右側の結腸を
切除します(右半結腸切除術)。
直腸がんに対する治療は、かなりの専門的な技術を必要とします
@
高位前方切除術
A
低位前方切除術
B
超低位前方切除術
C
究極の肛門温存術
D
腹会陰式直腸切断術(Miles’ の手術)
E
骨盤内蔵全摘出術
Ø
@からCまでは、肛門を温存する手術ですが、Cは肛門に極めて近い直腸癌や
肛門(管)癌に対してもでも肛門を温存する手術です。
DEは永久的な人工肛門を造る手術で、
さらにEは直腸と共に膀胱や前立腺も摘出する手術です。
Ø 直腸癌の場合には、患者さんにとって人工肛門のことが常に心配になります。
私どもは、肛門に極めて近い下部直腸癌や肛門(管)癌にたいしても、
病理学的根拠に基づき肛門を温存することが可能であることを証明しました。
2001年より、この究極の肛門温存術を導入することによって、
人工肛門を造る患者さんが激減しました。
昨年は、わすか1例の患者さんが、やむを得ず人工肛門を造っただけでした。
今年は、まだ1例も人工肛門を造った患者さんはありません。
Ø
直腸がんの特殊な手術法、自律神経温存術
自律神経温存術とは、何か?
直腸は骨盤内に位置しており、骨盤内には
下腹神経や骨盤神経叢があり、
これらの神経は自律神経と言われます。
これらの自律神経を切除したり、損傷すると、
排尿障害、性機能障害が生じます。
特に、男性では射精障害、勃起障害が起きます。
当科では、直腸癌の手術に際しては、細心の注意を払い
これらの神経を損傷しない自律神経温存術を施行しています。
当科では、約90%が自律神経温存手術です。
しかし、ごく少数の患者さんには、不幸にしてこの手術が不可能な
場合もあります。癌がこれらの神経に広がっている
場合には、自律神経を切除しなければ、
癌細胞が残ってしまいますので、
どうしても切除しなければならず、障害が発生します。
4.
肝転移を伴った大腸がんに対する治療
Ø 肝転移を伴っていても、大腸がんは切除します。そして肝転移の病巣も
切除できれば、できるだけ切除します。切除ができない部位に対しては、
熱凝固療法(MCT、RF)や肝動注療法(肝臓に動脈に細い管
(カテーテル)を挿入して抗がん剤治療をする)などを施行します。
Ø 肝転移を切除した後は、再発予防のために肝動注療法を施行します。
Ø 肝転移の病巣を切除したり、動注療法を施行することによって、
“がん“が治癒することも多く経験しています。
5.
肺転移を伴った大腸がんに対する治療
Ø 肺転移を伴っていても、大腸がんは切除します。肝転移と同様に
肺転移の病巣も切除可能ならば切除します。
Ø 肺転移を切除した後は、抗がん剤治療をします。
1995年以降の成績です。

stage 0 (ステージ0で癌が粘膜の中だけにとどまっている極めて早期の癌です)
5年生存率、8年生存率ともに100%
stage 1 (ステージ1で比較的早期の癌や中期の癌です)
5年生存率は100%、8年生存率は96.4%
stage 2 (ステージ2で、進行癌ですが、リンパ節転移が無いものです)
5年生存率は94%、8年生存率は87%
stage 3 (ステージ3のかなり進行した癌で、リンパ節転移が有るものです)
5年生存率は76.3%、8年生存率は61.4%
stage 4 (ステージ4で、肝臓、肺、腹膜、遠隔のリンパ節にまで転移があるものです)
5年生存率、8年生存率ともに15.1%

stage 0 : 5年生存率は100%、 8年生存率も100%
stage 1 : 5年生存率は98.2%、 8年生存率は95.7%
stage 2 : 5年生存率は83.8%、 8年生存率は71.3%
stage 3 :
5年生存率は67.9%、 8年生存率は59.4%
stage 4 : 5年生存率は16.2%、 8年生存率は10.8%