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~がんワクチンの実用化と普及を目指して~
  Society for Kurume Cancer Vaccine

研究会のご案内

第6回久留米がんワクチン研究会を開催しました

  日 時: 令和元年7月20日(土曜日)13時30分~16時30分  
  場 所: ハイネスホテル・久留米
    ◆ 基調講演「がんペプチドワクチン療法におけるバイオマーカー」
              久留米大学がんワクチンセンター 副センター長 野口正典

     ① 「テーラーメイドペプチドワクチン次世代に向けて 尿路上皮がん」
              久留米大学 医学部泌尿器科学講座  准教授 末金 茂高

     ② 「小児科領域のがん患者に対するがんペプチド療法」
              久留米大学がんワクチンセンター  織田 慶子

     ③ 「テーラーメイドペプチドワクチン次世代に向けて 肺がん」
              久留米大学 医学部外科学講座   吉山 康一

     ④ 「トリプルネガティブ乳癌(TNBC)におけるペプチドワクチン療法」
              久留米大学 医学部外科学講座  准教授 唐 宇飛

    ◆ 特別講演「大腸癌術後再発の現状と課題」
              久留米大学 医学部外科学講座  教授 赤木 由人

   

第6回久留米がんワクチン研究会を終えて

 久留米がんワクチン研究会は、がんワクチンの発展と実用化を目指し、医師や製薬企業関係者らの交流や情報交換の場として、今年で6回目の開催となります。今回は7月20日(土)に昨年と同じハイネスホテル・久留米にて、午後1時半より開催しました。
 第6回久留米がんワクチン研究会では、当センターで実施してきたテーラーメイドがんペプチドワクチン療法を総括し、新たな予後予測因子の開発や再発予防などの新たな展開への報告などを中心に久留米大学をはじめ全国からがんワクチン療法の開発を行なっている医師や企業関係者など約50名が参加し、活発な議論が行われました。

 研究会では、まず最初に久留米大学泌尿器科学講座の末金茂高先生の司会の下、当センターの野口正典先生が「がんペプチドワクチン療法におけるバイオマーカー」と題して、基調講演が行われました。前半では、1991年にがん関連抗原が発見されて以来、ペプチドワクチンを用いた数多くの臨床試験が実施されてきたが、がん患者の免疫反応の多様性のため、第Ⅲ相治験である無作為化比較試験において、臨床的有用性はこれまで証明されてこなかったと述べられた。久留米大学でこれまで実施してきた2つの治験、すなわち、去勢抵抗性前立腺癌患者および再発膠芽腫患者に対する無作為化比較による第Ⅲ相治験に於いてもその臨床的有効性は証明されませんでした。そこで、それら治験のデータを活用し、がんペプチドワクチン療法の臨床上有用な新たな予後予測のためのバイオマーカーを検索しました。その結果、去勢抵抗性前立腺癌患者に対する第Ⅲ相治験では、免疫反応に関係する好中球比率やリンパ球比率がペプチドワクチン療法による患者の免疫増強や全生存期間(OS)に関係しており、また再発膠芽腫患者に対する第Ⅲ相治験では、ケモカインの1種であるCCL2の値がペプチドワクチン療法による患者のOSに関係していた。これら2つのワクチン投与前の要素は「Prognostic factor」ではなく「Predictive biomarker」であることを強調され、講演は終了しました。

 次に「テーラーメイドペプチドワクチン次世代に向けて」というタイトルでまとめられた一般演題では、由谷茂センター長の司会の下に、当センターで実施してきた臨床試験の数多くの症例を基に、尿路上皮がん、小児がん、肺がん、乳がんの4つについて、これからのペプチドワクチン療法の進め方などの報告がありました。

 一題目として久留米大学の末金茂高先生より「尿路上皮がん」に関して講演がありました。尿路上皮がんに対する薬物療法の変遷、がんの置かれた免疫環境と免疫療法との関係、免疫チェック阻害剤の1つであるPembrolizumabでの治療成績などについて簡単に説明されました。テーラーメイドペプチドワクチンを使った尿路上皮がん140例(腎盂尿管がん78例、膀胱がん62例)の解析の結果、全患者の生存率の中央値は9.7ヶ月であり、Pembrolizumabの結果とほぼ同等でした。遠隔転移を認めない患者30例が対象とした再発予防についての解析では、無再発期間の中央値は21.1か月、全生存期間の中央値は55.0か月で、テーラーメイドペプチドワクチン投与後に新規に遠隔転移を認めたのは30例中4例のみであったと述べられました。最後に、好中球比率やリンパ球比率が尿路上皮がんでも去勢抵抗性前立腺癌と同様に、予後予測のバイオマーカーとして有効であることやOSの延長に寄与するペプチドに絞りこみ、医薬品化を目指していきたいと統括された。

  二題目として保健医療経営大学の織田慶子先生は「小児科領域のがん患者に対するがんペプチド療法」と題して講演されました。一昨年9月より当センターで開始された難治性小児がんに対するがんワクチン療法として、4例の症例があり、それらの症例について治療経過など詳細に報告されました。3例には腫瘍縮小効果がみられませんでしたが、横紋筋肉腫の症例では、2019年7月現在(ワクチン投与開始から26ヶ月)、新たな腫瘍の再発は認められていないとのことでした。

  三題目は、久留米大学医学部外科学講座の吉山康一先生より「肺がん」と題して、悪性胸膜中皮腫に関する講演がありました。これまでにワクチン投与を受けた8例の悪性胸膜中皮腫症例を解析した結果、免疫反応の上昇を認めた症例は、低下していた症例に比べて有意に予後が良好であり、その中でも特に長期生存が得られた1症例については、詳細な経過報告がありました。ワクチン単独でも、腫瘍縮小効果を認められNivolumab開始までの橋渡しを担うことができ、 本症例ではワクチン療法は有効であったと報告されました。

  最後に久留米大学医学部外科学講座の唐宇飛先生より「トリプルネガティブ乳癌(TNBC)におけるペプチドワクチン療法」と題して、講演がありました。初めに、トリプルネガティブ乳癌の現状を説明され、演者らが行った標準治療抵抗性トリプリネガティブ乳がんに対する19種混合ペプチドワクチン(KRM-19)療法の早期第Ⅱ相臨床試験について概説されました。この試験では、14例の患者が登録され、全体での生存期間の中央値は11.7ヶ月でしたが、6回の治療を完遂できた9例では、その中央値は24.3ヶ月でした。また、ペプチド抗体毎や抗体総和での抗体価の上昇と生存率との関係についても報告されました。これまで、当センターでワクチン投与を受けた全乳がん症例について、投与ペプチド毎の生存率の解析や今回、提案された好中球比率とリンパ球比率を用いた新たなバイオマーカーと全生存期間との関係を解析し、そのバイオマーカーの有用性を示されました。

  プログラムの最後として、「大腸癌術後再発の現状と課題」と題した久留米大学外科学教授の赤木由人先生による特別講演がありました。始めに、大腸癌の患者数、死亡数、ステージ別の5年相対生存率、転移や再発などの実態について概説された後に、久留米大学での実績について、説明されました。2007年から2017年までの約10年間で、根治度A症例は872例、再発した症例は97症例で11.1%でした。再発部位としては、肝や肺が多く、2年以内に再発が認められるものが多いとのことでした。大腸癌の予後を考える上で、腫瘍因子(ステージ、組織特性、遺伝子変異などのがん細胞特性circulating tumor cellなど)と宿主因子(modified Glasgow prognostic scoreやLymphocyte to monocyte ratioなど)の両方が重要で、また宿主の免疫能を反映している好中球数/リンパ球数の比率(NLR)4でステージⅡ結腸癌を分けるとその予後に有意に差が認められるとのことでした。また、術前CRP値と術前アルブミン値をスコア化したもので、宿主の栄養状態や免疫能を反映しているGlasgow prognostic score (GPS)でもステージⅡ結腸癌の予後を反映していたとのことでした。最後に予後向上のためには腫瘍因子ばかりでなく、腫瘍間質や周囲の環境も考慮し、個別化した治療戦略が必要となる時代になったと述べられました。

  講演後、闊達な質疑応答も行われ、参加者の知識欲もある程度満たされたところで学術集会は終了し、引き続き同ホテル内で懇親会が執り行われました。懇親会においても活発に情報交換が行われ、研究会の全日程が終了しました。

 今回も、盛夏厳しき中、また当日は激しい雨の中(翌日未明久留米市は100mm/時間の記録的短時間大雨を経験)、全国より多くの方々に御参加頂き、盛会裡に終えることができましたことを感謝致しております。
                           (文責:大内田昭信)

第5回久留米がんワクチン研究会を開催しました

  日 時: 平成30年7月21日(土曜日)13時30分~16時30分  
  場 所: ハイネスホテル・久留米
 
 プログラム

    ◆ 特別講演「前立腺がんへのテーラーメイドペプチドワクチン療法開発の20年の歩み」
              久留米大学がんワクチンセンター 副センター長 野口正典

    ◆  ワークショップ ~ がんペプチドワクチンの新たな試み:再発予防~ 

     ① 「乳がんにおけるテーラーメイドペプチドワクチンの予防的効果」
              久留米大学 医学部外科学講座  准教授 唐 宇飛

     ② 「非小細胞肺がんに対するがんペプチドワクチン療法による予防効果の検討」
              久留米大学 医学部外科学講座  助教 吉山 康一

     ③ 「がんペプチドワクチンの新たな試み:再発予防尿路上皮がん」
              久留米大学 医学部泌尿器科学講座  准教授 末金 茂高

     ④ 「ペプチドワクチンの新たな試み再発予防~大腸がん~」
              久留米大学がんワクチンセンター  副センター長 由谷 茂

    ◆  一般演題
      「T細胞の活性化および発がんに関与するリンパ球特異的チロシンリン酸化酵素
       (Lck)由来細胞傷害性T細胞エピトープペプチドに対する抗体の生物学的活性」
              久留米大学がんワクチンセンター 副センター長 七條 茂樹

   

第5回久留米がんワクチン研究会を終えて

 久留米がんワクチン研究会は、がんワクチンの発展と実用化を目指し、医師や
製薬企業関係者らの交流や情報交換の場として、今年で5回目の開催となります。
 今回は、7月21日(土)にハイネスホテル・久留米にて、開催しました。

 第5回久留米がんワクチン研究会では、前立腺がんへのテーラーメイドがんペプチ
ドワクチン療法開発の20年の歩みやがんペプチドワクチンの新たな試みとしての再発
予防の報告などを中心に久留米大学をはじめ全国からがんワクチン療法の開発を行な
っている医師や企業関係者など約50名が参加し、活発な議論が行われた。

  今回の研究会では、長崎みなとメディカルセンター市民病院の峯孝志がん診療統
括センター長の司会で当センターの野口正典先生が特別講演「前立腺がんへのテーラ
ーメイドがんペプチドワクチン療法開発の20年の歩み」として、講演された。

 はじめに、ペプチドワクチン療法や免疫チェックポイント阻害剤療法を含むがん免
疫療法の開発やテーラーメイドペプチドワクチン(PPV)療法のコンセプトについて
簡単に概説された後、前立腺癌患者に対するPPV療法の開発経緯について説明され
た。これまで当センターで実施してきた数多くの臨床試験の結果や臨床経験を基に、
薬事申請を目指した企業治験を取り組んだ治験では、ペプチドワクチンの特性を考
え、これまでの細胞傷害性薬剤や生物製剤とは異なった臨床試験デザインを考慮する
必要があった。検証的な第Ⅲ相治験では、日本科学技術振興財団(JST)の支援を受け
、企業治験として実施してきたが、治験実施期間中に去勢抵抗性前立腺癌に対する新
薬(エンザルタミド、アビラテロンなど)が承認され、ペプチドワクチンの有効性を
示せなかった。
 今後の方向性として、①これまでの数多くの臨床データを基に生存期間延長に関与
するペプチドの優先選択、②進行・再発がんに対する併用療法の開発、③再発予防ワ
クチンの開発などが考えられると述べられた。

 今回の久留米がんワクチン研究会では、「がんペプチドワクチンの新たな試み:再発
予防~」としてワークショップが企画された。由谷茂副センター長の司会の下に、こ
れまで臨床試験として実施・蓄積された数多くの症例の中から、乳がん、肺がん、尿
路上皮がん、大腸がんを中心に再発予防に関する報告があった。

 始めに、久留米大学医学部外科学講座の唐宇飛先生より「乳がんにおけるテーラー
メイドペプチドワクチンの予防的効果」と題して、講演があった。2010年2月からの
治療抵抗性再発乳癌を中心に、リンパ節転移など再発リスクが高い術後無再発群(
16例)、転移再発群(41例)、治療抵抗転移再発群(79例)の3群に分け、解析を
行なった。ハイリスクの乳がんへのワクチン予防投与症例では16例中2例と再発例は
少なかった。転移再発群や治療抵抗転移再発群でも、抗体価が増加した症例では、予
後は良好であったと述べられた。

  久留米大学医学部外科学講座の吉山康一先生より「非小細胞肺がんに対するがんペ
プチドワクチン療法による予防効果の検討」と題して講演があった。2010年1月から
2016年12月に当該臨床試験に登録され、ペプチドワクチン療法のみ単独で施行した非
小細胞肺がん患者60症例を対象とした。さらに, 60症例を再発・再増大の予防目的に
投与した病勢制御群12例と進行がんの治療目的に投与した病勢進行群48例の2群に分
けて、レトロスペクティブに解析した。その結果、免疫反応は病勢進行群の30例
(62.5%)に対し、病勢制御群では11例(91.7%)に免疫反応が認められた。また、病勢
制御群では12例中11例の生存例があり、その内、10例が無再発・無増悪での生存例で
あった。一方、病勢進行群では生存例は10例で、全生存期間の中央値は159日であっ
た。病勢制御群の中には比較的再発・増悪リスクが高いと思われるⅢA期術後やⅢB期
放射線化学療法後の症例なども含まれており, ワクチン療法が予防効果を発揮した可能
性が示唆されたと述べられた。

  久留米大学医学部泌尿器科学講座の末金茂高先生より「がんペプチドワクチンの新
たな試み:再発予防 尿路上皮がん」と題して、講演があった。尿路上皮がんについ
て、がん免疫療法の可能性について言及された後、具体的に尿路上皮ガンに対するこ
れまでのPPV療法の成績について、概説された。臨床病期別には、stageⅢ、Ⅳは
stageⅠ、Ⅱに比較し有意に予後不良であり、治療非抵抗性は、治療抵抗性より有意に
予後良好であったことが示された。また、2008年12月から2016年4月まで当センタ
ーでPPV療法を施行した尿路上皮ガン患者を対象にPPV前に抗がん剤を施行していな
い症例とPPV前に抗がん剤を施行した症例に分け、選択されたペプチドとその誘導能
や全生存率に関してペプチド特異的なIgG抗体誘導能やCTL誘導能やサイトカイン産生
能の比較した結果などが報告された。
 ワークショップの最後に司会の由谷茂先生より「がんペプチドワクチンの新たな
試み:再発予防 大腸がん」と題して、講演があった。StageⅡ、Ⅲ、Ⅳおよび再発
治療後患者で、ワクチン初診時に画像上で評価病変が存在しない大腸がん患者を対象
に、再発率や免疫活性などを調べ、報告された。StageⅢ以下の再発予防症例では再
発を認めず、StageⅣ及び再発治療後でも約半数の例で再発は認められなかった。免疫
活性についてはIgG抗体誘導能について、これまでに発表してきた進行がん60例と
の比較で、1サイクル終了時の活性が有意な上昇がみられたと報告された。
 
 総合討論の中で、PPVの再発予防に関しては、長期生存がみとめられ、有効と考え
られるが、症例数は少ないので、これから症例を積み重ねる必要がある。また、PPV
の投与量や投与間隔などについても、今後の検討課題であるとの意見が出された。

  最後に、一般演題として当センターの七條茂樹副センター長より「T細胞の活性化
および発がんに関与するリンパ球特異的チロシンリン酸化酵素(Lck)由来細胞傷害性
T細胞エピトープペプチドに対する抗体の生物学的活性」と題して、講演があった。
PPVのペプチドは、患者の血中抗体価で選択しているが、このCTLのエピトープペプ
チドに対する抗体の生物学的役割について、ほとんど情報がないので、Lck-486ペプ
チドに対するモノクローナル抗体(mAb)を作成し、その生物学的活性を調べた。
Invitro実験で、抗-Lck mAbとペプチドの免疫複合体によって骨髄細胞から成熟樹状
細胞への誘導が見られた。マウスモデルでは、抗Lck-486 mAbによる腫瘍増殖抑制が
示され、mAbをペプチドワクチンの前に投与することによって、さらに効果的な腫瘍
抑制が認められた。このmAb はTregを含む腫瘍浸潤T細胞を抑制することによって腫
瘍増殖を抑制したと考えられたが、まだまだ解明すべき点が残されていると述べられ
た。

  今回も、盛夏厳しき中、全国より多くの方々に御参加いただき、盛会裡に終えるこ
とができましたことを感謝しております。次回の開催については、日時・場所は未定
ですが、来年も開催する予定です。詳細が決りましたら、ホームページなどでご案内
しますので、多くの方々の参加をお待ちしております。
                           (文責:大内田昭信)

第4回久留米がんワクチン研究会を開催しました

  日 時: 平成29年7月22日(土曜日)13時30分~16時30分  
  場 所: ハイネスホテル・久留米
 
 プログラム

    ◆ 特別講演「ITK-1第Ⅲ相プラセボ対照二重盲検比較試験 -HLA-A24陽性のテモゾロミド
     治療抵抗性神経膠芽腫患者を対象としたITK-1投与の有効性と安全性を検証する臨床試験-」
              寺崎脳神経外科 院長 寺崎瑞彦

    ◆  一般演題 ~ 個別化ペプチドワクチンの進捗報告~    

    ① 「婦人科がんとバイオマーカ」
              久留米大学先端癌治療研究センター 所長 山田 亮
    ② 「治療抵抗性尿路がん」
              久留米大学 医学部科泌尿器講座 准教授 末金茂高
    ③ 「難治性 小児がん」
              保健医療経営大学 教授 織田慶子
    ④ 「治療抵抗性胆道がん」
              久留米大学がんワクチンセンター 外来部門長 由谷 茂

    ◆  基調報告「次世代個別化ペプチドワクチン」
              久留米大学がんワクチンセンター センター長 伊東恭悟

   

第4回久留米がんワクチン研究会を終えて

   久留米がんワクチン研究会は、がんワクチンの発展と実用化を目指し、医師や
 製薬企業関係者らの交流や情報交換の場として、毎年開催しております。
 4回目の今年は、7月22日(土)にハイネスホテル・久留米にて、開催しました。
  
  第4回久留米がんワクチン研究会では、この春に終了した医師主導のHLA-A24
 陽性のテモゾロミド治療抵抗性神経膠芽腫に対する臨床試験第3相治験の報告な
 どを中心に久留米大学をはじめ全国からがんワクチン療法の開発を行なっている医
 師や企業関係者など約70名が参加し、活発な議論が行われました。

   最初に、伊東センター長の司会の下、寺崎脳神経外科院長の寺崎瑞彦先生が特別
 講演「ITK-1第Ⅲ相プラセボ対照二重盲検比較試験 -HLA-A24陽性のテモゾロミド
 治療抵抗性神経膠芽腫患者を対象としたITK-1投与の有効性と安全性を検証する臨床
 試験-」として、講演されました。
  はじめに、これまでの膠芽腫の治療法や治療成績などを挙げられ、膠芽腫が極め
 て難治性疾患であることや中枢神経系には免疫特権があるとこれまで考えてられて
 きたが、中枢神経系も細胞性免疫の監視下にあり、理論的にはがんペプチドワクチ
 ンも膠芽腫に有効であると述べられた。
  続いて、これまで実施してきた膠芽腫に対する第Ⅰ相治験成績や第Ⅲ相治験の実
 施概要およびその成績について、サブグループ解析の結果などと合せて概説されま
 した。尚、本講演の骨子は、今年の6月4日に米国シカゴで開催された米国臨床腫瘍
 学会(ASCO)にて口頭報告をされたものです。

   続いて、野口副センター長の司会の下に、当センターで実施している個別化ペ
 プチドワクチンの進捗報告として、婦人科がんや尿路がんなどの様々ながん腫に加
 えて、昨年9月より開始した小児がんの臨床研究の実施状況やこれまでの結果など
 を報告し、今後の課題などを参加者と討論を行ないました。  
 
 始めに、久留米大学先端癌治療研究センターの山田亮先生より「婦人科領域癌にお
 けるワクチン療法のバイオマーカー」と題して、卵巣癌や子宮頸癌などに対する
 がんペプチドワクチン療法における特異的なIgGやCTL応答をはじめ末梢血リンパ球
 数や抑制性細胞、炎症関連のサイトカインやPD-1などの様々なバイオマーカーの変
 動について、これまでの臨床試験の結果を基に概説された。

   久留米大学医学部泌尿器科の末金茂高先生は「治療抵抗性尿路がん」と題して、腎
 がんでは化学療法や免疫療法の変遷、様々な治療法による治療成績、現在の診療
 ガイドラインなどを、尿路上皮がんや膀胱がんでは、化学療法の変遷や文科省事業
 で実施してきた膀胱癌に対する治療成績などを述べられした。また、腎盂・尿管が
 んについては、がんペプチドワクチン単独療法と化学療法併用との比較試験の結果
 を基に、治療成績やバイオマーカーの解析結果などを概説されました。

  保健医療経営大学の織田慶子先生は「難治性小児がん」と題して講演されました。
 昨年9月より当センターで開始された難治性小児がんに対するがんワクチン療法と
 して、4例の症例があり、それらの症例について治療経過など詳細に報告をされた。

  当センターの由谷茂先生は「治療抵抗性胆道がん」と題して、胆道がんの現状、
 IL-6などの炎症性マーカーとペプチドワクチン療法での予後との関係、低用量シ
 クロォスファミドとペプチドワクチンの併用効果などを中心に概説された後に、当
 センターのこれまでの臨床試験の結果などを基に、新しい試みについて説明され
 ました。

   最後に、当センターの伊東恭悟センター長が基調報告「次世代個別化ペプチドワ
 クチン」と題して、1995年より研究開発を行なってきた個別化ペプチドワクチン
 の流れや膠芽腫に対する治療の現状や第3相治験の付随研究として実施したバイオ
 マーカー解析結果などについても概説された後に、当センターで考えている新しい
 試みなどを述べられました。

  今回も、盛夏厳しき中、全国より多くの方々に御参加いただき、盛会裡に終えるこ
 とができましたことを感謝しております。次回の開催については、日時・場所は
 未定ですが、来年も開催する予定です。詳細が決りましたら、ホームページなどで
 ご案内しますので、多くの方々の参加をお待ちしております。
                           (文責:大内田昭信)    
 
 

市民公開フォーラム「がんを生きる」を開催しました

  日 時: 平成28年7月23日(土曜日)10時~12時  
  場 所: 福岡市 ソラリア西鉄ホテル
 
 プログラム

    ◆ 無料相談
    ◆ 自由討論   基調報告:私のがん・家族のがん


第3回久留米がんワクチン研究会を開催しました

  日 時: 平成28年7月23日(土曜日)13時~17時  
  場 所: 福岡市 ソラリア西鉄ホテル
 
 プログラム

    ◆ 特別企画「個別化ペプチドワクチンの適応拡大 現状と課題」
    ① 始めに:前立腺がん;膠芽腫第3相治験の現状
      久留米大学がんワクチンセンター 治験調整事務局統括 伊藤輝人
    ② 化学療法未治療前立腺がん
      近畿大学医学部泌尿器科学教室 助教 南 高文
    ③ 治療抵抗性膀胱がん
       久留米大学医学部医学科病理学講座 助教 守屋普久子
    ④ 治療抵抗性腎がん・尿路がん
      久留米大学医学部医学科泌尿器科学講座 准教授 末金茂高
    ⑤ 治療抵抗性肺がん
      久留米大学がんワクチンセンター 助教 坂本信二郎
    ⑥ 治療抵抗性食道がん
      久留米大学医学部医学科外科学講座 助教 室屋大輔
    ⑦ 治療抵抗性乳がん
      久留米大学医学部医学科外科学講座 准教授 唐 宇飛
    ⑧ 治療抵抗性胃がん・大腸がん
       内藤病院 院長 内藤雅康
    ⑨ 治療抵抗性肝がん・胆道がん
      久留米大学がんワクチンセンター 外来部門長 由谷 茂
    ⑩ 治療抵抗性卵巣がん・子宮がん
       久留米大学医学部医学科産婦人科学講座 講師 河野光一郎
    ⑪ カクテルワクチン
       久留米大学がんワクチンセンター 治験部門長 野口正典
    ◆  総合討論     


   

第3回久留米がんワクチン研究会を終えて

   久留米がんワクチン研究会は、がんワクチンの発展と実用化を目指し、医師や
 製薬企業関係者らの交流や情報交換の場として、今年で3回目の開催となりまし
 た。今回は、がんワクチンセンター開所3周年記念として、7月23日(土)に福
 岡市のソラリア西鉄ホテルにて午前中に患者さんやご家族を対象とした市民公開
 フォーラム「がんを生きる」を、午後から第3回久留米がんワクチン研究会を合
 せて開催しました。
  
  市民公開フォーラム「がんを生きる」では、当センターの伊東教授ら4名のがん
 治療専門医師が患者さんのがん治療やペプチドワクチン療法などの個別相談を受
 けていました。その後、NPO法人ウィッグリング・ジャパンの上田あい子代表理事
 の司会でがん患者・家族による「がんを生きる」ためのフォーラムが開催され、患
 者・家族や関係者など約50名の参加がありました。

  フォーラムでは、3名のがん患者さんにこれまでのがん治療や生活などの物語(体
 験談)などを語っていただきました。また、仕事のために会場に来られなかった患者
 さんからのお手紙も紹介されました。患者さんが淡々と語るお話の中から、患者ご
 本人のもっと長く生きたい、御家族の方々のもっと長く一緒に居たいという強い気
 持ちに感銘を受けました。

  第3回久留米がんワクチン研究会では、伊東センター長の司会の下、久留米大学
 を中心に全国からがんワクチン療法の開発を行なっている医師や企業関係者など約
 70名が参加し、活発な議論が行われました。今回の研究会では、特別企画「個別化
 ペプチドワクチンの適応拡大 現状と課題」として、当センターが中心となって実施
 している前立腺がんや膠芽腫などの様々ながん腫の臨床研究や治験などの実施状況
 やこれまでの結果などを報告し、今後の課題などを参加者と討論を行ないました。

  始めに、当センターの伊藤輝人氏より「前立腺がん・膠芽腫第3相治験の現状とし
 て」、膠芽腫を中心に第Ⅲ相治験の進捗について報告しました。近畿大学の南高文
 先生は、化学療法未治療去勢抵抗性前立腺がん症例において低用dexamethasone
 併用による個別化ペプチドワクチンの効果などについて説明しました。
  久留米大学の守屋普久子先生は、シスプラチン含有化学療法抵抗性進行膀胱がん
 患者を対象として個別化ペプチドワクチン(以下PPVと略す)の臨床試験成績など
 について報告しました。久留米大学の末金茂高先生は治療抵抗性腎がんや腎盂・尿
 管がんの治療法、化学療法併用によるPPVの効果や効果予測のためのバイオマー
 カー検索などについて述べられました。当センターの坂本信二郎助教は、PPVの治
 療成績を中心に肺がんの型別にこれまでの投稿論文や投稿準備中の論文などをまと
 め、その有用性や課題などを報告しました。

  久留米大学の室屋大輔先生は、進行食道がん患者において駆瘀血剤を主体とした
 個別化漢方薬およびPPV併用による臨床学的有効性や免疫学的有効性の検討結果に
 ついて報告しました。久留米大学の唐宇飛先生は、ホルモン剤・化学療法剤に抵抗
 性乳がんに対するPPVによる治療成績やバイオマーカーによる層別化や病理組織学
 的な検討結果などについても報告しました。内藤病院の内藤雅康先生は、治療抵抗
 性胃がん・大腸がん患者に対するPPVによる治療成績や予後規定因子を検索するた
 めに治療効果に対するサイトカインなどの影響を化学療法剤との比較検討した結果
 を報告された。当センターの由谷茂教授は標準治療抵抗性肝がんに対するPPVの治
 療成績およびsorafenibや化学療法剤との比較や併用などの検討結果について、標準
 治療抵抗性胆道がんではPPVの低用量シクロフォスファミドとの併用効果などを中
 心に説明しました。久留米大学の河野光一郎先生は、再発卵巣がん・卵管がん・腹
 膜がんおよび進行・再発子宮頸がんに対するPPVの安全性と免疫学的有効性につい
 て報告しました。最後に、当センターの野口正典教授は、20種類のペプチドを混ぜ
 た汎用型ワクチン(KRM-20)を開発するために、臨床治験(安全性および至適用
 量を推定するための第Ⅰ相試験および有効性および安全性の探索的検討を行うため
 の早期第Ⅱ相無作為比較試験)を実施し、これまでの結果について報告しました。

   講演後、伊東センター長の司会の下、参加者との間でがんペプチドワクチンの開
 発上の課題などについて活発なディスカッションがおこなわれました。今回も、盛
 夏厳しき中、全国より多くの方々に御参加いただき、盛会裡に終えることができま
 したことを感謝しております。
 次回の開催については、日時・場所は未定ですが、来年も開催する予定です。詳細
 が決りましたら、ホームページなどでご案内します
 ので、多くの方々の参加をお待ちしております。
                            (文責:大内田昭信)


久留米がんワクチン研究会

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