おなかの免疫から考える、新型コロナウイルスに打ち勝つための独り言

未来を見据え

「免疫を理解し、新型コロナウイルスを正しく恐れるために」

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[70版への追記箇所]
「(19) 再感染は?」の章の「交叉免疫」への追記
南アフリカより新型コロナウイルス変異株に対する「交叉免疫」の可能性が2021年6月3日に報告されました(Moyo-Guete T, New England J Medicine 2021, 6/3)。南アフリカ・ケープコッドの2000年12月31日から2021年1月15日の調査では、90%以上の感染者に南アフリカ由来変異株(B.1.351)が検出されたようです。南アフリカ由来変異株の感染者の血清を調べると、ブラジル・アマゾン由来変異株(P.1)に対しても幾何平均抗体価(genometric mean titer, GMT)が203と充分な効果を有する中和抗体を持たれていると報告されています。南アフリカ由来変異株(B.1.351)とブラジル・アマゾン由来変異株(P.1)では13か所以上もアミノ酸配列が異なるため、交叉免疫がしっかりと機能している科学的根拠なのかもしれません。

「(28) 世界のワクチン効果の現状は?」への追記
イスラエルからワクチン接種状況が2021年6月4日に報告されました(Muhsen K, Lancet Regional Health 2021, 6/4)。2020年3月から2021年2月までのイスラエルでの新型コロナウイルスの累積感染者数は774,030人で、人口1,000人あたり84.5人が感染したと報告されています。また、累積死亡者数は5,687人で人口1,000人あたり0.62人です。現時点では、65歳以上の75%にワクチン接種が終了し、1週間平均感染者数は2021年1月18日時点の「8,168人」から6月4日には「15人」と劇的に減少しています。しかし、ワクチン接種に課題も残るようです。感染蔓延期に、最も感染者数を多く出し感染対策がうまくいっていなかった地域では、ワクチン接種率も何故か低いようです。

「(30) ワクチンの副反応とアナフィラキシーは?」の章の「DNAワクチンによる血栓症の可能性」への追記
アストラゼネカ社のDNAワクチン接種後に血栓症を起こした患者さん全てに、PF4/ヘパリン複合体に対する抗体が陽性であった結果が2021年6月3日にドイツとオーストラリアから報告されました(Greinacher A, New England J Medicine 2021, 6/3)。接種後5~16日目に22歳から49歳の11人が血栓症を発症されています。9人は女性で、体内の数か所に血栓が起こったようです。脳血栓が9名、肺血栓が3名、腹腔内静脈血栓が3名に認められています。ヘパリン投与歴が無いにも関わらず、全員にPF4/ヘパリン複合体に対する抗体が陽性であったと報告されています。また、ノルウェーからもアストラゼネカ社DNAワクチン接種後の血栓症が2021年6月3日に報告されました(Shultz NH, New England J Medicine 2021, 6/3)。接種後7~10日目に32歳から52歳の5人に血栓症が発症しています。女性は4名です。PF4/ポリアニオン複合体に対する抗体が全員に陽性と報告されています。

「(31) ウイルスの変異は?」の章の「N501Y」変異株(イギリス由来)」への追記
新型コロナウイルスの感染力増強に501番目のアミノ酸が重要な役割を担う事が2021年6月7日にもスペインから報告されました(Hodcroft EB, Nature 2021, 6/7)。スペインでは2020年夏に爆発的な感染拡大を認めています。最初にスペインに入ってきたのは「EU1」と呼ばれる新型コロナウイルスで、「D614G」変異が加わる事により少し感染力が増し、さらに「N501Y」変異が加わり感染力は大幅に増強したようです。

「(38) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(全てが諸刃の剣)?」の章の「公共対策」への追記
エボラ出血熱や2002年に中国で発生した重症呼吸器症候群は病原性が高く、感染者が出歩く事が難しいため封じ込めは可能でした。また、2009年にパンデミックを起こした豚インフルエンザ(H1N1)は感染力は強くても病原性が弱いため、事なきを得ました。しかし、新型コロナウイルスは、免疫学的には弱いウイルスであるがため無症状者が多く感染拡大を起こし易いうえ、血栓症という致死的なテロ行為を起し高齢者の死亡者を増やしてしまいます。これまで人類が経験したことがないウイルスと考えてよいのかもしれません。よって、各国の感染対策専門家チームも経験がなく、新型コロナウイルスの感染抑制は困難を極めています。この様な新たなウイルスに対応するには、政府や感染対策専門家からの「top-down」による対策に加えて、各個人・各自治体が知恵を絞り現場に則した「bottom-up」対策の有効性が2021年6月4日に報告されました(Chan EYY, Lancet 2021, 6/4)。事実、日本でも「黙食」という対策が飲食店からもたらされ、「山梨モデル」と呼ばれる飲食店の感染予防対策、「和歌山モデル」や「練馬モデル」と呼ばれる効率的なワクチン接種法などが自治体独自で作り出されています。各個人、各自治体に則した臨機応変な「bottom-up」対策こそが、新型コロナウイルスに対しては効果的かもしれません。

「(38) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(全てが諸刃の剣)?」の章の「オリンピック」への追記
新型コロナウイルス感染による日本での死亡率は2021年6月2日の厚生労働省の報告から計算すると、40歳未満で0.0091%(32人÷351,800人)に対して60歳以上では6.12%(10,525人÷171,890人)であり、40歳未満と60歳以上では約672倍も差があります。世界各国も高齢者に重症者、死者が集中する同様の結果を示しています。よって欧米でワクチン接種が開始される時、数理モデルにより「早期に集団免疫を獲得させ感染者を減らすには、若年者からの接種」、一方「早期に重症者を減らすためには高齢者からの接種」が有効な事が示されています(Matrajt L, Science 2021, 2/3)。重症者の増加に伴う医療逼迫が一番の問題のため、日本を含む多くの国は「早期の集団免疫獲得より、早期の重症者減少」を目的に「高齢者の優先接種」に舵を切られたと個人的には理解しています。そして、高齢者優先接種が非常に効率的であった事を世界の結果が今教えてくれていると思います。

ワクチン接種は、人口の多い都市部より、例外はありますが、人口の少ない地方自治体のほうが進んでいます。各種報道によると、2021年6月8日時点、人口が多い東京都でさえ65歳以上の高齢者のワクチン接種率は20%を超えています。このペースで行けば今月末には高齢者の接種率は50%以上が期待できるのかもしれません。つまり、オリンピック開幕時には「第2のゴール」である集団免疫獲得は難しい状況ですが、「第1のゴール」である「医療逼迫を起こすような重症者の増加は起こさない」は達成できると考えるのが科学的には妥当と個人的に思います。また、オリンピックは真夏にあるため、冬場や春先のような感染が起こりやすい状態では無いのかもしれません。

「(39) 高齢者保護とFocused Protectionは?」の章の「高齢者保護」への追記
世界的にみて、新型コロナウイルス感染による死亡者の40%以上は高齢者施設の入居者である事が2021年6月1日に報告されました(Andrew MS, Lancet Health Longevity 2021, 6/1)。「高齢者の免疫力低下と血栓症の起こり易い健康状態」、「共用スペースが多い施設の構造」、「職員の過剰労働」などの要因が重なる事により、他の感染症では見られないような高齢者施設での死者の集中が起こっている可能性があるようです。

「(41) 季節性インフルエンザやその他の感染症との違いは?」への追記
新型コロナウイルス感染で入院治療が必要になった平均年齢74歳の1,080人を対象とした細菌学的調査結果が2021年6月2日に報告されました(Russell CD, Lancet Microbe 2021, 6/2)。季節性インフルエンザ感染で入院される高齢者は「細菌との同時感染(co-infection)」が特徴なのに対して、新型コロナウイルス感染ではウイルスの感染後2日以降に起こる「細菌の2次感染(secondary infection)」が特徴と報告されています。また、季節性インフルエンザでは同時に感染する細菌肺炎により致死的重症化を起こしてしまいますが、新型コロナウイルス感染では細菌感染の有無により死亡率に変化はないと報告されています。感染しやすい細菌の種類も少し異なるようです。季節性インフルエンザ感染では肺炎球菌や黄色ブドウ球菌が多いのに対して、新型コロナウイルス感染者の肺から検出された細菌の17.8%が黄色ブドウ球菌、12.7%がインフルエンザ桿菌、9.3%が緑膿菌と報告されています。

「(47) 治療法は?」の章の「抗ウイルス薬」への追記
我々の細胞は「鉄・硫黄中心(ion-sulfur)」と呼ばれる呼吸鎖を持ち生命維持に重要な役割を担っています。新型コロナウイルスは鉄・硫黄中心を利用して増殖している可能性が2021年6月3日に報告されました(Maio N, Science 2021, 6/3)。「TEMPOL」と呼ばれる安定ニトロキシドにより鉄・硫黄中心を酸化すれば、新型コロナウイルスが鉄・硫黄中心を利用できなくなり、増殖が抑制できる可能性が報告されています。
「(47) 治療法は?」の章の「血栓治療薬」への追記
免疫が弱いと感染症による重症化の危険が高まるいっぽう、強すぎると自己免疫疾患やアレルギーなどを起こしてしまいます。また、強力な人流抑制は新型コロナウイルスの感染抑制には効果を発揮しますが、計り知れない経済的損失、失業者や自殺者の増加、ひいては犯罪の増加といったリスクを伴います。つまり、全てに完璧は無く「利益とリスクを理解したうえでのバランスが重要」となります。同様な事が、血栓症の治療に対しても起こる可能性が2021年6月4日にブラジルから報告されました(Lope RD, Lancet 2021, 6/4)。血が固まり易くなると血栓症が起こり、固まりにくくしすぎると今度は出血が起こり易くなるようです。新型コロナウイルス感染で入院されD-ダイマーが正常値を超えていた患者さんを2群に分け、304人に血栓予防のための治療が、残りの311人には積極的な血栓治療が施されています。予防的治療としては、84.2%の感染者には低分子のヘパリンを精製した「エノキサパリン」と呼ばれる薬40㎎(BMIが40以下の場合)が1日1回皮下投与され、15.5%の感染者にはヘパリン5000Uが8~12時間毎に皮下投与されています。一方、積極的治療として、90.3%の感染者に血小板第X因子を阻害する「リバーロキサハシ」と呼ばれる薬15~20mgが毎日経口投与され、9.4%の感染者には「エノキサパリン」が体重1キロあたり1mgの量が1日2回皮下投与されています。予防的投与と治療的投与で重症化率や入院期間に統計学的有意差は認めなかったと報告されています。一方、脳出血などの出血を伴う副作用を起こしてしまった患者さんは、治療的投与群で12%、予防的投与群では3%と報告されています。やはり、新型コロナウイルスに合併する血栓症の治療においても血栓と出血のバランスを考慮する必要があるのかもしれません。また、今回の調査対象となった、入院患者さんの平均年齢は49~50歳で、BMIの平均は30.3です。ブラジルで入院治療が必要となった多くの感染者は肥満のようです。肥満人口が多い国では、新型コロナウイルス感染による重症化率や死亡率も高くなるのかもしれません。

「(47) 治療法は?」の章の「新薬」への追記
医学の進歩は目覚ましく、変異株に対する新治療戦略の候補が2つ報告されました。1つ目は「ラクダ」から採取した、新型コロナウイルスに対する「ナノボディー」(別名、variable heavy chain domains of a heavy chain, VHH)と呼ばれる抗体です(Xu J, Nature 2021, 6/7)。我々のIgGは分子量が~50kDaに対して、ナノボディーは~15kDaと三分の一以上小さいのが特徴です。ウイルス表面は複雑な構造で、ヒトのIgGは大きいためウイルスの細胞表面の先端にしか引っ付けません。そして、このウイルス先端部が変異の最も起こり易い領域です。よって、治療目的で用いられる中和抗体(IgG)製剤がウイルスの変異により効力を失う場合があります。この問題を克服してくれる可能性を秘めたのがナノボディーです。小さいため、細胞表面の先端部から、より深部に入りこむことができます。この深部では変異が稀にしか起こらないため、いくら細胞表面先端部が変異しても充分に効果を発揮してくれる可能性を秘めています。

もう1つはIgGとIgMを組み合わせた「IgM-14」と呼ばれる抗体です(Ku Z, Nature 2021, 6/3)。IgMは5量体と呼ばれ、J鎖と呼ばれる鎖でIgG構造が5つ繋がれたものです。1つのIgGは1つの標的しか認識しません。我々の体が持つIgMも、同じ標的を認識するIgG構造が5つ繋がれているため標的は1つです。「IgM-14」は遺伝子組み換え技術により、異なった標的を認識する5種類のIgGを繋ぎ合わせてIgMを人工的に作り出しています。つまり、5つの標的を狙えるIgMになります。例えば、イギリス由来変異株特異的IgG、インド由来変異株特異的IgG、南アフリカ由来変異株特異的IgG、アマゾン由来変異株特異的IgG、カリフォルニア由来変異株特異的IgGを繋げれば、これらの変異株全てに対応できるIgMができあがります。マウスを用いた実験で、IgM-14を点鼻薬のように投与すれば、これらの変異株の感染が予防できる可能性も示されています。

 

[69版への追記箇所]
「(7) 新生児、小児、学生は?」の章への追記
飛沫中に含まれるイギリス由来変異株(B.1.1.7)のウイルス量に関する大規模調査結果が2021年5月25日にドイツから報告されました(Jones TC, Science 2021, 5/25)。20~65歳に比べて、20歳未満の飛沫に含まれるウイルス量は16%~49%まで、すなわち半分以上少ないと報告されています。また、飛沫に含まれるウイルス量は、20歳以降では年代別な差は認めないようです。「イギリス由来変異株であっても、子供がうつす可能性は低い」事を示す科学的根拠の一つです。また、20歳未満の重症化率も低く、新型コロナウイルス感染拡大が起こってから1年以上が経過しても、日本における新型コロナウイルス感染による20歳未満の死者はいまだ「0」です。

「(13) 抗体の役割は?」の章の「抗体の寿命」への追記
抗体を産生する能力を得たB細胞は形質細胞へと更に成長(分化)していきます。形質細胞には寿命が1年以内の短命な「short-lived plasma cells」と、数十年も生き続ける「long-lived plasma cells」に分類されます。感染者の血液の解析により、新型コロナウイルス感染では短命な「short-lived plasma cells」に成長して行くとの考えが主流でした。しかし、新型コロナウイルス感染による軽症者の骨髄を解析すると、長寿の「long-lived plasma cells」が骨髄に潜んでいることが2021年5月24日に報告されました(Turner JS, Nature 2021, 5/24)。新型コロナウイルス感染で産生された抗体(IgG)は感染後7か月頃から減りはじめ、約11か月で検出可能範囲ギリギリまで減少します。しかし、抗体が無くなっても、新型コロナウイルスが再び感染してくれば、長寿の「long-lived plasma cells」が即座に抗体産生を再開してくれ我々を守ってくれることになります。判断は時期尚早ですが、「新型コロナウイルスに対して終生免疫が獲得できる」可能性や、「新型コロナウイルスが夏風邪程度の風土病になる」可能性も出て来たのかもしれません。

「(28) 世界のワクチン効果の現状は?」への追記
小児に対するファイザー社RNAワクチンの臨床試験結果が2021年5月27日に報告されました(Frenck RW, New England J Medicine 2021, 5/27)。12歳から15歳までの2,260人を対象とされています。2回目接種7日目で感染予防効果は100%と報告されています。副反応も接種部の腫れや痛みが主体のようです。2回目接種後に38℃以上の高熱がでた割合は、「12歳から15歳」で20%、「16歳から25歳」で17%と報告されています。12歳から15歳でワクチン接種を受けた1,131人のうち1人に40℃以上の高熱がでていますが、2日後に解熱したようです。また、12歳から15歳で特徴的な副反応は「リンパ節の腫脹」と報告されています。リンパ節は獲得免疫細胞軍が指示を受ける指令基地です。獲得免疫細胞数が増えれば増えるほど基地も大きくなりリンパ節腫脹につながります。つまり、ワクチン接種により、12歳から15歳では、成人よりはるかに多い獲得免疫兵が、新型コロナウイルスと戦える準備ができた事を教えてくれています。事実、獲得免疫軍のB細胞部隊が作る中和抗体の量は「16歳から25歳」に比べて、「12歳から15歳」では1.76倍も多いと報告されています。

ファイザー社RNAワクチンが誘導する免疫反応の調査結果が2021年5月27日に報告されました(Sahin U, Nature 2021, 5/27)。1回目接種後3週時点で49~1,161 U/mLの中和抗体が産生されると報告されています。個人差は非常にあるようですが、1回目接種後3週目には、感染予防に充分な中和抗体が既にできる方もいらっしゃる事になります。2回目接種後1週目には中和抗体量は、さらに増加して691~8,279 U/mLに、9週目には1,384~29,910 U/mLにまでに達するようです。ファイザー社RNAワクチンは1回で30μgのRNAが接種されていますが、10μgでも同等の中和抗体の産生が誘導できるようです。しかし、30μgを接種した方が抗体が長く維持できると報告されています。T細胞軍は「CD4陽性部隊」と「CD8陽性部隊」が協力して敵を倒します。季節性インフルエンザなどの既存のワクチンに比べて、ファイザー社RNAワクチンは10倍以上も「CD4陽性部隊を強化」できると報告されています。また、CD8陽性部隊に対しては「多様性(poly reactivity)」も誘導できるようです。つまり、CD8陽性部隊が敵の至る所を攻撃できるようになり、敵が変異しても撃退してくれる事を意味します。ファイザー社RNAワクチンは、「中和抗体産生を強く誘導して感染を予防」してくれるばかりでなく、「T細胞免疫も強力に引き出し、変異したウイルスに対しでさえ重症化を予防」してくれるようです。非常に頼もしいかぎりです。

無症状者が多い新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ難しさを世界が教えてくれています。よって、日本の緊急事態宣言は「重症者の数を最低限に抑えて医療崩壊を防ぐ目的」で発出されています。重症化を起こしやすい方は、65歳以上の高齢者です。事実、2021年5月26日の厚生労働省の報告によると、これまでの新型コロナウイルスの累積陽性者数は60歳以上で166,262人で、死者数は10,320人です。一方、20歳代では、陽性者数は157,869人にも関わらず死者数は7人で、季節性インフルエンザより少ない状態です。事実、日本での新型コロナウイルス感染による死亡率は20歳代(7 ÷ 157,869)は0.004%の計算になります。一方、60歳以上の死亡率(10,320 ÷ 166,262)は6.2%で、20歳代に比べて死亡率は1,400倍以上も高くなります。政府が十分量のワクチンを既に確保されたおかげで、新型コロナウイルスのワクチン接種は急速に進み2021年6月2日には1,000万人を超えました。感染蔓延の抑制に必要な集団免疫確保のための6,000万人以上には達していません。しかし、重要な点は、重症化を起こしやすい65歳以上の高齢者3,500万人のうち500万人以上は既にワクチンが接種された事実です。2021年1月初期と同じような感染爆発が起こったとしても、重症者数は2割程度減少する計算になります。緊急事態宣言を発出する原因となった「医療崩壊の危険性」は無くなってきていると個人的には信じています。緊急事態宣言の発令の目安となる「警戒ステージ分類の基準」も、各年齢層のワクチン接種率を参考に見直す時期に入ったのかもしれません。

「(31) ウイルスの変異は?」の章の「その他の変異株」への追記
ブラジル・アマゾン由来変異株(P.1)の発生経路の調査結果が2021年5月25日に報告されました(Naveca FG, Nat Med 2021, 5/25)。アマゾンで2020年3月17日に発見された「B.1.195」と呼ばれる変異株が、2020年5~6月に「B.1.1.28」と呼ばれる変異株に進化し、2020年11月から現在の「P1」変異株に更なる進化を遂げたようです。その後P1変異株は僅か2か月で主流となるほどの急速な速さで蔓延を起こしています。「ヒト・ヒト感染の速さ」が、この様な急速な度重なる変異をもたらした可能性があるようです。何故なら、アマゾン領域でマスクやソーシャルディスタンス等の感染予防対策をとられる方は40%以下のようです。やはり、マスクやソーシャルディスタンス等の感染対策が変異株発生の予防につながるのかもしれません。

アマゾン由来変異株(P.1)は、アマゾンから帰国した日本人旅行者に2021年1月12日にブラジル以外で初めて検出されています。日本の検疫の水際対策で検出し、日本国内での流行を防いだことになります。日本の水際対策もしっかりしている事を示唆する科学的根拠かもしれません。また、変異株の流入を水際対策で完璧に防ぐことは不可能に近い事は世界が既に教えてくれています。例えば、PANGOの2021年6月3日のホームページによると、イギリス由来変異株は完璧な防疫を続けていた台湾を含む135か国に既に蔓延しています。また、アマゾン由来変異株は53か国へ、インド由来変異株は61か国へ、南アフリカ由来変異株は92か国へと広がっているようです。また、2021年6月2日に神戸大学から「日本国内で変異した可能性がある新たな新型コロナウイルス変異株」も報告されました。もし、水際対策で防げても、変異は日本国内でも起こる事を教えてくれています。事実、数限りない種類の新型コロナウイルスの変異株が世界中から報告され続けています。2021年6月3日時点で報告されている変異株の種類にご興味があられる方は、https://cov-lineages.org/lineage_description_list.htmlをご覧ください。また世界中から蓄積された膨大な情報により各アミノ酸変異の特徴も解明され、変異株も未知ではなくなってきました。、「変異株」という言葉で過剰に反応することなく、科学的根拠にもとずいた冷静な対応・対策が必要なのかもしれません。

「(34) マスク文化は?」の章の「マスクの着用法」への追記
数理モデルを用いた統計解析により、マスク着用が新型コロナウィルス感染予防の最善策である根拠が2021年5月20日に報告されました(Cheng Y, Science 2021, 5/20)。「不織布マスク」を着用すれば、屋外での会話による感染は予防できるようです。ただし、あくまでも普通の会話での解析です。屋外でも、大人数で大声を出せば、飛散するウイルス量が増えて不織布マスクだけでは予防は難しいのかもしれません。事実、ウイルス量が多くなる屋内では、不織布マスクだけでは不十分な可能性が指摘されています。屋内では「不織布マスク」に加えて「換気の徹底」と「ヒトとの距離の確保」が最低限必要なようです。

「(35) 感染に必要なウイルス量は?」への追記
ドイツから25,381人の新型コロナウイルス感染者を対象とした、飛沫中に含まれるウイルス量の大規模調査結果が2021年5月25日に報告されました(Jones TC, Science 2021, 5/25)。イギリス由来変異株(B.1.1.7)に感染直後、無症状者、軽症者、入院治療が必要となった重症者の別に調べられています。10億個ものウイルスを飛沫に含み「スパースプレッダー」になりうる可能性がある方は8%もいらっしゃるようです。唾液中に10億個ものウイルスを含んでいる可能性がある方は、「重症者」ばかりでなく「軽症者」の中にも多くおられるようです。また、イギリス由来変異株は増殖力が強いため(約2.6倍)、他の新型コロナウイルスに比べて飛沫中のウイルス量も1.05倍に増えていると報告されています。ウイルス量がピークに達するのは、症状が出て1.8日目のようです。やはり、「倦怠感、微熱、味覚・嗅覚障害等の軽度な症状のため、無理をしてでも仕事に行く」モーレツ社員タイプが最も感染拡大を助長していることを教えてくれています。「私がいなければ仕事がはかどらない」という思いで無理をして働くと、数日後には部下全員が新型コロナウイルス感染で隔離されてしまい「私一人では何もできない」という状態になるのかもしれません。

「(38) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(全てが諸刃の剣)?」の章の「公共対策」への追記
スペインから非常に興味深い「前向き試験」の結果が2021年5月27日に報告されました(Revollo B, Lancet Infectius Disease 2021, 5/27)。18歳から59歳の1,047人に抗原検査を午前中に行い、陰性を確認しています。半数の方は帰宅してもらい、残りの半数の方には検査から5時間以内にコンサートなどの屋内イベントに参加してもらっています。8日後に「transcription-mediated amplication test (TMA)」と呼ばれる最も感度の高い手法で、新型コロナウイルスが検査されています。自宅待機群465人中に陽性者は13人(3%)で、屋内イベント参加群495人中に陽性者は15人(3%)で、優位差はなかったと報告されています。TMAは感度が高すぎ陽性であっても感染している判断は難しいため、一般的に用いられているRT-PCRでも検査が行われています、どちらの群においてもRT-PCRでの陽性者は1名で、差はなかったと報告されています。調査対象人数が少ないので結論を出すには時期尚早ですが、充分な感染予防対策をとっていれば「屋内イベントは新型コロナウイルスの感染源になりにくい」のかもしれません。

「(38) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(全てが諸刃の剣)?」の章の「オリンピック」への追記
2021年6月1日にオーストリアからソフトボールのオリンピック選手が入国されました。万全を期すに越したことはありませが、余りに過剰に反応されている方もいらっしゃるような懸念があります。何故なら、選手と関係者は全員ワクチンを接種されています。もし、この選手達が新型コロナウイルスの感染源になるのであれば、ワクチンの効果は無いと言う事になります。つまり、日本はワクチン接種が進んでも、永遠に緊急事態宣言が必要な事を意味します。個人的には「ワクチンを接種された方は人にうつす可能性はほぼ無くなり」そして「日本もワクチン接種が進めば昔の生活が取り戻せる」と強く信じています。

しかし、注意が必要な点もあります。新型コロナウイルスワクチンといっても全てが同じではありません。例えば、中国シノバック社の不活化ワクチンの感染予防効果は低く、変異株に対応できない可能性も多く報告されています(NATURE NEWS 2021, 1/15;NATURE NEWS 2021, 5/4)。事実、2021年6月2日時点でシノバック社の不活化ワクチン接種率が49%のバーレーン、57%のチリでは、新型コロナウイルス変異株の感染拡大が再度起こっています。やはり、海外選手や関係者のワクチン接種率、さらには使用されたワクチンの種類を把握して、選手団や種目に適した臨機応変な対応が必要なのかもしれません。

「(38) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(全てが諸刃の剣)?」の章の「比較の重要性」への追記
ロックダウン等の人流抑制により最も減少した感染症は「市中肺炎」の可能性が2021年6月1日に報告されました(Brueggemann AB, Lancet Infectious Disease 2021, 6/1)。市中肺炎では、健常人の咽頭に存在する「肺炎球菌」や「インフルエンザ桿菌」といった細菌が、高齢者などの免疫力の低下した方に感染すると致死的な誤嚥性肺炎などをおこしてしまいます。2016年には、全世界で240万人もの尊い命を市中肺炎が奪っています。世界28か国(残念ながら日本は含まれていません)の統計によると、ロックダウンの発令により、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、髄膜炎菌による感染者は38%減少し、8週間ロックダウンが継続されると82%も減少したと報告されています。市中肺炎の発生頻度が、「実際に感染につながるヒト・ヒト接触を、どれだけ抑制したか」を判断する科学的指標になるのかもしれません。日本では、誤嚥性肺炎により毎年30,000人以上の高齢者が亡くなられています。新型コロナウイルスのパンデミックにも関わらず、2020年度の日本の死者数は減少しています。誤嚥性肺炎による死者の減少が一因を担った可能性は否定はできません。もしそうであれば、「自粛に依存しながらも各自の計り知れない努力」そして「思いやりのマスク文化」により、海外でのロックダウン以上の効果を日本では出せているのかもしれません。

新型コロナウイルス感染者が爆発的に増えた時のフランスの対策が2021年5月25日に報告されました(Leone M, Lancet Regional Health, 2021, 5/25)。フランスでは集中治療室のICUベッド数は5,400床です。日本のICUベッド数は6,500床(日本集中治療学会のホームページ)ですので、人口当たりのICUベッド数はフランスの方が日本より多いようです。フランスでは、感染者数増加時に「術後管理用」や「中等症用のcare unit」のベッドを代用してICUベッド数を19,571床まで増床したと報告されています。また、人工呼吸器管理のため、473人の麻酔科研修医を、追加されたベッド対応に派遣する対応をとられたようです。しかし、最終的には「ICUベッド数の不足と、新型コロナウイルス感染による死者数には相関性がなかった」と報告されています。

「(43) 重症化しやすい基礎疾患は?」の章の「関節リウマチ」への追記
関節リウマチで関節外に病変のある患者さん57人を対象とした、新型コロナウイルス感染による重症化の調査結果が2021年5月28日に報告されました(Hsu T Y-T, Lancet Rhematology 2021, 5/28)。感染した場合、健常人に比べて関節外病変のある関節リウマチ患者さんでは、集中治療室で治療が必要となる重症化率は2.08倍、人工呼吸器装着が必要となる確率は2.6倍高くなると報告されています。しかし、重症化率は高いのですが、死亡率や後遺症の発症率は健常人と有意差は認めないと報告されています。

 

 

[68版への追記箇所]
「(7) 新生児、小児、学生は?」への追記
新型コロナウイルス感染により子供に稀に発症する「小児発症性多臓器炎症症候群」の調査結果が2021年5月24日に報告されました(Penner J, Lancet Child & Adolescent Health 2021, 5/24)。平均年齢10.2歳で42人の「小児発症性多臓器炎症症候群」患者さんが調査されています。発症時には96%に腹痛、下痢、嘔吐などの消化器症状が認められています。また、発症時にはCRP、LDH、フェリチンなどの炎症の指標が著増していますが、6週で正常値に回復しています。死者も認められず、6か月後に後遺症が残る事もほとんど無いと報告されています。

「(29) ワクチンの副反応とアナフィラキシーは?」の章の「DNAワクチンによる血栓症の可能性」への追記
アストラゼネカ社のDNAワクチン接種後に血栓症を起こした患者さん9人の調査結果が2021年5月9日にも報告されました(Vayne C、New England J Medicine 2021, 5/19)。全員女性で、平均年齢は44歳と報告されています。脳血栓が6人に、腹腔内静脈血栓が5人に起こっています。2人には脳と腹腔両方に血栓が起こった計算になります。やはり、血を固めるはずの血小板が減少しながらも、血が固まり血栓ができるヘパリン起因性血小板減少症と類似した病態を示しています。ヘパリン起因性血小板減少症では、血小板第4因子(PF4)とヘパリンが手を繋いだ複合体と呼ばれる物質に対して抗体を作り出します。よって、ヘパリン起因性血小板減少症の診断には、PF4/ヘパリン複合体に対する抗体が用いられます。一方、アストラゼネカ社のDNAワクチン接種で血栓症を起こした患者さんでは、PF4/ヘパリン複合体に対する抗体は検出されず、PF4が硫酸ポリビニル(PVS)と手を繋いだ複合体に対する抗体が検出されると報告されています(Vayne C、New England J Medicine 2021, 5/19)。同様な結果が2021年5月20日にも報告されました(Muir KL, New England J Medicine 2021, 5/20)。アストラゼネカ社のDNAワクチン接種後14日目に腹腔内静脈血栓が起こった48歳の女性です。PF4/ヘパリン複合体に対する抗体は陰性で、PF4/PVSに対する抗体が強陽性と報告されています。生体内では、アミノ酸や糖鎖などが複雑に絡み合い立体的な分子を作り出します。これにより、分子の電荷を変化させます。つまり、磁石のように引き合う力を変化させることにより、好みの分子には強力にくっつき、有害な分子は弾き飛ばせるようになります。PVSは我々の体内には存在しないため、PVSに類似した磁石力を持つ生体内の何らかの分子とPF4が複合体を作り血栓を起こしている可能性もあるのかもしれません。

「(30) ウイルスの変異は?」の章の「「N501Y」変異株(イギリス由来)」への追記
コロナウイルスの501番目のアミノ酸がヒトアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合を主に左右している可能性が2021年5月24日に報告されました(Liu K, Cell 2021, 5/24)。コウモリ由来のコロナウイルスRaTG13は501番目のアミノ酸を介して、ヒトACE2に結合できるようです。しかし、コウモリ由来のコロナウイルスは501番目のアミノ酸はアスパラギン酸「D」であるため、ACE2への結合が新型コロナウイルスに比べて70倍以上弱いようです。このコウモリ由来コロナウイルスの501番目のアミノ酸(D501)がアスパラギン「N」(N501)へ変異してヒトに感染できるようになり、チロシン「Y」に変異して(N501Y)、更に感染力を増強させているようです。この結果は、新型コロナウイルスはコウモリ由来で「N501」の変異に最大の注意が必要な事を教えてくれているのかもしれません。

「(30) ウイルスの変異は?」の章の「その他の変異株」への追記
米国CDCが2021年5月17日に、注意が必要な変異株を「Varinats of Interest」 と「Variannts of Concern」の2群に分類されました。「Variants of Concern」の方がより危険なウイルスという事になります。やはり、イギリス由来変異株「正式名称B.1.1.7」、南アフリカ由来変異株「B.1.351」、カリフォルニア由来変異株「B.1.427」、ブラジル(アマゾン)由来変異株「P.1」に最大限の注意が必要なようです。一方、インド由来変異株「B.1.617.2」は最大限注意が必要な「Variants of Concern」には分類されていません。

 

 

変異株の殆どは多くの変異をすでに持っています。感染力は、「N501Y」変異を持つと~50%強くなり、「L453R」変異があると~20%強くなるようです。「L453R」変異は「適応性」を獲得するための変異の可能性が報告されています(Thesnokova V, BioRxiv 2021, 3/11)。つまり、少し感染力が増しながら、逆に毒性が弱くなります。これにより、感染しても無症状者が多くなり、ウイルスが蔓延しやすくなります。「E484K」変異は感染力に変化は与えませんが、中和抗体の効果を減弱する作用をもちます。よって、「N501Y」変異と「E484K」変異の2つを兼ね備える南アフリカ由来変異株「B.1.351」とブラジル(アマゾン)由来変異株「P.1」が現時点では最も危険な新型コロナウイルスになるのかもしれません。

 

世界中の新型コロナウイルスの変異情報を集積し解析しているPANGOの2021年5月24日の報告では、日本でこれまで検出された変異株は、イギリス由来変異株「B.1.1.7」が2,560人、南アフリカ由来変異株「B.1.351」が70人、アマゾン由来変異株「P.1」が70人です。一方、インド由来変異株「B.1.617.2」は127人と増加傾向を示しているようです。インド由来変異株は「L452R」変異のため、「N501Y」変異を持つイギリス由来変異株「B.1.1.7」より感染力は弱いけれども、適応性を持っているかもしれません。

「(31) 変異したウイルスに対するワクチン効果と各自の対策は?」の章の「インド由来変異株」への追記
2021年5月21日の英国公衆衛生庁(Public Health England)の報告によると、ファイザー社RNAワクチンを2回接種した場合の感染予防効果は、イギリス由来変異株「B.1.1.7」に対して93%で、インド由来変異株「B.1.617.2」に対しては88%と報告されました。1回接種では、インド由来変異株「B.1.617.2」に対して効果が弱い可能性があるため、ワクチンは必ず2回接種するように呼びかけられています。一方、アストラゼネカ社のDNAワクチンのインド由来変異株に対する感染予防効果は60%と報告されています。

「(37) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(全てが諸刃の剣)?」の章の「公共対策」への追記
厚生労働省の2021年5月26日の報告によると、2020年度の妊娠届けは872,226件で2019年の916,590件に比べて4.8%も減少したようです。第1回目の緊急事態宣言は2020年4月7日に一部地域に、4月16日に全国へ発令され、5月25日に解除されています。妊娠届けは、2020年5月に急激に減少し、9月頃から増加傾向に入り、12月には、ほぼ例年なみに回復しています。やはり、緊急事態宣言直後の妊娠控えが多いのかもしれません。

「(37) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(全てが諸刃の剣)?」の章の「オリンピック」への追記
オリンピックに対する医学的見地が2021年5月25日にNew England Journal of Medicine に掲載されました(Sparrow AK, New England J Medicine 2021, 5/25)。最も安全な対策はオリンピック・パラリンピックの中止ですが、バラバラになっている世界中の国が一丸となれる数少ない重要な機会である事も考慮しないといけないとの意見です。やはり、「感染リスク」と「世界平和に繋がるメリット」のバランスと言う事になります。オリンピック・パラリンピックのリスクを最小限に抑えて成功させるには、科学的根拠に基づく対策の強化のようです。ファイザー社がオリンピック・パラリンピック選手に無償で提供されるワクチンにより感染リスクは間違いなく激減します。しかし、完璧をきすためには、ワクチン接種対象外の年齢の選手や、個人的理由または社会的理由によりワクチンが接種できていない選手達がいる事も考慮する必要性を強調されています。つまり、全ての種目に同一の対策を取るのでなく、各競技ごとに異なる対策を講じる必要があるようです。例えば、ワクチン接種対象外の16歳以下の選手が多い体操、水泳、跳び込みでは異なった対策を助言されています。各競技ごとに選手のワクチン接種率を把握する必要があるのかもしれません。また、種目ごとでも感染リスクが異なるため、異なった感染対策を助言されています。例えば、屋外競技でヒトと接する機会の少ないセーリングやアーチェリーは「低リスク」、屋外でもヒトと頻回に接触する「ラグビー」や「サッカー」は中等度リスク、そして屋内でヒトと密に接する柔道やレスリングは「高リスク」となります。また、毎日行えるPCRや抗原検査の確保、選手達の個室の確保、移動バスでのN95マスクの無償提供も推奨されています。個人的には、すぐに結果が出て、どこでも行える抗原検査の活用が理想的と思います。また、選手に集団感染が起こった場合の、専用病院の確保も提言されています。アメリカ海軍等は、1,000床を有し何処にでも移動できる病院船を所有されています。万が一に備え、病院船の日本への寄港をアメリカに要請するのも一案かもしれません。

「(40) 季節性インフルエンザとの違いは?」の章への追記
報道で知り、国立感染症研究所のホームページを確認して見ると2021年5月7日に興味深い結果が報告されています。自粛の効果で、新型コロナウイルス以外のほとんどの感染症が2020年度は激減しています。一方、新型コロナウイルスと同様に、我々の細胞を癒合(合胞体)させて増殖するRSウイルス感染は約2倍も増えていると報告されています。偶然の可能性は勿論あります。しかし、新型コロナウイルスはRSウイルスと同じ要因(例えば、湿度と気温のバランスや昼夜の寒暖差など)に左右されて感染拡大をしている可能性も否定はできないのかもしれません。私は後者の可能性を強く期待しています。なぜなら、RSウイルスは2021年11週目(3月後半)から爆発的に増え始め、現時点(5月)には減少傾向に入っているようです。新型コロナウイルスも同様の経過をたどってくれる事を祈っています。

「(42) 重症化しやすい基礎疾患は?」の章の「重症化因子」への追記
エジプト、エチオピア、ガーナ、ケニア、リビア、マラウィ、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、南アフリカと言った10カ国64基幹病院から、6,679人の重症新型コロナウイルス感染者の調査結果が2021年5月22日に報告されました(The Africa COVID-19 Critical care outcomes study, Lancet 2021, 5/22)。これまでの他国からの報告と同様に、死亡率は糖尿病で1.25倍、慢性肝疾患で3.48倍、慢性腎疾患で1.89倍、入院24時間以内の心肺低下で4.43倍増加すると報告されています。

19歳から100歳までの3,400万人を対象とし、死に繋がる重症化リスクを検証するためのQCovid modelの結果がイギリスから2021年5月25日に報告されました(Nafilyan V, Lancet Digital Health 2021, 5/25)。新型コロナウイルス感染による死亡率は、2020年1月24日から4月20日の期間は0.08%、2020年5月1日から7月28日の期間で0.04%と報告されています。死亡のリスク因子は高い順から、70歳以上、糖尿病、認知障害、高齢者者施設と報告されています。つまり、これらの重症化リスクの高い方々にワクチンが行き渡れば、医療逼迫は解消されると考えられます。

「(42) 重症化しやすい基礎疾患は?」の章の「ガン」への追記
ガン患者さんの新型コロナウイルス感染による死亡率の調査結果が2021年5月20日に報告されました(Bange EM, Nat Med 2021, 5/20)。新型コロナウイルスに感染して中等症に陥ったガン患者さん100人の予後が調査されています。中等症に陥った場合の死亡率は、前立腺ガンや乳ガンなどの固形ガンで38%、白血病などの血液ガンでは55%と報告されています。また、血液ガンの患者さんでは、IgMやIgGが著減していることも示されています。しかし、非常に期待が持てる結果も示されています。抗体が産生できなくても、接近戦の名手であるCD8陽性のT細胞部隊がワクチンにより敵を覚え、重症化から守ってくれると報告されています。矢(抗体)の達人であるB細胞がいなくても、新型コロナウイルスは撃退できる事を教えてくれる科学的根拠です。事実、B細胞や抗体を無くす効果がある「抗CD20抗体療法」を受けている患者さんでも、ワクチンの重症化予防効果は充分あるようです。

「(42) 重症化しやすい基礎疾患は?」の章の「重症化因子」への追記
エジプト、エチオピア、ガーナ、ケニア、リビア、マラウィ、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、南アフリカと言った10カ国64基幹病院から、6,679人の重症新型コロナウイルス感染者の調査結果が2021年5月22日に報告されました(The Africa COVID-19 Critical care outcomes study, Lancet 2021, 5/22)。これまでの他国からの報告と同様に、死亡率は糖尿病で1.25倍、慢性肝疾患で3.48倍、慢性腎疾患で1.89倍、入院24時間以内の心肺低下で4.43倍増加すると報告されています。

19歳から100歳までの3,400万人を対象とし、死に繋がる重症化リスクを検証するためのQCovid modelの結果がイギリスから2021年5月25日に報告されました(Nafilyan V, Lancet Digital Health 2021, 5/25)。新型コロナウイルス感染による死亡率は、2020年1月24日から4月20日の期間は0.08%、2020年5月1日から7月28日の期間で0.04%と報告されています。死亡のリスク因子は高い順から「70歳以上」、「糖尿病」、「認知症」、「高齢者者施設に入居」と報告されています。つまり、これらの重症化リスクの高い方々にワクチンが行き渡れば、医療逼迫は解消されると考えられます。

「(46) 治療法は?」の章の「人工呼吸器」への追記
同様の結果が、6,679人の重症新型コロナウイルス感染者を対象としたアフリカ諸国の調査でも2021年5月22日に報告されました(The Africa COVID-19 Critical care outcomes study, Lancet 2021, 5/22)。死亡率は、酸素投与が必要なかった感染者に対して、経鼻やマスクを介して酸素を投与された方は2.72倍、持続的気道陽圧(CAPS)では3.93倍、人工呼吸器装着では15.27倍も増えたと報告されています。人工呼吸器装着に至ると言う事は重症度も高い事を示唆し、死亡率が高くなる事は理解できます。しかし、アフリカでの医療体制を考慮したとしても、持続的気道陽圧と人工呼吸器装着での死亡率に4倍近い差が出る事は考えにくいのかもしれません。

[67版への追記箇所]
「(10) 血栓症 対 サイトカインストームは?」の章の「サイトカインストーム治療薬の効果」への追記
透析のような手法で体内から炎症性サイトカインを除去できる「CytoSorb」の臨床治験結果が2021年5月14日に報告されました(Supady A, Lancet Respiratory Medicine 2021, 5/14)。新型コロナウイルス感染でECMO装置が必要となった重症化患者さんに使用されています。Cytosorbents社のホームページによると、Cytosorbは55kDaより小さい疎水性のタンパク質が除去できるようです。理論上では、IL-1、IL-8、TNF-αモノマー、IL-6、IFN-γといった炎症性サイトカインに加えて、IL-10といった免疫抑制サイトカインも除去できることになります。IL-6の平均値が357 pg/mLに達しECMO装置が必要となった新型コロナウイルス感染者17人にCytosorbが使用されています。IL-6は98.6 pg/mLへ低下も30日後の生存率は僅か18%と報告されています。コントロール群は、IL-6 の平均値が289 pg/mLに達した17人のECMOを装着された重症者です。CytosorbなくともIL-6は112 pg/mLまで低下し、生存率は76%%と報告されています。つまり、Cytosorbが劇的に死亡率を増やしたことになります。サイトカインと呼ばれる免疫因子には、悪玉もあれば善玉もあります。これらを一挙一絡げで除去してしまうと新型コロナウイルス感染を治すどころか、悪化させてしまう事を教えてくれているのかもしれません。

「(14) 新たな免疫学的概念は?」の章の「BCG」への追記
2021年5月19日時点で緊急事態宣言が発出された都道府県は東京、京都、大阪、兵庫、愛知、福岡、北海道、岡山、広島です。上述したように、1999年から2002年にBCG接種率の著減があった都道府県(Kinoshita M, J Infect 2020, p625)は、東京都(31.3%)、神奈川県(35.6%)、広島県(36.9%)、京都府(42.1%)、岡山県(45.8%)、福岡県(46.5%)、宮城県(49.3%)、高知県(51.5%)、大阪府(55.6%)、北海道(55.7%)、熊本県(56.1%)、大分県(56.3%)、兵庫県(57.2%)、愛知県(61.8%)のようです。、緊急事態宣言が出された都道府県は、全てBCG接種の暗黒期があった都道府県です。偶然の可能性は勿論ありますが、BCGが感染拡大抑制に貢献している可能性も否定はできないのかもしれません。一方、BCGに重症化の予防効果は無い可能性が台湾から報告されました(Su W-J, Int J Environ Res Public Health 2021, p4303)。台湾では1979年から日本株BCGが接種されています。新型コロナウイルスに台湾で感染した25歳から33歳でBCG接種歴が無い方は106人で、中等症まで悪化した方は14.2%、重症化した方は0.9%と報告されています。また、同年齢でBCG接種歴のある方では78人が感染され、中等症は19.2%で重症化はゼロと報告されています。

「(26) 集団免疫は?」の章への追記
ワクチンによる集団免疫の誘導が高齢者施設を対象とした米国の調査で2021年5月19日に明らかにされました(White EM, New England J Medicine 2021, 5/19)。280の高齢者施設を対象とされ、Genesis Health Careのデジタル化診療情報が用いられています。対象となった高齢者は1回以上のワクチン接種を受けられた18,242人と、ワクチン接種を受けられていない3,990人です。80.4%の方にファイザー社のRNAワクチンが、19.6%の方にモデルナ社のRNAワクチンが接種されています。新型コロナウイルスに感染された方は、ワクチン接種1回目から14日以内では4.5%、15日から28日目で1.4%、2回目接種後14日以内で1.0%、14日目以降で0.3%と報告されています。また、感染しても、ほとんどの方は無症状で済んでいるようです。喜ばしいことに、ワクチン接種を受けられていない高齢者の感染率も4.3%から、他の人が2回目ワクチン接種を終えられて42日目以降では0.3%へと激減しています。ワクチン接種者18,242人と非接種者3,990人から計算すると、82%の方がワクチンにより免疫を持てば集団免疫が高齢者でも充分に誘導できる事を示す心強い科学的根拠です。

 

「(27) ワクチン開発と結果は?」の章の「世界のワクチン効果結果」への追記
新型コロナウイルスに対するワクチン効果の大規模調査結果に関する18論文を数理解析した結果が2021年5月17日に報告されました(Khoury DS, Nat Med 2021, 5/17)。1:10から1:30の比較的低濃度の抗体が産生された段階で50%の感染予防効果がでるようです。同等の効果を得るためには、季節性インフルエンザでさえ1:40と少し多めの抗体が必要となります。やはり、免疫軍にとって新型コロナウイルスは季節性インフルエンザより弱い敵である事を示唆する科学的根拠の一つかもしれません。ワクチン効果の持続は、各ワクチンの初期の感染予防効果の強さに依存するようです。95%の感染予防効果を持つワクチンでは接種後250日目に77%へと低下すると報告されています。一方、70%しか感染予防効果がないワクチンでは32%へと低下するようです。しかし、ご安心下さい。感染予防効果は低下しても、ワクチンの主目的である重症化の予防効果は250日目でも充分に保たれると報告されています。

2021年5月15日に九州、四国、中国地方は例年より3週間早く梅雨入りしました。私は、梅雨は好きではありませんが、今年はありがたいと思っています。湿度が高くなるため新型コロナウイルスの飛散距離も下がり感染リスクが減ってくるのかもしれません。また、夏も近づいています。日本と緯度が近いイラン、イラク、レバノン、スペインでは新型コロナウイルス感染者数の減少傾向を認めています。また、徐々にではありますが、日本のワクチン接種率も増えてきています。ワクチン、梅雨、夏と揃い始めて新型コロナウイルスの爆発的な蔓延の危険性は減ってきているのかもしれません。小さな感染拡大は起こるかもしれませんが、このまま終息のゴールに向かってくれると個人的には強く信じています。

「(31) 変異したウイルスに対するワクチン効果と各自の対策は?」の章の「南アフリカ由来変異株」への追記
アストラゼネカ社DNAワクチンの南アフリカでの臨床試験結果が2021年5月20日に報告されました(Madhi SA, New England J Medicine 2021, 5/20)。18歳から65歳までのHIVが陰性の方に、アストラゼネカ社DNAワクチンが2回接種されています。ワクチン接種者750人中に軽症から中等症の新型コロナウイルス感染者は19人(2.5%)で、偽薬投与群717人中では23人(3.2%)と報告されています。感染予防効果は29.1%と低いようです。南アフリカの新型コロナウイルス感染者のうち95.1%は、南アフリカ由来変異株と報告されています。変異株で計算すると、アストラゼネカ社のDNAワクチンの感染予防効果は10.4%とさらに低くなるようです。

「(31) 変異したウイルスに対するワクチン効果と各自の対策は?」の章の「インド由来変異株」への追記
2021年5月19日のロイターの報道によると、感染症数理モデルの世界的第一人者で、第1波の時にイギリスのロックダウンを強行されたインペリアル大学のニール・ファーガソン教授が、インド由来変異株に関する意見を述べられています。「100%の自信はないが、感染力は当初懸念されたほど強くないだろう」と言う見解です。インド由来変異株は移民の方によりイギリスに持ち込まれ、移民の方の「多世代世帯」と「スラム街」といった特殊な生活様式により変異株の急速な拡大を一部の地域で起こした可能性が考えられるようです。また、ジョンソン首相は「インド由来変異株に対してワクチンが充分な予防効果がある事を示すデータが蓄積されてきている」と述べられています。

「(37) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(諸刃の剣効果)?」の章の「公共対策」への追記
警察庁の報告によると、2021年4月の自殺者は1,799人で2020年の同月の1,507人に比べて292人、つまり19%の増加を認めています。また、内閣府の発表によると日本の2020年のGDPは4.6%の減少で戦後最大の下げ幅のようです。また、2021年1月~3月期は5.1%の減少で、さらに低下しています。

「(37) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(諸刃の剣効果)?」の章の「比較の重要性」への追記
世界28ヵ国の新型コロナウイルス対策の比較が2021年5月17日に報告されました(Haldane V, Nature Medicine 2021, 5/17)。無症状の感染者が多い新型コロナウイルスは封じ込める事は困難なため、医療体制の確保が各国の最重要課題のようです。日本と共通の対策と異なった対策をまとめてみました。

● 共通の対策
多くの国では軽症さらには中等症であっても自宅待機を余儀なくされているようです。

多くの国では緊急手術以外は延期の対策をとられているようです。

多くの国では、感染拡大抑制の失敗の経験をもとに、高齢者施設または高齢者を対象とした集中的検査体制にシフトされているようです。

● 異なった対策
人材確保のためドイツ、ロシア、スペイン、イギリス、ベトナムでは、医学部と看護学部の学生を臨床現場に派遣しているようです。

多くの国では「shift of primary care workers to emergency」、すなわち総合診療科の先生方を集中治療室の援助に派遣しているようです。日本にあてはめると、開業医の先生方を新型コロナウイルスの拠点病院に派遣するイメージなのかもしれません。また、集中治療を担当された医療従事者には、ボーナス、昇給、税金の免除などの特典が付与されています。

多くの国では「passive testing」、すなわち感染者の追跡が行われています。Passive testing は2つに大別されるようです。殆どの国で行われるのが「forward contact tracing」と呼ばれる、感染者と接触者を同定する手法です。一方、日本では「backward contact tracing」、つまり感染源まで見つけ出す手法が用いられています。効果は、日本で用いられている「backward contact tracing」が高いようですが、あまりに労力がかかるため他国では敬遠されているようです。世界各国が、労力がかかるために敬遠されている手法を、少ない人員でありながらも休日返上でこなされている保健所の皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございます。

多くの国では医療情報や個人情報などの紐付けによるデジタル化によって感染拡大の包括的管理が行われているようです。

現在の検査法では、感染者を正確に把握する事は不可能なため、どの国においても感染者数は過小評価の可能性が報告されています。つまり、正確に把握できれば母数が増えるため、新型コロナウイルス感染による死亡率は、現在の推定値より間違いなく下がる事になります。ニュージーランド、スウェーデン、アメリカでは検査結果に関わらず、何らかの症状がある方全てを感染者としてカウントする「syndromic surveillance」と呼ばれる新たな手法が用いられ始めたようです。

医療体制が逼迫しないためには「reallocation」、「recruitment」、「financial and social support」が必要と報告されています。つまり、「医師の配置替え」、「休職中の医療従事者や学生の活用」、「経済的援助と風評被害の予防」となるのかもしれません。また、過去の感染症に基づく科学的根拠でなく、新型コロナウイルスで得られた新たな科学的根拠に基づき柔軟に対処して行く必要があるようです。

「(46) 治療法は?」の章の「人工呼吸器」への追記
新型コロナウイルス感染で入院治療が必要となった63,972人を対象とした驚きの結果がイギリスから2021年5月14日に報告されました(Docherty AB, Lancet Respiratory Medicine 2021, 5/14)。イギリスの第一波早期(2020年3月9日から4月26日)での入院死亡率は32.3%に対し、後期(2020年6月15日から8月2日)では16.8%と半減しています。よって、短期間で死亡率が半減した理由を調査されたようです。多くの要因が関与し非常に複雑なようですが、「ステロイドの使用」と、驚くことに「人工呼吸器の使用減少」が死亡率低下に寄与している可能性が報告されています。新型コロナウイルス感染により重症化しても、酸素マスクや経鼻からの高濃酸素投与と的確な薬剤投与で命が救える方が多い事を教えてくれているのかもしれません。また、残念ながら、新型コロナウイルス感染により重症化し、人工呼吸装着まで行なっても命を救えない方もいらしゃる事も教えてくれています。その方々を重症と言う理由だけで人工呼吸器を備えた施設に移すと、集中治療室などの医療従事者に負担が集中し医療逼迫を起こし、救える命も救えなくなる悪循環の結果、死亡者の増加につながっている可能性も否定はできません。人工呼吸器装着の必要性の可否を科学的根拠に基づき的確に判断する事が医療逼迫を回避するためにも、新型コロナウイルス感染による死亡者数を減らすためにも重要な事をイギリスが教えてくれているように思います。

 

[66版への追記箇所]
「(3) 免疫が低下する原因とコロナ感染助長因子は?」の章の「 妊娠」への追記
米国CDCの報告によると、2020年1月22日から2021年5月3日までの米国の新型コロナウイルス感染者の累計は3,248万人(32,481,455人)で死者数は57万人(578,520人)です。死亡率は1.78%の計算になります。一方、妊婦さんの感染者は88,880人で、死者は99人です。死亡率は0.11%と全国民に比較して10倍以上低くなります。妊婦さんは新型コロナウイルス感染による重症化リスクは低い可能性もあるのかもしれません。

「(9) 血栓症は?」の章の「コロナ血栓症の機序」への追記
1つ1つの細胞を解析する「single cell analysis」 と呼ばれる最先端技術を持ちいて、新型コロナウイルスの遺伝子が最も多く検出される細胞は「血管内皮細胞」と「貪食細胞」であることが2021年4月29日に証明されました(Delorey TM, Nature 2021, 4/29)。自然免疫軍は侵入して来たウイルスをがむしゃらに食べるため(貪食)、貪食細胞に新型コロナウイルスの遺伝子(死骸)が多く検出される事は、通常の感染症に認められる反応で想定内と思います。一方、血管内皮細胞にウイルス遺伝子が多く検出される事は珍しく、血管内皮細胞への感染が新型コロナウイルスの特徴と考えるのが妥当と思います。つまり、新型コロナウイルスは血管内皮細胞へ感染して血栓を作り出す事を示す新たな科学的根拠なのかもしれません。

「(9) 血栓症は?」の章の「コロナで重症化しやすい基礎疾患と血栓症の関連」への追記
1,700万人を対象とした新型コロナウイルス感染による重症化の人種差がイギリスから4月30日に報告されました(Mathur R, Lancet 2021, 4/30)。2020年8月3日までの第1波の感染率は、白人に比べて黒人て1.08倍、インドなどの南アジア人で1.08倍に増え、東洋人を含むその他の人種では0.77倍減少すると報告されています。重症化の危険性も黒人や南アジア人で高くなるようで、入院率は黒人で1.78倍、南アジア人で1.48倍も増えています。また、死亡率も黒人で1.51倍、南アジア人で1.26倍増加しています。一方、「N501Y」変異株が増え始めた2020年9月1日以降では、黒人の重症化率は高いままですが、南アジア人の重症化率は白人レベルまで低下したようです。

「(10) 血栓症 対 サイトカインストームは?」の章の「サイトカインストーム治療薬の効果」への追記
新型コロナウイルス感染の重症患者さんに対する抗IL-6受容体阻害療法の効果について大規模臨床試験結果が2021年5月1日に報告されました(RECOVERY collaborative group, Lancet 2021, 5/1)。平均年齢は63.6歳で、炎症の指標であるCRPの平均値が143 mg/L(日本の単位では14.3 mg/dL)と高値を示し、酸素飽和濃度が92%以下に低下した重症患者さんに投与されています。2,094人の患者さんにはステロイドが投与され、2,022人の患者さんに抗IL-6受容体阻害薬(Tocilizumab)が投与されています。入院28日目の死亡率は、ステロイド投与群では35%で、抗IL-6受容体阻害群では31%と報告されています。抗IL-6受容体阻害療法は約10人に1人の重症患者さんの尊い命が救える計算になります。また、CRPが75 mg/mL(日本の単位で7.5 mg/dL)を越えた低酸素状態であれば、人工呼吸器使用の有無に関わらず効果はあるようです。

「(20) 免疫にとっての新型コロナウイルスの強さは?」への追記
新型コロナウイルス感染で亡くなられた患者さんと他の疾患で亡くなられた患者さんの細胞を1つ1つ細胞単位で解析(single cell analysis)した結果が2021年4月29にも2つ同時に報告されました。ひとつは「細胞単位」で(Delores TM, Nature 2021, 4/29)、もうひとつは「核単位」で(Melms JC, Nature 2021, 4/29)解析が行われています。どちらの報告も、新型コロナウイルス感染で死に至った方では、T細胞軍の中で接近戦の名手であるCD8部隊が上手く機能していないと報告されています。また、CTHRC1と呼ばれる分子を発現する繊維芽細胞が増えて肺の機能を廃絶する肺繊維症を起こしてしまう可能性も報告されています。

「(27) ワクチン開発と結果は?」の章の「世界のワクチン効果結果」への追記

米国エール大学の岩崎明子先生達のグループが非常に興味深い結果を2021年5月5日に報告されました(Lucas C, Nat Med 2021, 5/5)。新型コロナウイルス感染の重症化は「中和抗体の量ではなく」「どれだけ早期に作り出されるか」に左右される可能性が報告されています。つまり、抗体産生を始めるスタートダッシュが重要という事になります。初感染では獲得免疫軍つまり抗体を産生するB細胞部隊が働き始めるまでに72時間以上が必要です。この時差を解消して、敵が侵入して来たら即座に抗体が産生できるようにしてくれるのがワクチンです。新型コロナウイルスに対して多くの会社のワクチンは予想を遥かに超えた効果を示しています。やはり、これ程の効果は「ワクチンによるスタートダッシュの改善」によりもたらされている可能性があるのかもしれません。

「(31) 変異したウイルスに対するワクチン効果と各自の対策は?」の章の「イギリス由来変異株「N501Y」」への追記
ほぼ全国民を対象とした、新型コロナウイルスに対するファイザー社RNAワクチンの感染予防効果の調査結果がイスラエルから2021年5月5日に報告されました(Haas EL, Lancet 2021, 5/5)。2021年1月24日から4月3日までの新型コロナウイルス感染者は232,263人で、重症者は4,481人、死者は1,113人です。4月3日時点での感染者の94.5%は「N501Y」イギリス由来変異株と報告されています。つまり、イギリス由来変異株の現時点での重症化率は1.93%、死亡率は0.48%の計算になります。4月3日には16歳以上の国民の72.1%にファイザー社RNAワクチンの2回接種が終了し、その後感染者は劇的に減少しています。年齢別の感染予防効果は、16歳から44歳で96.1%、45歳から64歳で94.9%、65歳から74歳で94.8%、75歳から84歳で95.1%、85歳以上で94.1%と報告されています。また、死亡につながる重症化の予防効果は、16歳から44歳で100%、45歳から64歳で95.8%、65歳から74歳で96.9%、75歳から84歳で97.6%、85歳以上で97.4%です。この大規模調査は「ファイザー社RNAワクチンの感染予防および重症化予防効果は非常に高く高齢者にも有効である」、「イギリス由来のN501Y変異株に対しても強い予防効果を持つ」、そして「16歳未満に接種しなくても集団免疫は充分確保できる」事を科学的に教えてくれています。

「(31) 変異したウイルスに対するワクチン効果と各自の対策は?」の章の「南アフリカ由来変異株「E484K + N501Y + D614G」」への追記
南アフリカにおけるノバックス社のナノ粒子ワクチンの臨床試験結果が2021年5月5日に報告されました(Shinde V, New England J Medicine 2021, 5/5)。感染者の51%は南アフリカ由来の「E484K + N501Y + D614G」変異株が原因です。感染予防効果は60.1%と報告されています。非常に興味深い結果は、ワクチン接種時に既に新型コロナウイルスに対する抗体が陽性、つまり「既に感染した経験がある方」は30%もいらっしゃり今回の解析から除外されています。この結果は、南アフリカ国民の35%から60%は既に感染歴があるというこれまでの報告と類似します。ジョンホプキンス大学のJHU CSSE COVID-19によると、2021年5月5日時点の南アフリカの新型コロナウイルス感染者累計数は約160万人で死者数は54,735人です。死亡率は3.42%の計算になります。一方、南アフリカの人口は5,856万人で、そのうち30%が既に感染していたとすると、感染者累計は約1,756万人の計算になります。死者数は54,735人ですので、死亡率は0.31%となり、季節性インフルエンザと同程度です。また、南アフリカでは第2波に比べて感染者が1/10以下に減少した状態を現在維持しています。ワクチン接種前に自然感染により「集団免疫を既に獲得している」可能性と、季節が真逆の南半球にある南アフリカでは「夏だったため感染が抑えられていた」可能性の2つが考えられます。どちらにしても良い情報かもしれません。集団免疫を獲得できていないとすると「夏になると感染は自然に抑制できる」事を教えてくれています。もし、感染抑制が夏と関係ないとすれば「集団免疫が常に備わるほど南アフリカでは感染が蔓延していた」、つまり「新型コロナウイルスの死亡率は季節性インフルエンザ並み」という事になります。事実、無症状者が多い感染症では死亡率は流行期に推測された値より大幅に低下する傾向があるようです。私は「夏に感染は減少し」さらに「死亡率は南アフリカ由来の変異株でさえ季節インフルエンザと同程度」のどちらも正しい事を祈っています。

カーターから385,853人を対象としたファイザー社のRNAワクチンの効果結果が2021年5月5日に報告されました(Abu-Raddad LJ, New England J Medicine 2021, 5/5)。カーターでは、イギリス由来の変異株が44.5%で南アフリカ由来の変異株が50%と両方が均等に蔓延しているようです。2回目を接種して14日目の感染予防効果は、イギリス由来変異株に対しては89%, 南アフリカ由来変異株では75%と報告されています。南アフリカ由来変異株に対して感染予防効果は少し下がるのかもしれません。しかし、ご安心下さい。ワクチンの真の目的は重症化の予防です。ファイザー社RNAワクチンの重症化予防効果は、どちらの変異株に対しても97.4%と非常に高いようです。

「(37) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(全てが諸刃の剣)?」の章の「公共対策」への追記
新型コロナウイルスの流行が及ぼした19,763人の患者さんを対象とした精神疾患への影響が2021年5月6日にイギリスから報告されました(Pierce M, Lancet Psychiatry, 2021, 5/6)。コロナウイルスの第1波中でも精神状態が安定し非常に良好だった患者さんは37.3%、良好だった患者さんは39.3%、一時的に悪化したが改善した患者さんは12%、そのまま悪化が続いている患者さんは4.1%と報告されています。

「(42) 重症化しやすい基礎疾患は?」の章の「非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)」への追記
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、痛みを抑えたり熱を下げるために広く用いられている薬です。ある種のNSAIDが新型コロナウイルス感染による重症化のリスクを増やす可能性が初期段階に報告されたため、確認のための大規模調査が行われ、その結果がイギリスとスコットランドから2021年5月7日に報告されました(Drale TM, Lancet Rheumatology 2021, 5/7)。感染が判明した時点でNSAIDを常時服用されていた方4,211人と、服用されていない67,968人が対象となっています。NSAID使用の有無により新型コロナウイルス感染の重症化に影響を及ぼす事はないと報告されています。また、NSAIDの種類の違いで影響を及ぼす事もないようです。

「(44) 重症化の予兆は?」の章の「検査値の変化」への追記
上述したような「異所性発現」つまり「普段は作らない細胞が炎症性因子を作り始める」現象が新型コロナウイルス感染の重症化の一因である可能性が2021年4月29日にも報告されました(Melms JC, Nature 2021, 4/29)。主に免疫細胞が作る「インターロイキン-6(IL-6)」と呼ばれる炎症物質を、肺の上皮細胞が重症化患者さんでは突然作り出しているようです。例えば、交通渋滞が起こったとします。全ての渋滞を同時に解消する事は難しいため、ドライバーに少しの遅れは理解してもらいながら、安全第一に警察官がフエを吹いて交通整理を始めました。路上で見ていた通行人の1人が「右側の道路が混んでいるのに警察官は何をしているんだ」と突然右側の道路の車両を優先させるためにフエを吹きはじめました。また、もう1人の通行人は左の道路の車には高齢者が乗っているのを見つけ、「高齢者優先」と思い左側の車を優先させるためにフエを吹き始めました。すると、もう1人が「皆んな平等」と、幹線道路に出られずに困っていたあぜ道のバイクに優先を示すフエを吹き始めました。結果は火を見るよりも明らかかもしれません。我々の体中でも、時間をかけてでもウイルスを撃退するために免疫軍が働いている最中に、専門外の異なった細胞が目先の状態だけを見てサイトカインを放出すると死につながる重症化を引き起こしてしまいます。体の内外を問わず注意が必要です。

「(45) 後遺症は?」への追記
新型コロナウイルス感染で重症化したが人工呼吸器の装着なくして回復された135人の退院後の呼吸機能の調査結果が2021年5月5日に中国から報告されました(Wu X, Lancet Respiratory Medicine 2021, 5/5)。対象者の平均年齢は60歳です。呼吸機能障害は徐々に改善し退院12ヶ月でほぼ消失される方が多いようです。一方、24%の方には、画像診断(high-resolution CT)での異常所見と呼吸機能障害が残る可能性が報告されています。

 

 

[65版への追記箇所]

「(6) 腸管は?」への追記
新型コロナウイルスに感染して症状が出てしまう方では「IgA2」と呼ばれる抗体が少ない可能性が2021年4月20日に報告されました(Stephenson E, Nat Med 2021, 4/20)。ヒトのIgAには「IgA1」と「IgA2」の2種類があります。IgA1は唾液や母乳に含まれ乳児を感染症から守ってくれます。IgA2は腸で作られお腹から我々を感染症から守ってくれています。バランスの取れた食事を摂り腹の免疫(腸管免疫)を健康に保つ事が、新型コロナウイルスから守ってくれるのかもしれません。

「(9) 血栓症は?」の章の「血栓症と後遺症」への追記
新型コロナウイルス感染で重症化した患者さん130人の血液から採取した78万個の細胞を一つ一つ細胞単位で解析(single cell analysis)した結果が2021年4月20日に報告されました(Stephenson E, Nat Med 2021, 4/20)。重症化した患者さんの血液中には、血小板の起源である「メガカリオサイト」になる造血幹細胞が増えていると報告されています。これまでの報告のように、血栓形成に伴う二次的変化と思われます。また、血小板と接触した単球は肺胞マクロファージと呼ばれる肺の掃除屋になるようです。

「(27) ワクチン開発と結果は?」の章の「世界のワクチン効果結果」への追記
スコットランドから約133万人の接種者を対象とした新型コロナウイルスに対するワクチン効果の調査結果が2021年4月23日に報告されました(Vasileiou E, Lancet 2021, 4/23)。1回目接種後28日から34日でさえ、治療が必要となる入院率はファイザー社RNAワクチンで91%、アストラゼネカ社のDNAワクチンで88%減少させるようです。80歳を越えると効果は僅かに下がるようで、16歳から64歳では92%、65歳から79歳で93%、80歳以上で83%と報告されています。

イギリスから23,324人の医療従事者を対象とした新型コロナウイルスに対するファイザー社RNAワクチン効果の調査結果が2021年4月21日に報告されました(Hall VJ, Lancet 2021, 4/23)。1回目接種後21日目までにPCRで感染が確認された方は71人、2回目接種後7日目までは9人です。PCRで陽性が確認された方のうち、66%は無症状のようです。ファイザー社RNAワクチンの感染予防効果は、1回目接種後21日目で70%、2回目接種後7日目で85%と報告されています。また、過去に新型コロナウイルスに既に感染した人や妊娠年齢である35歳以下の女性はワクチンを受けられないようです。

「(29) ワクチンの副反応とアナフィラキシーは?」の章の「妊婦さんの安全性」への追記
16歳から54歳の35,691人の妊婦さんを対象としたファイザー社とモデルナ社のRNAワクチンの安全性の調査結果がアメリカから2021年4月21日に報告されました(Shimaburuko TT, New England J Medicine, 2021, 4/21)。2回目接種後の副反応は、接種部の痛み91.9%、倦怠感71.5%、頭痛55.4%、接種部以外の筋肉痛54.1%、悪寒36.7%、発熱34.6%と報告されています。発熱に関して、38°C以上の高熱が出た方は1回目接種では1%以下で2回目接種では8%のようです。また、新生児の死亡はゼロです。私は産科の専門家では無いため判断できませんが、気になる点は自然流産です。調査期間中に出産時期に至った方は827人で、自然流産が104人(12.6%)で未熟児が1人(0.1%)と報告されています。自然流産のうち、92.3%は妊娠13週以内に認められています。著者達は、「Preliminary findings did not show obvious safe signals among pregnant persons who received RNA vaccine」と締めくくっています。つまり、現時点では、RNAワクチンが妊娠さんに安全とは言えないと言う事で、さらなる調査が必要なようです。

「(31) 変異したウイルスに対するワクチン効果と各自の対策は?」の章の「インド由来変異株」への追記
インド由来の変異株が問題となっています。カリフォルニア由来の「L452R」変異と南アフリカ由来やブラジル由来変異株の特徴である「E484Q」変異の両方を持つため、「Double mutant (二重変異株)」と呼ばれています。2021年4月24日のナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)で米国スクリプス研究所のKristian Andersen 先生が、インド由来変異株は「L452R」と「E484Q」の2ヵ所の変異に加えて約11ヵ所の変異も加わっており「二重変異株」の呼び名は不適切とおしゃていました。ウイルスは日々変異を繰り返します。事実、各地域で新たに発見される変異株は、既に数ヵ所以上の変異を持っています。つまり、限られた箇所の変異だけをPCRで検査しても意味がなく、ウイルスの全長遺伝子解析(DNAシークエンス法)により全ての変異を把握する必要があります。

カリフォルニア由来の変異株は「L452R」の変異を持つウイルスとして知られていますが、「S13I」と「W152C」の変異も持っていることが2021年4月20日に報告されました(Deng V, Cell 2021,4/20)。感染力は20%程度増強していますが、イギリス由来の「N501Y」変異株よりは弱いと報告されています。2020年5月に発見され、2020年9月に蔓延を始め2021年初頭にはカリフォルニアで検出される新型コロナウイルスの半分以上まで拡大を続けています。カリフォルニア由来の変異株に対する抑制効果を調べる生体外の実験では、既存の新型コロナウイルス感染者の血漿では4~6.7倍、ワクチン接種者の血漿では抑制効果が2倍低下する可能性があるようです。しかし、生体外での実験における、この程度の低下ではワクチン効果の大勢に影響ない事は既にわかっています。事実、カリフォルニア州の2020年12月26日の新規感染者数は64,987人ですが、ワクチン接種が進んだ2021年4月27日の新規感染者数は1,839人と30倍以上の減少を認めています。

カリフォルニア由来変異株は「適応性の高いウイルス」と表現されています(Thesnokova V, BioRxiv 2021, 3/11)。感染力は20%程度しか増強していないにも関わらず、変異を繰り返し世界中に既に蔓延しています。つまり、人類と共存しやすい適応性を持っていると言う事になるのかもしれません。強毒化したウイルスは人類と共存できないため、弱毒化していると考えるのが妥当かもしれません。カリフォルニア由来変異株に、ワクチン効果の低下をもたらす可能性がある「E484Q」変異が加わったウイルスがインド由来の変異株です。インド由来変異株についての情報は現時点でほぼ無い状態で、細心の注意が必要かもしれません。しかし、Kristian Andersen 先生が言われるように「インド由来変異株に対するワクチン効果は少し低下しても大勢に影響は無い」と個人的には信じています。また、インド由来変異株は感染力を増しても毒性は減弱している可能性も否定はできません。なぜなら、変異株流行前の2020年4月27日時点のインドの新規感染者数は77,266人で死者数は3,293人です。死亡率は1.37%の計算になります。一方、変異株が主体をしめた2021年4月27日時点での新規感染者数は360,927人で死者数は3,293人です。昨年に比べて感染者数は爆発的に増えていますが、死亡率は0.91%と逆に低下傾向を示しています。

「(31) 変異したウイルスに対するワクチン効果と各自の対策は?」の章の「変異株の再感染」への追記
RNAワクチンを2回接種後に新型コロナウイルスに再感染された2名の委細な調査結果が2021年4月21日に報告されました(Hacisuleyman E, New England J Medicine, 2021, 4/21)。どちらの感染者にも7箇所以上の変異を認めるウイルスが検出されていますが、全てが共通した変異ではありません。2人に共通して認められるウイルスの変異は「T951I」、「D614G」、「Del142-145」です。少し気になる変異は「Del142-145」と呼ばれる新たなタイプの変異です。これまで注目されていた変異は、「点突然変異」と呼ばれる1つのアミノ酸が違うアミノ酸に変わる変化です。一方、1個から数個のアミノ酸がなくなる変異もあり「Deletion(del)、欠失変異」と呼ばれます。「Del142-145」では142番目から145番目までの3つのアミノ酸が欠失した変異を意味します。また、アミノ酸が新たに付加される「挿入変異」もあります。新型コロナウイルスでは、アミノ酸が立体構造を作り出すことにより我々の細胞が持つ「アンギオテンシン変換酵素2(鍵穴)」にはまり込む「鍵の型」を作り出します。アミノ酸はそれぞれ異なった電荷を帯びており「陽電荷を帯びたアミノ酸」や「負の電荷を帯びたアミノ酸」もあります。つまり、異なった強さを持つ「プラス」と「マイナス」の磁石がミクロの世界に存在しているわけです。よって1つのアミノ酸が変わっても、各々のアミノ酸の引き合い方が異なり立体構造が少し変形します。当然、あるべきはずのアミノ酸が抜けてしまっても、余分なアミノ酸が付加されても立体構造は変化します。これにより、鍵の構造が変わり、鍵穴との結合力が変化します。鍵と鍵穴がより密着できるようになれば感染力は強くなりますが、逆に密着が弱くなり感染力が低下する場合もあります。

この様なお話をすると、多くの変異を普通に持ち始めている新型コロナウイルスを過剰に恐れられる方がいらっしゃるかもしれませんが、ご安心下さい。再感染された1人目の方では2回目接種後19日目に「咽頭痛」、「鼻詰まり」、「頭痛」、「嗅覚異常」が出現していますが、1週間で症状は消失しています。2人目の方では、2回目接種後36日目に「倦怠感」、「鼻詰まり」、「頭痛」が出現し、約1週間で回復に向かわれています。また、1人目の感染者では1mLの唾液中に195,000個のウィルスが、2人目では400個のウイルスしかPCRで検出されていません。100万個以上のウイルスが新型コロナウイルス感染には必要と言う報告からすると(Marks M, Lancet Infectious Disease, 2021, 2/2)、2人の再感染者が他人にうつす可能性は非常に低いと考えられます。つまり、ウイルスが変異してワクチン接種にも関わらず感染したとしても、「軽症で済み人にうつす可能性も低くなる」と言うことです。実は、これがワクチンの真の目的です。

免疫軍は、「先鋒の自然免疫部隊」、「副将のT細胞部隊」、「抗体を産生する大将のB細胞部隊」に大別できます。自然免疫部隊とT細胞部隊はウイルスと「接近戦で戦い」撃退します。つまり、敵が我々の体内に入って来て戦い始めるため、何らかの症状がでてしまいます。一方、B細胞部隊は「飛び道具である中和抗体」が使えます。中和抗体は離れた場所から敵の侵入に必要な鍵を破壊するため、敵は我々の体内に侵入できなくなります。つまり、新型コロナウイルスは感染ができなくなるわけです。ファイザー社やモデルナ社のRNAワクチンそしてアストラゼネカ社やジョンソン・エンド・ジョンソン社のDNAワクチンと言った「次世代型ワクチン」は予想を遥かに超えた効果です。強力な中和抗体産生を誘導してくれ、感染予防も完璧に行ってくれています。よって、「ワクチン = 感染予防」と思われがちですが、ワクチンの本来の目的は「感染しても死につながる重症化を起こさせない」です。「鍵という限られた標的」を狙うB細胞の手法では、変異が得意なウイルスにいつかは攻略される可能性があります。しかし、ウイルスがどんなに変異しても、接近戦によりウイルスの体のどこへでも攻撃が仕掛けられるT細胞部隊は、手こずりながらも敵を撃退してくれます。良い例が季節性インフルエンザかもしれません。「ワクチンを接種したのに、感染してしまい体がきついや熱が出た」という経験がある人もいらっしゃると思います。季節性インフルエンザも日々変異を続けているため、ワクチンで備わったB細胞部隊の攻撃が、敵にかわされて感染してしまいます。しかし、T細胞部隊が手こずりながらもウイルスを撃退してくれるため、症状が出ても死につながる重症化を起こさずに済みます。つまり、ワクチンは「感染を予防する」だけでなく、「重症化の予防」も担ってくれています。「高齢」、「基礎疾患」、「肥満」など新型コロナウイルス感染により重症化のリスクが高い方はワクチン接種を強くお勧めします。日本集中治療学会の2021年4月21日のECMOnetによると、大阪府でECMO装着が必要となった感染者の平均年齢が67歳から、変異株に置き換わった第4波では53歳へと下がっています。世界で認められているように、日本でも変異株が主流をなすと考えられるため、40歳以上の中年層の方も積極的にワクチンを接種をされた方が無難かもしれません。また、肥満に関する691万人を対象とした調査結果が2021年4月28日に報告されました(Gao M, Lancet Diabetes Endocrinology 2021, 4/28)。肥満の定義はボディーマスインデックス(BMI)が30以上で、正常は18.5から25の範囲です。驚くことに、「BMIが23を超える」と新型コロナウイルスの重症化の危険性が出始め、体重の増加に正比例して重症化率も増えると報告されています。体重と重症化の比例は「40歳未満の若年者」に強く認められるようです。40歳未満でもBMIが23を超える方はワクチン接種を受けられた方が無難と思います。

「(40) 季節性インフルエンザとの違いは?」への追記
新型コロナウイルスは合胞体と呼ばれる細胞を作り出す、つまり我々の細胞を接着剤で引っ付ける特徴があるようです(Braga L, Nature 2021, 4/7)。これは「RSウイルス」の特徴で、特殊な季節性の感染様式を示します。季節性インフルエンザ感染は冬に増えますが、RSウイルスは冬ばかりでなく「朝と昼の寒暖差の激しい春先」にも増えるようです。また、ウイルスは変異を繰り返すため、最近では秋にもRSウイルスの感染拡大が認められるようになっています。気象予想士の天達武史さんが「いよいよ初夏に入る」と言われていました。新型コロナウイルスにとって感染拡大を起こしにくい季節に入るとひたすら願っています。新型コロナウイルスは合胞体を作り出すことによりウイルス自体も増えている可能性が2021年4月23日に報告されました(Asarnow D, Cell 2021, 4/23)。また、鍵穴をねらう抗体(中和抗体)に加えて、合胞体形成を抑制できる抗体も新型コロナウイルスの増殖を阻止できるようです。

「(45) 後遺症は?」への追記
季節性インフルエンザと比較した新型コロナウイルスの後遺症に関する調査結果が2021年4月22日にも報告されました(Al-Aly Z、Nature 2021, 4/22)。新型コロナウイルス感染による軽症者73,435人、重傷者13,654人、季節性インフルエンザて入院治療が必要となった方13,997人が調査対象となっています。新型コロナウイルス感染で重症化した感染者では回復しても、季節性インフルエンザよりも後遺症が残り易いようです。新型コロナウイルス感染で重症化して起こりやすい後遺症は、「心筋梗塞などの冠動脈疾患」、「血栓による塞栓症」、「脳梗塞」、「肺の障害に伴う低酸素血症」のようです。やはり、「血管が詰まりやすい状態」で、血栓症予防が新型コロナウイルスに対する最善策と個人的には強く信じています。

 

 

 

[64版への追記箇所]
「(11) 日本の救命率は?」への追記
フランスからECMOの治療成績が2021年4月19日に報告されました(Lebreton G, Lancet Respiratory Medicine 2021, 4/19)。「高齢者」、「腎機能の低下している方」、「心停止で搬入された感染者」、「人口呼吸器装着からECMOへの移行期間が長い患者さん」では救命が難しいと報告されています。フランスでECMOを装着された新型コロナウイルス感染者の90日目の生存率は46%のようです。一方、日本集中治療学会のホームページによると2021年4月21日時点で、ECMOが装着されて回復された患者さんは330人で、亡くなられた患者さんは186入と報告されています。生存率は63%の計算になり、フランスより非常に高い生存率です。日本の最先端医療に心より感謝申し上げます。

「(19) 再感染は?」への追記
海兵隊に入隊した18歳から20歳の新兵さん3,249人を対象とした、新型コロナウイルスの再感染の調査結果がフランスから2021年4月15日に報告されました(Letizia AG、Lancet Respiratory Medicine, 2021, 4/15)。入隊時の抗体検査で、中和抗体が1:150以上ある方を感染歴有りと判断されています。182人が抗体陽性で、その後PCR検査で再感染が認められた方は19人(10%)です。一方、2,247人が抗体陰性で、その後1,079人(48%)が感染されています。また、抗体陽性でありながら再感染した方は、皆さん抗体量(抗体価)が低かったようです。しかし、新型コロナウイルスに感染しても、ウイルス量は抗体陰性の方に比べて10倍少ないと報告されています。つまり、「新型コロナウイルスに感染して無症状や軽症で済んだ方の5人に1人は再感染する可能性があるが、人にうつす可能性は低い」と考えて良いと思います。

「(22) 原始人が教えてくれる新型コロナウイルスは?」への追記
新型コロナウイルスに感染歴がなくともT細胞軍の中のCD8と呼ばれる接近戦の専門家は、新型コロナウイルスを攻撃できる事が2021年4月13日と4月15日に報告されました(Lineburg KE、Immunity 2021、4/13; Nguyen HO、Immunity 2021, 4/15)。中和抗体と異なり、CD8特殊部隊は、新型コロナウイルスの鍵(スパイク)ではなく、「B7/N105」と呼ばれる角の部分を記憶して攻撃を仕掛けます。つまり、新型コロナウイルスの角を掴み、接近戦で敵の急所を刺し、傷口から毒を塗り込み敵を完全に撃退してくれる心強い味方です。CD8特殊部隊に司令を出すためには、ヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれる抗原提示分子が必要です。HLAは何千種類もあり、各個人はCD8特殊部隊用に6種類の、CD4特殊部隊用に2種類のHLAを持っています。つまり、持っているHLAは人それぞれ異なります。「HLA-B*07:02」と呼ばれるHLAを持っている人に新型コロナウイルスを撃退してくれるCD8特徴部隊が備わっているようです。これらのCD8特殊部隊の起源については論争中です。季節性コロナウイルスの感染による交叉免疫により生まれた可能性(Lineburg KE, Immunity 2021, 4/13)と人類に元々備わっている原始的な細胞の可能性(Nguyen HO、Immunity 2021, 4/15)が少なくともあるようです。しかし、起源が何にしろ、新型コロナウイルスを撃退してくれるCD8特殊部隊が備わっている方がいらっしゃる事は、これまで蓄積された結果から間違いないと思います。

「(28) ワクチン接種回数は?」の章の「ワクチン投与法」への追記
2021年4月16日の報道によると、調布市はワクチン接種会場を駅前に設置され、接種を受ける方は動かず、医療従事者が動いて問診や接種を行われるようです。個々の間には遮蔽板も設置され、本当に素晴らしい対応で感銘を受けています。既存の概念にとらわれず、皆さんが知恵を出しあわれる事こそが、できるだけ早く新型コロナウイルスに打ち勝つための最善策と個人的には信じています。2021年4月18日の情報番組で河野大臣が「ワクチンは現時点で予定通り国内に入って来ており、自治体から足りないとの要請があれば、いつでも追加供給が可能な状態」とおっしゃっていました。どれだけ早く各自治体がワクチン接種を多くの住民に行えるかが今後の鍵となるのかもしれません。

「(29) ワクチンの副反応とアナフィラキシーは?」の章の「DNAワクチンによる血栓症の可能性」への追記
アストラゼネカ社のDNAワクチン接種後に血栓症が起こった23人の調査結果が2021年4月16日にイギリスから報告されました(Scully M, New England J Medicine 2021, 4/16)。血栓症は1回目の接種後6日目から24日目に起こっています。14人は女性で、平均年齢は46歳(21歳から77歳)と報告されています。やはり、「血栓症と血小板の減少」が特徴のようです。フィブリノーゲンは低下か正常で、Dーダイマーは増加するようです。特記すべき所見として、22人に「血小板第4因子(PF4)に対する自己抗体」が認められています。ドイツとオーストラリアからも同様の結果が2021年4月9日に報告されています(Greinacher A、New England J Medicine, 2021, 4/9)。アストラゼネカ社DNAワクチンの1回目接種後5日目から16日目に11人の方に血栓症が起こっています。9人は女性で平均年齢は36歳(22歳から49歳)と報告されています。血栓症は多臓器に起こる可能性があるようで、11人中9人に「脳静脈血栓」が、3人に「内臓静脈血栓」が、3人に「肺塞栓」が認められています。また、PF4に対する自己抗体も陽性と報告されています。ノルウェーからも同様の結果が4月9日に報告されています(Schultz NH, New England J Medicine、2021, 4/9)。アストラゼネカ社のDNAワクチンを1回接種して7日目から10日目に5人の方に血栓症が起こっています。やはり、「血小板の減少と血栓症が特徴」のようです。これまでの報告からすると、アストラゼネカ社のDNAワクチン接種では「1回目の接種後2週間以内に比較的若い女性に、抗PF4抗体陽性で血小板の減少を伴う静脈の血栓症が起こり易い」のかもしれません。このようお話しをすると、ワクチンは怖いと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。管総理が訪米中にファイザー社CEOと交渉され、RNAワクチン5000万回分の追加供給が9月までに可能となったようです。日本で既に使用され安全性が担保されているファイザー社のRNAワクチンで接種対象年齢全員に接種が可能な計算になります。ほっと一安心です。

新型コロナウイルスの「鍵、手、手首すべてを含むスパイク領域」を用いるDNAワクチンの副作用が新型コロナウイルスの正体を明らかにしてくれるのかも知れません。「血小板第4因子(PF4)」は血小板自体が持つ物質です。PF4に対する抗体の産生は「ヘパリン起因性血小板減少症」と呼ばれ病気の特徴で、未だ機序は謎で厚生労働省の難病に指定されています。血を固まらなくするために治療としてヘパリンを投与する場合がありますが、これにより抗PF4抗体が産生され始め、血が固まらなくなるどころか逆に固まり始めて血栓を作る奇病です。DNAワクチン接種後に血栓症が起こった方では入院時、つまりヘパリンとは無関係に既に抗PF4抗体ができています。DNAワクチンに用いられるベクターの影響も否定はできませんが、新型コロナウイルスの「鍵、手、手首を担うスパイク」と呼ばれる部位が、ヘパリン様の作用を起こしヘパリン起因性血小板減少症に類似した血栓症を引き起こしている可能性があるのかもしれません。新型コロナウイルスの血栓を作る機序が解明できれば、死につながる可能性のある敵のテロ行為を防ぐことができ、新型コロナウイルスを恐れる必要はなくなるのかもしれません。

「(30) ウイルスの変異は?」の章の「その他の変異株」への追記

ブラジル由来の変異株とそれ以外の新型コロナウイルスの感染力の比較が2021年4月14日に報告されました(Faria NR, Science 2021, 4/14)。ブラジル由来変異株では感染拡大速度が1.7倍から2.4倍、死亡率が1.2倍から1.9倍増加すると報告されています。また、ブラジル由来変異株では「N501Y」、「E484K」、 「K417T」の三箇所の変異に加え、「L18F」、「T20N」、「P26S」、「D138Y」、「R190S」、「H655Y」、「T1027I」の最低でも7箇所の変異も起こってきているようです。ウィルスの変異を止める事ができないことは季節性インフルエンザが既に教えてくれています。また、米国NIHのアンソニーファウチ所長が言われるように「変異株が僅か数%検出できた段階でも、既に数ヶ月前から徐々に感染拡大が始まっている」と考えるのが科学的に妥当です。つまり、変異株が増え始めてからの変異の検査は、変異株ごとに治療法が異なる場合は意味がありますが、無い場合は意味が殆ど無いと思います。例えば、崖崩れが起こっている最中では止めようがありません。しかし、崖崩れの起こる場所を予知して未然に防ぐことは可能です。つまり、危険性の高い変異株を予知・早期発見する事が重要で、全都道府県に観察地点を数か所設置し継続した検査が科学的にも合理的と思います。また、ウィルスは日々変異を続けるため、「既存の変異」だけを検査しても意味はなく、ウィルスRNAの全長が解析できるシークエンス法が必要となります。

「(31) 変異したウイルスに対するワクチン効果と各自の対策は?」の章の「ブラジル由来変異株「E484K + N501Y + K417T」」への追記
ブラジル由来の変異株に対して、モデルナ社のRNAワクチンに誘導される中和抗体の効果は4.8倍、ファイザー社のRNAワクチンで誘導される中和抗体の効果が3.8倍低下する可能性が「生体外の実験」を用いて2021年4月17日に報告されました(Wang P、Cell Host Microbe 2021, 4/17)。中和抗体の「生体内の効果」は対数的、つまり10倍単位の変化でようやく影響を与えます。また、中和抗体以外にもT細胞部隊が実際は生体内でウイルスの撃退を行ってくれていますが、中和抗体の生体外実験ではT細胞の効果は加味されません。つまり、生体外実験でのこの程度の低下では、これまで蓄積された結果からすると、大勢に影響は無いと考えて良いと思います。

「(36) お腹の免疫から考える新型コロナウイルス対策は?」への追記

イギリスから48,400人の新型コロナウイルス感染者を対象とした非常に興味深い調査結果が2021年4月13日に報告されました(Sallis R, British Journal of Sports Medicine, 2021, 4/13)。高血圧や閉塞性肺障害よりも、「運動不足」が新型コロナウイルス感染の重症化を起こしやすいようです。運動をしている人に比べて、運動をしていない人の入院治療が必要となる重症化は2.26倍、死亡率は2.49倍も増加するようです。運動の定義は「早歩きなどを一週間に最低2時間30分以上」と定義されています。「歩く時は早歩き」を心掛けたり、緊急事態宣言下では「自宅でテレビを見る時、立って足踏みをしながら見る」など体を動かすようにお心がけ下さい。

「(40) 季節性インフルエンザとの違いは?」への追記
新型コロナウイルスは「合胞体」と呼ばれる細胞を作り出す、つまり我々の細胞を接着剤で引っ付ける特徴があるようです(Braga L, Nature 2021, 4/7)。これは「RSウイルス」の特徴で、特殊な季節性の感染様式を示します。季節性インフルエンザ感染は冬に増えますが、RSウイルスは冬ばかりでなく「朝と昼の寒暖差の激しい春先」にも増えるようです。また、ウイルスは変異を繰り返すため、最近では秋にもRSウイルスの感染拡大が認められるようになっています。気象予想士の天達武史さんが「いよいよ初夏に入る」と言われていました。新型コロナウイルスにとって感染拡大を起こしにくい季節に入るとひたすら願っています。

 

 

[ワクチン副反応とアナフィラキシーのまとめ(2021416日時点)]

ワクチンは模擬のウイルスを使った「実践訓練」で「机上の勉学」ではありません。よって、ワクチン接種後早期に先鋒である自然免疫軍が実際にサイトカインと呼ばれる可溶性因子を産生します。これにより「接種部の痛みや腫れ」、「頭痛」、「倦怠感」、「微熱」などが起こります。つまり、殆どの「副反応」と呼ばれる現象は、新型コロナウイルスに対する免疫軍の訓練の開始を教えてくれ、恐れる必要はないと思います。

私もファイザー社のRNAワクチンを2021322日に接種しましたが、免疫機構の経時的変化を身をもって体験させてもらいました。夕方に接種しましたが、当日は全く何もありませんでした。翌朝になると、接種部位に違和感があり、押さえると痛みを感じました。昼になると腕を上げると痛みを感じるようになり接種部位が少し腫れた状態でした。その後、症状は徐々に消失し、4日目には押さえても全く痛みを感じなくなりました。これが、まさに免疫反応です。

今回のファイザー社のワクチンはRNAのため、筋肉細胞に取り込まれた後に、新型コロナウイルス由来のタンパク質に変換されて初めて働き始めます。よって、タンパク質に変換されるまでは、免疫細胞はワクチンで接種された溶液を異物としては認識しません。よって、接種後数時間は無症状のはずです。もし、この段階で免疫細胞が働いた場合はワクチンの添加物である脂肪粒子に反応した事になり、アレルギー反応が強く疑われます。筋肉細胞内に取り込まれたRNAがタンパク質に変換され蓄積されて来ると、いよいよ「先鋒の自然免疫軍の実戦訓練開始」です。私の場合は、夕方に接種して翌朝に痛みが出たので、実戦訓練開始までに12時間以上を要したのかもしれません。自然免疫軍は、筋肉から放出された新型コロナウイルス由来のタンパク質をがむしゃらに食べ始めます(貪食)。これにより炎症性サイトカインと呼ばれる可溶性因子を作りだし、接種部位周辺に撒き散らかします(免疫の基礎概念についてはPDF版「(1)免疫の基本概念は?」をご参照下さい)。

炎症性サイトカインは幾つかの作用を持ちます。「痛みを誘導」して血管の細胞にも働きかけます。これにより、血管の壁を作っている細胞の間が開いてしまい、その隙間から血管内の水分が漏れだし始めます。結果、漏れだした水分が組織に溜まり「接種部位の腫れ」が起こってきます。また、血管の壁の繋ぎが緩むため血管が開き、血流も増えるため接種部位の「熱感」や「発赤」が起こります。

 

 接種部位で炎症性サイトカインを放出した後、自然免疫軍の精鋭部隊は、筋肉から所属リンパ節へと移動します。所属リンパ節は、身体中を循環している獲得免疫軍の休息の場です。ここで、樹状細胞は休息している獲得免疫軍のT細胞部隊に指示を出します。ワクチン接種部位で食べてきたワクチン由来のタンパク質の一部をT細胞部隊に見せて(抗原提示)、「このタンパク質は敵の一部なので、このタンパク質を持っている相手に遭遇したら敵とみなして即座に攻撃を行え」と指示します。これにより、T細胞部隊は敵を覚え、再び遭遇したら時差なく攻撃ができるようになります。自然免疫細胞は「T細胞にハッパをかける」ため、再び炎症性サイトカインを放出します。炎症性サイトカインは脳細胞に作用して発熱物質としても働きます。また、所属リンパ節は身体の主要幹線道路に位置しています。よって、炎症性サイトカインが幹線道路である血液中に放出され、全身を駆け巡ります。結果、脳細胞も刺激されて「微熱」が出始めます。また、全身の血管が少し開くため「頭痛」や「倦怠感」を感じることもあります。また、「悪寒」、「関節痛」、「悪心」などを起こす可能性もあります。免疫力の強い方では炎症性サイトカインが多く放出されるため、38℃を超える発熱もでるかもしれませんが、解熱薬を数回服用されれば熱は下がると思います。

すなわち、接種後数時間してから感じる「接種部位の痛みや腫れ」、「37度台の微熱」、「悪寒」、「倦怠感」、「頭痛」などの副反応は、ワクチンによる「免疫軍の訓練開始の証」であり、恐れられる必要はありません。私は、このような副反応が出ると「免疫軍が訓練を開始した」と安心すると共に「免疫軍がんばれ!」と心の中で呟いています。

私は412日に2回目の接種を終えました。免疫記憶にもとづく反応も教科書どおりに起こることを、身をもって再認識させられました。午後4時に接種し午後8時頃に「接種部の痛み」と同時に「さむけ(悪寒)」と「倦怠感」が出現しました。翌朝には37.3℃の微熱と倦怠感がありました。仕事中も倦怠感と悪寒が続き、早めに仕事を切り上げ帰宅して熱を測ると38.5°Cになっていました。解熱剤を飲み早々に就寝し、朝起きると汗でびっしょりの状態で、体温を測ると36.6°Cの平熱に戻っていました。その後は何も問題はありませんでした。このようなお話をすると副反応は怖いと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、逆に「ワクチンが命を救ってくれた」と感謝するべきかもしれません。理由は、私の副反応を例にとると以下のようになります。

新型コロナウイルスの一部を接種するワクチンに対しでさえ、38.5°Cの高熱が出てしまいました。もし本物の新型コロナウイルスに感染していたら同様の反応が起こっていた事になります。RNAワクチン接種では、打ち込まれたRNAと同じ数の新型コロナウイルス由来のタンパク質しか最大でも作られません。よって、免疫軍がヘマをやらかしても、敵は増えないため問題なく訓練は終了します。よって、副反応は数日で自然に消失するはずです。一方、実際の感染では、新型コロナウイルスは生きているので増える事ができます。よって、免疫軍がヘマをすると、その隙をついてウイルスはネズミ算式に増えてしまい、最悪の場合は重症化にもつながります。つまり、ワクチンでは一晩で熱は下がりましたが、実際に新型コロナウイルスに感染していたら「より高い熱が数日続いた」と考えられます。

最も注意しなくてはいけないのは、新型コロナウイルスは「血栓症をテロ行為として仕組んでくる」点です。朝起きて汗びっしょりになっていたと言う事は、寝ている間は水分補給ができないため「脱水状態が長時間続いた」ことになります。脱水は血栓を起こしやすくするため、実際に感染していたら「新型コロナウイルスの思う壷」にはまってしまいます。事実、新型コロナウイルス感染の重症化因子の一つは、38.439℃を超える高熱です。高血圧治療中の私は血栓症のリスクが高いため、もしワクチンでなく実際の新型コロナウイルス感染であったならば、朝起きると肺に血栓ができてしまっており、そのまま救急車で救命センターに運ばれていた可能性も充分考えられます。

実際に新型コロナウイルスに感染すると、ワクチン接種の副反応で起る以上の問題が起る事になります。私の副反応から考えると、実際に新型コロナウイルスに感染していたら私は死んでいた可能性もあったと思います。心からRNAワクチンに感謝しています。

実際の新型コロナウイルス感染とは異なり、RNAワクチン接種による副反応は殆どが「想定内の反応」で

す。個人差は勿論ありますが、熱が出ても一過性で済みますし、痛みが強くても自然に消失すると思います。米国CDCによると、ファイザー社のRNAワクチンを接種された1,215万人のうちの副反応の頻度は、「接種部の痛み67.7%」、「倦怠感28.6%」、「頭痛25.6%」、「接種部以外の筋肉痛17.2%」、「発熱7.4%」、「関節痛7.1%」、「悪寒7%」、「悪心7%」、「接種部の腫れ6.8%」と報告されています。また、ファイザー社のRNAワクチンで起る副反応の頻度は、「50歳未満で65%」、「50歳から65歳未満で25%」、「65歳以上で4%」のようです。また、「新型コロナウイルスの過去の感染歴」がある方や「1回目接種より2回目接種」で強い副反応がでるようです。やはり、免疫力が強ければ強いほど副反応も強いようです。

「免疫力が弱っているのでワクチンを打っても効果が無い」と思われている高齢者の方がいらっしゃるかもしれませんが、誤解です。RNAワクチンは免疫力の低下した高齢者でも、新型コロナウイルスを撃退するために充分な抗体産生を誘導する事が既に報告されています。高齢者では、RNAワクチン接種で「副反応も少なく、死にもつながる可能性がある新型コロナウイルス感染が予防」できることになり、これほどの幸運はないのかもしれません。

しかし、免疫軍がワクチンに対して過剰に反応すると、想定外の反応が起こる方も稀にいらっしゃるかもしれません。「解熱剤を飲んでも38度を超える発熱が続く」、「接種部の腫れや痛みが接種後24時間を超えても悪化を続けている」、「麻痺」などが起こった場合は、かかりつけ医または指定のワクチンセンターにご相談ください。また、「アナフィラキシーショック」や「DNAワクチンの副作用として血栓症が起こる可能性」にご興味がある方はPDF版の「(29)ワクチンの副反応とアナフィラキシーは?」をご覧ください。

 

[疫学データのまとめ2021322日時点)]

322日に緊急事態宣言も解除されました。新型コロナウイルスのパンデミックが発生して既に1年が経過し、世界中から膨大なデータが既に蓄積されているため2021322日時点でのデータを整理してみました。また、人口規模や経済状態により感染対策の効果も異なるため、人口・経済状態が近いG7加盟国と比較して表にまとめています。

 

(新型コロナウイルス感染死者数):札幌医科大学フロンティア医学研究所のデータを見ると、日本の新型コロナウイルス感染による死者数はG7加盟国に比べて非常に少ないのが現実です。2021322日時点で100万人あたりの死者数は、日本が69人、カナダが600人、ドイツが892人、フランスが1,411人、アメリカが1,638人、イタリアが1,735人、そしてイギリスが1,861人で最多です。イギリスの死者数は日本の約27倍です。つまり、様々な要因により日本人は新型コロナウイルスの重症化から守られていると考えて良いと思います。その要因のうち、日本に根付いている「思いやりのマスク文化」が多大な貢献をしてくれていると個人的には思います。

 

(重症化年齢):世界各国と同様に、死につながる重症化は日本でも高齢者に集中しています。厚生労働省の報告によると2021317日時点の新型コロナウイルス感染による日本での死者数は、49歳以下で73人、50代で183人、60代で601人、70歳以上で7,059人です。また、新型コロナウイルス感染による高齢者の死者数は季節性インフルエンザによる例年の死者数3,325人を超えています。しかし、高齢者に起こる「誤嚥性肺炎」による例年の死者数35,788人よりは少ないのも事実です。誤嚥性肺炎は肺炎球菌などの日和見感染菌が起こします。つまり、感染しても健常人では何も起こりませんが、高齢者だと致死的な肺炎を起こしてしまう可能性のある細菌です。また、肺炎球菌も共存が必要で、約35%の高齢者に常在しています。高齢者施設などに焦点をあてた重点的検査、さらには陽性となった高齢者に対する早期の予防的治療介入が尊い命を守るためには必要なのかもしれません。

 

(超過死亡):The Center for Evidence Based Medicine202133日の報告によると、2020年の総死者数は新型コロナウイルスの影響により、G7加盟国では3.3%から12.9%の範囲で増加を認めています。一方、厚生労働省の人口動態統計速報値によると、日本の20201月から10月の死者数は逆に1.1%減少しています。「自粛」に依存した状態での「死者数の増加ではなく減少」という驚きの結果は、日本人の「国民性の高さ」さらには世界トップの救命率を誇る「集中治療医療の質の高さ」の賜物かもしれません。

 

(自殺者数):警察庁によると、2020年の日本の自殺者数は2019年に比べて4.5%増えています。特に、2019年に比べて2020年の自殺者は、20歳代で404人、10歳代で118人も増加しており「若年者の自殺者増加が顕著」です。また、女性の自殺者も増加しています。将来の日本を背負う若者達が、新型コロナウイルスによる重症化が季節性インフルエンザよりも低いにも関わらず自らの命を絶つ状況です。「数か月先を見る」のではなく、「10年先を冷静に見据える」時期に入ったのかもしれません。(委細ははPDF版の「(37)新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは?」をご参照下さい)

 

 

 

(国内総生産):経済協力開発機構(OECD)によると、G7加盟国のうち、2020年の国内総生産(GDP)の最大の減少を認めたのはイギリスの9.9%で、最小の減少はアメリカの3.5%です。日本では4.8%の減少を認めています。G7加盟国中、新型コロナウイルス感染による死者数は最低なうえ、GDP低下も2番目に少ない結果です。

 

PCR検査数):OECDによると、第1波が発生した昨年5月時点での人口1000人あたりのPCR検査数は、G7加盟国ではイタリアの34.9件を筆頭に、軒並み10件を超えていますwww.oecd.org/coronavirus/policy-responses/testing-for-covid-19-a-way-to-lift-confinement-restrictions-89756248/)。一方、日本は2.2件とPCR検査数は非常に少ないにも関わらず、新型コロナウイルス感染者数と死者数がG7加盟国中で最も少ないのも事実です。また、厚生労働省によると、昨年5月(第1波)に比べて12月(第3波)ではPCR検査数は約10倍に増えています。しかし、感染者数と死者数は共に第3波で顕著に増えたことは周知の事実と思います。単にPCR検査数を増やしたからといって、感染拡大抑制にはつながっていないのかもしれません。事実、319日の報告では、「受けたい方が検査を受ける」PCR検査体制では、「感染者を減らすどころか、逆に24%も増加させる」危険性も報告されています。重症化やクラスター発生の危険性が高い高齢者関連施設などへの重点的調査介入が有効なことを蓄積された結果が教えてくれているのかもしれません。PCRについてはPDF版「(17)PCRは?」をご参照下さい)

 

(医療体制):OECDによると、G7加盟国のうち人口1000人あたりの医師数は日本が最低で2.5人、次がアメリカの2.6人です。最多はドイツの4.3人です。また、医療従事者数(Total health and social employment)は最低がイタリアの32人で、最多はドイツの71人です。日本は65人です。人口1,000人あたりの病床数は、日本がダントツの13ベットで、最低はカナダの2.5ベットです。東京都の人口が1,200万人とすると東京都には15万以上の病床がある計算になり、医療崩壊は数値的には考えにくい状況です。G7加盟国の中で実際に医療崩壊を起こした国はイタリアだけです。ワクチン接種も開始され、少なくとも「予防法」が存在するステージに入ってきました。医療崩壊に繋がりかねない、過度な規制による「過剰な仕事量」や「風評被害」に伴う医療従事者の疲弊を法的緩和していく時期に入ったのかもしれません。

 

 

(変異株):イギリス由来の変異株による感染がG7加盟国の主流となっており、日本でも同様の結果が想定されます。イギリス由来の変異株は、感染力が少し強くなるため、それに伴う高齢者の死亡率の増加も報告されています。しかし、60歳未満の死亡率は変わらないようです。また、日本で使用される可能性があるワクチンは、全てイギリス由来の変異株に有効です。一方、南アフリカ由来の変異株に対しては最大限の注意が必要です。(変異株についてはPDF版の「(30)ウイルスの変異は?」と「(31)変異したウイルスに対するワクチン効果と各自の対策は?」をご参照下さい)

 

[ワクチンのまとめ2021223日時点)]

多くの方から「ワクチンは安全か?」、「接種する必要はあるのか?」など様々なご質問を頂きましたので、ワクチンについて各々のご質問に則してまとめさせて頂きました。

(ワクチンの機序):免疫軍は、先鋒、副将、大将の順にウイルスとの戦いに加わって来ます。しかし、柔道と違う点は、別々に戦うのでなくチームとして戦います。つまり、最初は「先鋒だけ」、次は「先鋒と副将が協力」して、最後には「先鋒、副将、大将が総動員されたワンチーム」として戦いに挑みます。先鋒に勝っても、次には先鋒と副将の二人がかりでかかってこられ、それでも勝ちをおさめても、大将までまじえた先鋒と副将の3人がかりでかかってこられるわけです。これでは、どんなに強いウイルスでもひとたまりもありません。しかし、過去に感染した事のない未体験のウイルスに対しては、副将と大将が戦えるようになるには72時間以上が必要です。この間は、先鋒のみで戦わなければならず、敵の数が多いと苦戦してしまいます。このスキをぬって、ウイルスはネズミ算式に増え敵に優位な状況が作られてしまいます。また、ウイルスが増えるため、他人にうつす可能性もでてきます。この攻撃の時差を無くしてくれるのがワクチンです。ワクチンは、新型コロナウイルスに感染した時の対策を、先鋒、副将、大将の順に段階的に教えていきます。よって、ワクチンの効果がでるには2週間近くがかかります。その後、本物の新型コロナウイルスに感染すると、ワクチンで教育された先鋒、副将、大将が同時に総攻撃を即座にしかけ、一挙に敵を一網打尽にしてくれます。つまり、ワクチンは新型コロナウイルスが体内に入れないように水際作戦を担うわけでなく、入って来たウイルスを症状がでないうちに免疫軍が一網打尽にできるようにしてくれます。また、あっと言う間に敵を倒すので、ウイルスは増える事が出来ず、他人にうつす可能性もほぼ無くなります。

ワクチンは模擬のウイルスを使った「実践訓練」で「机上の勉学」ではありません。よって、ワクチン接種後早期に先鋒である自然免疫軍が実際にサイトカインと呼ばれる可溶性因子を産生します。これにより「接種部の痛みや腫れ」、「頭痛」、「倦怠感」、「微熱」などが起こります。つまり、「副反応」と呼ばれる現象は、新型コロナウイルスに対する免疫軍の訓練の開始を教えてくれ、恐れる必要はないと思います。一方、アナフィラキシーの機序は異なります。T細胞軍には、感染症に対処するTh1部隊と、アレルギーを起すTh2部隊が存在し両者が拮抗しあっています。Th1部隊は病原体のもつ抗原を認識して増え、Th2部隊はアレルギーの原因となるアレルゲンを認識して増えます。ワクチンは病原体の抗原を接種してTh1部隊を増やす手法です。しかし、重度なアレルギーがある方はTh2部隊が常時優位な状態にあり、ワクチンの添加物である脂肪をアレルゲンとして誤認して、Th2細胞部隊が増えてしまう可能性があります。アナフィラキシーが起こる危険性は新型コロナウイルスRNAワクチンでは約20万人に1人で、季節性インフルエンザワクチンの約100万人に1人より少し高くなります。よって、過去にアナフィラキシーを発症された経験のある重篤なアレルギー疾患の方はRNAワクチン接種対象から外されています。

 

(ワクチンの必要性):G7加盟国の新型コロナウイルス感染による死者数の動向をみると、2つのパターンに大別できます。昨年23月の第1波で多くの死者を出した国では、昨年12月から今年1月の第2波の死者数は第1波に比べ同程度、やや減少、または僅かに増加しています。イタリア、アメリカ、フランス、カナダ、イギリスがこのパターンを示しています。一方、第1波を抑え込み死者数が少なかった国では、第2波の死者数は約24倍に増えています。このパターンはドイツや日本に認められます。すなわち、いくら都市封鎖により死者数を一時的に抑え込んでも、いつかは「死者数の爆発的増加を認める波」がくるという事です。

 

 

言葉は悪いですが、共存が必要なウイルスが出現すると「サバイバルゲーム」が始まります。人類全員が感染して免疫を持つまでは終息はなく、感染に負けた方は亡くなり、打ち勝った方は生存していくことになります。過去の代表例は「スペイン風邪」かもしれません。この様なサバイバルゲームに終止符を打ったのがワクチンです。実際の感染に比べてリスクを極限まで低くしたワクチンにより、人類全員が感染したのと同じ状況を作り出してくれます。例えば、乳幼児にとって、出会う病原体全てが初めての体験になります。よって、ワクチン開発以前には多くの乳幼児が「サバイバルゲーム」を克服できずに亡くなっていました。1920年代には乳幼児期に1000人中189人(18.9%)が亡くなっていますが、現在ではワクチンさらには衛生状態の改善により乳幼児期の死亡率は1000人中約2人(0.19%)まで著減しています。本邦で乳幼児に接種されているワクチンは、「結核」、「ロタウイルス」、「ジフテリア」、「百日せき」、「破傷風」、「ポリオ」、「はしか」、「風疹」、「みずぼうそう」、「おたふくかぜ」、「季節性インフルエンザ」、「日本脳炎」、「B型肝炎」、「肺炎球菌」です。これほど多くの病原体と我々は既に共存しており、ワクチンのおかげでこれらの病原体との「サバイバルゲーム」に打ち勝ってきた事になります。一方、ワクチン接種が充分にいきわたらないアフリカでは乳幼児の死亡率は未だ1000人中77人です。この様にワクチンは「サバイバルゲームを解消してくれた救世主」です。しかし、新型コロナウイルスを「今共存しているウイルス」と同程度の風土病にするためには、最低でも「全国民の60%以上」が接種を受けなければ意味がありません。もし、60%に到達しなければ、今年12月には再び緊急事態宣言を発令しなくてはいけない状況が訪れる可能性も否定はできず、日本国の財政破綻さえも危惧されるのかもしれません。

 

(ワクチンの効果):ファイザー社のRNAワクチン接種が世界で最も進んでいるイスラエルからワクチン効果について2021218日に報告されました。ファイザー社のワクチンは2回の接種が必要ですが、1回目接種後の結果報告です。新型コロナウイルス感染者は、ワクチン接種をしていない方では1万人に7.4人に認められますが、ワクチンの1回接種で、2週間たてば5.5人に、4週間たてば3人にまで減少しています。結果、わずか1回の接種でも8991%の予防効果があるようです。非常に期待がもてる結果です。また、HIVや季節性コロナウイルスといった異なったウイルスを代用した実験により、変異株に対するファイザー社のRNAワクチンの効果について異なった結果が報告されていました。他のウイルスを代用するのでなく、新型コロナウイルス自体を持ちいた実験結果が28日に報告されました(Xie X, Nat Med, 2021, 2/8)。イギリス由来の501番目のアミノ酸が変異した「N501Y」株、さらには南アフリカ由来の3ヶ所のアミノ酸が変異した「E484K + N501Y + D614G」株に対してでさえ、ファイザー社のRNAワクチンは効果があると報告されています。また、「N501Y」変異株に対する中和効率がファイザー社のRNAワクチンで3.3倍、アストラゼネカ社のDNAワクチンで2.1倍低下する可能性が218日に報告されました。「エッ、3倍も低下」と心配されるかたもいらっしゃるかもしれませんが、ご安心下さい。抗体の強さは対数的に変化します。つまり、少なくとも10倍単位の変化で効果に影響が出始めるため、数倍単位で弱くなっても大勢に影響はないことになります。事実、著者たちも「N501Y変異株はワクチンから逃れる事はできない」と締めくくっています。(ワクチン効果についてはPDF版の「(27)ワクチン開発は?」と「(28)ワクチン接種回数は?」をご参照ください)

 

(高齢者とワクチン):「免疫が低下しているのでワクチンは意味がない」と思われる高齢者の方がいらっしゃるかもしれませんが、誤解です。皆さんは体内に様々な病原体を既に持たれています。例えば、リンパ節や脾臓が腫れてサイトカインストームを最も起こし易い「伝染性単核球症」と呼ばれる病気は、「EBウイルス」により引き起こされます。ほとんどの日本人は乳幼児期に親から感染し、EBウイルスを体内に一生涯持ち続けています。体がマヒしてしまい最後は寝たきり状態になってしまう「進行性多巣性白質脳症」という病気を起こす「JCウイルス」も、ほとんどの皆さんが体内にお持ちです。免疫軍が病原体が悪さをしないように常に見張ってくれているおかげで、命さえも脅かすこれらの病原体と我々の身体は日夜一緒に過ごす事ができています。過度な免疫低下により、これらの病気が発症してしまった方は例外ですが、それ以外の高齢者であれば「免疫が今でも伝染性単核球症や進行性多巣性白質脳症から守ってくれている」ように、ワクチンも新型コロナウイルスから守ってくれます。事実、新型コロナウイルスワクチンが71歳以上の高齢者にも有効な事は既に報告されています(Jackson LA, New England J Medicine 2020, 9/27)。

 

「余生が短いので、ワクチンは若者達に回したい」とお考えの高齢者の方もいらっしゃるかもしれませんが、お考え直し頂ければ幸いです。もし、若者達のみに限局して感染が起こっていれば、被害は季節性インフルエンザ以下で今のような状態にはなっていないと思います。高齢者に集中して激増する重症化により、医療の逼迫を招いているのが現状です。もし、ワクチン接種をされず重症化してしまうと、現在の「指定感染症2類相当」、さらには入院拒否すれば罰金を科せられる「特措法」下では、本人の意に反して入院を余儀なくされる可能性があります。すると、集中治療室の病床が使用され、一命をとりとめても、長期間のリハビリテーションが必要になり、集中治療室の病床を長期間に及び使用してしまう結果につながりかねません。これにより満床になれば、交通事故などで搬送される若者の受け入れが不可能となり、救える命を失う可能性もあります。新型コロナウイルスによる医療逼迫を防ぐためには「高齢者の方が重症化しない」、すなわちワクチン接種を早期にして頂く事が最善策と個人的には思います。

 

(過去の感染歴とワクチン):新型コロナウイルスに感染した経験がある方のワクチン接種についての判断は難しいのかもしれません。PCR陽性になった経験があっても、擬陽性の方も多く、発症しても軽症であれば抗体ができていない可能性も高く、ワクチンは受けられた方が無難かもしれません。一方。抗体はできていなくても新型コロナウイルス感染で何らかの症状が有ったヒトでは、1回のワクチン接種で1:100,000という高濃度の抗体産生が誘導され、2回目の接種は必要ない可能性が21日に報告されました(Saadat S, medRxiv 2021, 2/1)。しかし、米国国立衛生研究所(NIH)のアンソニー・ファウチ所長は、「検体数も26人と少なく判断するのは時期尚早」との警告を発せられています。抗体が陰性の方は2回接種するのが無難と私も思います。

 

事実、新型コロナウイルスに感染しても抗体が陰性の方109人の調査では、1回のワクチン接種では不十分な抗体量(11000)しか産生されていません(Krammer F, medRxiv 2021, 2/1)。一方、抗体が陽性であった方41名では、1回のワクチン接種で抗体量は1:10,000以上と充分量に達しているようです。新型コロナウイルス感染により少なからず抗体ができているわけですから、2回目の接種は必要ないかもしれません。また、B型肝炎や風疹などでは抗体濃度を調べて、ワクチン接種の必要性が判断されます。過去の新型コロナウイルス感染で、1:10,000以上の十分な濃度の中和抗体を既に持たれている方は、RNAワクチン接種の必要性はないのかもしれません。(ワクチン接種回数についての可能性はPDF版の「(28)ワクチン接種回数は?」をご参照ください)

 

(重症化リスクとワクチン):ワクチンに限らず、全ての薬に副作用は起こります。また、RNAワクチンは初めて用いられているため、現在の世界の状況から「重篤な副作用は稀」とは言えても、「100%安全で、将来的にも何も起こらない」とは誰も言えないと思います。しかし、少なくとも60%以上の国民がワクチン接種を受けなければ、今と同じ状態が繰り返され国家の財政破綻につながる危険も秘めてきます。よって、「接種による利益はリスクを上回る」と言うのが各国のワクチン承認の判断です。新型コロナウイルスで重症化する要因もわかってきているので、これまで報告された重症化要因をまとめてみました。要因が重なれば重なるほど重症化の危険は増してきます。「自分自身の新型コロナウイルスに対する重症化リスク」、「職場や家庭でうつしてしまう可能性のある方の重症化リスク」、「ワクチン接種による自分自身のリスク」を総合的に考えるうえでご参考にして頂ければ幸いです。

 

 

 

[2020928日時点でのまとめ(新たな情報も少し追記しています)]

20204月に3ページから始めた「新型コロナウイルスに打ち勝つための独り言」も、報告された結果をアップデートしている内に60ページ以上になってしまいました。世界中の医師や研究者の努力により膨大なデータが蓄積されて来ている事を示しています。内容が多くなりすぎたので、2020928日時点での結果を、科学的根拠に基づき表にまとめてみました。

 

(1)       死亡者数から見て、新型コロナウイルスは日本人にとって、基礎疾患の無い49歳以下の方では季節性インフルエンザより怖くなく、高齢者では誤嚥性肺炎よりも怖くないと思います。

 

 

(2)       免疫学的に見て、新型コロナウイルスは「先鋒」である自然免疫でも対処できる「弱い敵」であると思います。ただし、弱いながら免疫軍の目を盗み「血栓」を起こす「テロウイルス」であると考えられます。血栓症を起こしやすい方は注意が必要で、日頃から血栓症予防に心がける必要があるかもしれません。特に、食欲がなくなったり、熱が出たときは十分な水分補給が必要です。(委細はPDF版の「(9)血栓症は?」と「(20)免疫にとっての新型コロナウイルスの強さは?」をご参照ください)

 

 

 

(3)       新型コロナウイルスは弱いため、高齢者でも約4割の方は無症状です。一方、高齢者では獲得免疫が低下しているため、ひとたび症状が出ると約3割の方は重症化してしまいます。すなわち、高齢者施設では、「知らず知らずのうちに感染を広めてしまう方」と「重症化しやすい方」が混在されている状況が推測されます。高齢者関連施設に特化した重点的検査(Focused Protection)、さらには症状が出た方への早期の治療介入が必要かもしれません。(委細はPDF版の「(38)高齢者保護とFOCUSED PROTECTIONは?」をご参照ください)

 

 

(4)       一方、9歳未満の子供達は、新型コロナウイルスに感染しにくく、重症化も起こしにくいため、幼稚園や小学校では季節性インフルエンザに準じた対応で充分なのかもしれません。(委細はPDF版の「(7)新生児、小児、大学生は?」をご参照ください)

 

 

(5)       世界の現在の状況は「集団免疫はできる」事を教えてくれています。ただし、「免疫を持つか?」の判断には、新型コロナウイルスは免疫軍にとって弱い敵のため、従来のIgG型抗体検査では不十分です。既存のIgA型抗体検査に加え、新型コロナウイルスに対する細胞性免疫を確認するための皮内テストやIFN遊離テストの開発が必要です。

 

(6)       人口あたりのPCR検査数が日本の10倍以上のアメリカでさえ90.8%の感染者が見逃されています。また、「PCR陰性」は「感染していない証明にならない」事もわかっています。むやみやたらに行うPCR検査でなく、高齢者施設などへの重点的なPCR検査の方が合理的かもしれません。

 

(7)       感染拡大防止には、「人にうつさないための、思いやりマスク」が重要です。ただし、マスク着用による健康被害も懸念されるため、他人に接しない所では、マスクを外す習慣が必要と思います。(委細はPDF版の「(33)マスク文化は?」をご参照ください)

 

(8)       風評被害による医療の萎縮、そして「本当に検査が必要な方」が検査を躊躇する悪循環を招いている可能性が危惧されます。「風評被害を起こさない環境作り」が重要かもしれません。

 

(9)       季節性インフルエンザとの同時流行に備え、症状があれば近くのクリニックで新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの迅速検査を同時に受けられる体制が理想的と思います。

 

(10)      医学的に考えると、強いウイルスであれば免疫力の低下した高齢者に相当数の犠牲者がでてしまいます。すると、世界一の高齢化社会である日本の死亡者数は他国より多くなるはずです。しかし、結果は逆で、PCR検査数が少ないにも関わらず日本の死者数は他国に比べて顕著に低いのが現実です。新型コロナウイルスの死につながる基礎疾患は、血栓症を起こしやすい鎌状赤血球症、萎縮性黄斑変性症、肥満等です。これらの疾患は、日本人には稀であることが幸いしているかもしれません。また、自然免疫が主に戦う高齢者でも、無症状の方が多くいらっしゃいます。幼少期に自然免疫を訓練してくれた日本株BCGが、重症化から守ってくれている可能性も否定はできません(委細はPDF版の「(14)新たな免疫学的概念は?」をご参照ください)。また、日本の集中治療室での救命率は世界最高水準です(委細はPDF版の「(11)日本の救命率は?」をご参照ください)。このような多くの恩恵により「他国の人に比べて、日本人は新型コロナウイルスの死に繋がる重症化から守られている」と考えてよいと思います。