がんワクチン分子部門

研究概要

平成29年度に採択された私立大学研究ブランディング事業では、久留米大学の現在の強みとして「テーラーメイドがんペプチドワクチン」を掲げています。「テーラーメイドがんペプチドワクチン」は久留米大学で独自開発されてきたがんの免疫療法です。近年、免疫チェックポイント阻害療法が急速な発展を遂げ、「免疫療法」はがんの4大治療法のひとつとして、その地位を確立しました。免疫チェックポイント阻害薬は免疫のブレーキを解除することにより抗腫瘍効果を発揮します。しかしながら、免疫チェックポイント阻害剤単独療法では3~4割の患者さんでしか有効性が認められません。このことは、ブレーキを解除しただけでは不十分で、効果的な抗腫瘍効果を得るには同時にアクセルを踏む必要性を示しています。

 免疫のアクセルに相当するのが「がんワクチン」です。がんワクチン分子部門では個々の患者さんの免疫応答に対応するテーラーメイドがんペプチドワクチンの開発を行っています。がんワクチン療法も単独では十分な抗腫瘍効果を得ることは難しいことが我々の実施した第Ⅲ相試験でも明らかとなったことから、他の治療法との併用療法の開発も行っています。また、個々の患者さんの遺伝子変異により新規に出現するがん抗原(ネオアンチゲン)を標的とする完全個別化ワクチンや腫瘍局所における微小環境の改善を応用した次世代がんワクチンの開発の基礎研究も行っています。

部門長 山田 亮

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研究活動

膠芽腫に対するテーラーメイドがんペプチドワクチン第Ⅲ相医師主導治験

 HLA-A24陽性の再発膠芽腫患者を対象にテーラーメイドがんペプチドワクチンの無作為化2重盲検第Ⅲ相医師主導治験を多施設共同で実施しました。88名の再発膠芽腫患者をワクチン投与群(n=58)とプラセボ群(n=30)に2:1の比率で無作為に割り付けました。ワクチン投与群には、HLA-A24陽性患者用に開発されたワクチン候補ペプチド12種の中から、それぞれのペプチドに対する血中IgG抗体価を測定し、抗体価の高いもの上記4種を選択し、1週間隔で12週間皮下投与しました。その結果、主評価項目である全生存期間のプラセボに対する延長効果は認められませんでした。また副次評価項目である1年生存率、無増悪生存期間等についても有意な差を認められませんでした。血中のサイトカインCCL2が中間的なレベルの患者において予後良好であったことから、CCL2レベルの測定がバイオマーカーになることが示唆されました。

 本研究の成果はNeuro Oncol. 2018 Nov 30. doi: 10.1093/neuonc/noy200.に公表されました。

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泌尿器がんにおけるテーラーメイドペプチドワクチン療法のペプチド選択と生存期間との解析

 がんペプチドワクチン療法では強い免疫誘導効果があるが、臨床効果は十分とは言えない状況です。本研究では、テーラーメイドがんペプチド療法を受けた泌尿器がん患者265名(去勢抵抗性前立腺がん154名、進行尿路上皮癌111名)について生存期間と投与ペプチドとの関係を解析しました。その結果、特定のペプチドを投与された患者で長期生存が得られることが明らかとなりました。従来より行われている既存液性免疫に対応するワクチンペプチドの選択に加え、今回得られた結果を加味することで、より高い臨床効果が得られることが期待されます。

 本研究の成果はCancer Sci. 2018 Sep; 109(9): 2660–2669. doi: 10.1111/cas.13709に公表されました。


CP:長期生存に関連するペプチド群


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リンパ球特異的チロシンキナーゼ由来のCTLエピトープペプチドに対する抗体の抗腫瘍活性

 リンパ球特異的チロシンキナーゼ(Lck)由来の抗原ペプチドはがん抗原として細胞傷害性T細胞(CTL)により認識されることが明らかになっており、テーラーメイドがんペプチドワクチンにおいても使用されています。Lckに対するIgG抗体はがん患者のみならず健常人にも存在しますが、その生物学的意義は不明でした。そこで、CTLにより認識されるエピトープペプチドLck486‐494に対するモノクローナル抗体を作製し、その機能を解析しました。その結果、この抗体とLck486‐494ペプチドとの免疫複合体は樹状細胞の分化成熟を誘導することが明らかとなりました。また、マウスの大腸がん移植モデルにおいて腫瘍増殖を抑制すること、この作用は抑制性T細胞の腫瘍局所への浸潤抑制によるものであることが示唆されました。

 本研究成果はCancer Sci. 2018 Mar;109(3):611-617. doi: 10.1111/cas.13522. Epub 2018 Feb 28.に公表されました。

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ヒノキ花粉抗原Cha o 3に相同性を有する新規スギ花粉抗原Cry j 4の発見

 がんに対する免疫治療は全身の免疫状態とも大きく関係しています。花粉アレルギーはがんとならぶ代表的な国民病となっており、中でもスギ花粉とヒノキ花粉はその主たる原因となっています。本研究ではスギ花粉より新規アレルゲンとしてCry j 4を同定しました。Cry j 4は我々がこれまでに同定したヒノキ花粉抗原Cha o 3と高い相同性を示していました。スギ花粉に含まれるCry j 4の量が少ないことから、従来より行われているスギアレルゲン特異的免疫療法にCha o 3もしくはヒノキアレルゲンを加えることでより高い臨床効果が得られる可能性が示唆されました。

 本研究の成果はAllergol Int. 2018 Oct;67(4):467-474. doi: 10.1016/j.alit.2018.02.004.に公表されました。

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がんワクチン外来
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