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第33回日本高血圧学会総会
ひらめきときめきサイエンス

研究プロジェクト > 大動脈疾患研究部門

臨床班


「大動脈弁および大動脈瘤の病態と治療に関する基礎および臨床研究」

 循環器研究所の大動脈研究グループにおいては、昨年までにステントグラフトの研究、大動脈手術時の脳保護の研究、自己骨髄細胞を用いた小口径人工血管の研究を行ってきた。昨年からは新に、大動脈瘤の成因と抑制物質の研究が加わった。今回、脳保護の研究と自己骨髄細胞を用いた小口径人工血管の研究については、一旦終了したため、ステントグラフトと、大動脈瘤の成因等の研究について報告する。
ステントグラフト  平成19年からは、腹部大動脈瘤に対するステントグラフトとしてZenith社製、Gore社製、Power linkの3種類が国内で使用可能となった。研究所のメンバーはこの全てのステントグラフトの指導医、指定施設を認定され、いち早く、国内での使用を開始した。  今年度はGore社製の胸部大動脈瘤に対するステントグラフトが指定施設のみで可能となり、これで腹大動脈瘤用のステントグラフトと合わせて4種類のステントグラフトが国内の指定施設で使用となった。2008年度のみで60例のステントグラフト症例を積み重ね、現在臨床追跡調査研究を行っている。 さらに当施設では東京医大方式のNajutaの治験中であり、このステントグラフトについては、弓部大動脈瘤に対応が可能であり、商品化されれば適応症例が一挙に拡大するものと思われるが、現在当科分配の症例数が終了した。  このステントグラフトに関しては、今後パイロットスタディーで使用可能であるが、厚生省の正式承認を待つ段階までに到達した。今後も東京医大とのコラボレイトで新規のステントグラフトの導入に向けて、研究開発を進める。 2009年度にはタレント、ステントグラフトが発売予定であり、発売と同時に指定施設として使用可能な状態である。
大動脈瘤の成因および抑制効果について  近年、炎症を抑制する方法として、様々なサイトカイン療法が提唱されているが、大動脈瘤の進展に対する抑制効果を期待して、実験的に手術中に採取した大動脈瘤壁でのHGFの発現低下を認めたことより、HGF分泌促進作用を有するACE阻害薬の使用が大動脈瘤の進展を抑制する可能性が考えられ、組織を培養し実験的に検討している。現時点までの結果:HGFは炎症性サイトカインTNFαによる単球・マクロファージ走化性因子MCP-1の分泌を抑制した。一方、HGFとTNFαは抗炎症性サイトカインIL-10の分泌を相乗的に促進した。以上より、HGF分泌に影響を及ぼす薬物を検討し、ACE阻害薬イミダプリラートが、ヒト大動脈壁組織からのHGF分泌を促進することを見いだした。すなわち、臨床的にはACE阻害薬が大動脈瘤破裂予防効果を有する可能性が示唆された。  以上が、今年度の主たる結果を得た業績であるが、末梢血管疾患に対する血管新生療法についても、臨床のみではなく、新生された血管の発達を促進させる方法に関する基礎的研究も開始された。
member 明石 英俊、福永周二、田山栄基、鬼塚誠二、田中厚寿、金谷蔵人、新谷悠介