久留米大学医学部 内科学講座 血液内科部門

教授挨拶

PROFILE

内科学講座 血液・腫瘍内科学部門

教授 岡村 孝

    TAKASHI OKAMURA

九州大学医学部 1975年卒業

医学博士 九州大学大学院 1981年

教授 岡村 孝

久留米大学 医学部 内科学講座 血液・腫瘍内科部門は、内科学の1分野として、平成18年春に開講した新しい講座です。急性白血病、慢性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄増殖性疾患などの造血器腫瘍をはじめ、再生不良性貧血、溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病などの免疫異常に基づく疾患、血友病などの先天性出血性疾患、血栓症および播種性血管内凝固症候群など幅広い血液疾患を対象として研究、臨床を行っています。最近の血液疾患の診断・治療の進歩は、目覚ましいものがあり、各種疾患の治療成績もかなり改善しています。数十年前には不治の病であった白血病なども今は治癒できる病気となりました。これには、病気の原因をつきとめるための基礎的な研究の進歩に加え、かなりの症例数を基にした臨床治療研究がなされ、はっきりとしたエビデンスとして治療の有効性が論じられるようになったからです。われわれもこの世界の流れに遅れることなく最先端の医療の追求を心がけています。


現在入院患者数約50名で、医師スタッフは少数ですが、看護師、薬剤師、検査技師との連携をとりながら患者にとって最適医療を目指しています。当然のことながら、臨床的には、常に新しい情報を調査検討し、最も有効性が高く無理のない治療法を患者に呈示し、十分な同意を得た上で治療を開始しています。しかし、臨床の現場では理想どおりの治療が遂行できるとは限りません。特に高齢者悪性疾患患者が増加し、理想の治療法と現実の治療法の選択で悩むこともかなりあり、臨床の難しさを痛感させられています。


血液学分野では、造血幹細胞を用いた移植再生療法が最近のトピックの一つです。造血幹細胞は、骨髄に存在しますが、末梢血の幹細胞も採取できることが判明し、骨髄細胞の移植に加えて末梢血幹細胞移植も行われるようになりました。また、近年、臍帯血中の幹細胞を用いた臍帯血移植も増加しています。最近ミニ移植が開発され、軽い前処置で行うため高年齢のかたにも移植可能になりました。造血幹細胞移植の適応疾患も、従来の白血病、リンパ腫、骨髄腫、あるいは再生不良性貧血に加えて、自己免疫疾患や固型腫瘍などにも応用が広まり、また骨髄幹細胞は、血管内皮細胞や心筋細胞、肝細胞、腸管上皮細胞への分化機能を有することがわかり、再生医療への応用も現実のものとなっております。このように幹細胞移植療法適応患者数は、急激に増加しています。


また、近年の腫瘍化メカニズムの基礎的解析が進み、分子標的治療が開発されつつあります。慢性骨髄性白血病へのチロシンキナーゼ阻害剤(Imatinib mesylate)は、その走りであり、治癒が望めなかった10年前から比較すると細胞遺伝学的寛解は80-90%に得られる画期的新薬です。これからも新たな夢を求めて新薬開発が進み白血病克服も近い将来可能になりそうです。ひとりひとりの患者および医師の努力の積み重ねが現在の進歩を支えているものと思いますが、この時代に診療できることを幸せに感じるとともに、若い血液医の今後の研究の益々の発展を期待しています。

このページのTOPへ