久留米大学は平成20年創立80周年を迎え、平成21年4月に記念事業の一環としての新病棟の西棟部分(病院本館西棟)が開院しました。平成22年には病院本館東棟が完成します。屋上にヘリポートを有する、14階建ての病院本館東西棟は、70周年記念事業で建った総合診療棟ともども久留米大学病院の本丸として西日本に誇るものと自負しています。1階から4階までの中央診療部門には高度救命救急センター、腎臓センター、画像診断センターなどが、5階から14階までの病棟部門には総合周産期母子医療センター、集学治療センター、緩和ケアセンターが診療各科と共に配置され、診療科の壁を越えた病棟になることが期待されています。
久留米大学病院はこれまでもドクターヘリをいち早く導入した24時間体制の3次救急医療、社会問題となっている周産期母子医療など、社会が必要とする医療に全力で取り組み、臨床を重視し、地域の市民に親しまれ、信頼される高度な医療を提供してきました。病棟には一日当たり約1,000名が入院し、外来患者数は2,000名を、年間手術症例は7,000例を越えています。数々の専門医を抱える医師数は600名を遥かに超え、看護師数は1,100名に達しようとしています。
また、診療科の壁を越えたチーム医療を積極的に取り入れており、外来診療でもメディカルセンター(消化器病センター、循環器病センター、呼吸器病センター)の形で運営されています。さらに病棟レベルでは集学(癌)治療センター、緩和ケアセンター、総合周産期母子医療センターが整備され、高度救命救急センター、リハビリテーションセンターなどを加えて活発に活動し、チーム医療がさまざまな形で幅広く浸透し、実践されています。
将来を担う若手の医師やコメディカルのみなさんが、医療を総合的に研鑽するのに適した環境です。医学部と共にある大学病院ですから、全国的に活躍するスタッフがそれぞれの分野で活動しており、専門医研修を多彩な充実したものにしています。
臨床研修制度がはじまって5年を経過し、その功罪が現在喧しく論じられているのはご承知のとおりです。久留米大学病院でも臨床研修制度の内容の変更を随時行っていますが、これらの研修はあくまで、これから本格的な医師の道を歩く将来ある皆さんの基礎地盤を作ってくれたに過ぎません。しばしば“前期研修”に相対する言葉としての“後期研修”という表現がなされますが、本来は“前期研修”を終えた医師がいよいよ専門科を決めるべく、すなわち将来自分が生涯をかけて進む専門分野を決めるべくスタートする、もっとも大事な時だと思います。
本年4月からは本館西棟の開院にあわせて医用画像保存参照システム(PACS)の運用が始まりました。すでに導入されたPETや種々の診断システムも順調に運営され、病院の規範である「高度で安全な医療」の実現に向けてさらに前進しています。そしてもうひとつの基本理念である「優れた医療人の育成」を、恒久的な課題として続けていく必要があります。本院で学んだ皆さんが、将来さらに医療の中核をなして次の世代の医療人の育成を引き継げる存在になっていただくことを願っています。
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