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 週刊:がんを生きよう ― 第2部 ―

 第44回目  肺がんに対する再発予防ワクチンの症例


 患者さん:70歳代男性、喫煙歴あり。合併症:高血圧

 受診までの経過:5年前に肺がん(腺がん、c-T2aN3M0 Stage IIIb)が見つかり、手術
 適応でないことより、抗がん剤2剤による化学療法を開始しましたが、途中から抗がん剤に
 よる副作用が著明となり、抗がん剤治療を中止し放射線治療を受けられました。これらの
 治療にて腫瘍縮小効果がみられ、抗がん剤治療は中断となりました。そこで再発防止のため
 当方ワクチンセンター受診となり、3年7か月前より個別化ペプチドワクチンを開始しました。
  初診時、体調は良好であり血液検査でも軽度のリンパ球減少を認める以外は異常がありま
 せんでした。腫瘍マーカー(CEA)も正常値内でした。

 受診後の経過:ワクチンによる免疫反応増強は放射線治療後であったため遅延しましたが、
 徐々に増強しました。ワクチン投与間隔は2週間隔で開始し、その後徐々に延長して現在では
 12~14週間隔でワクチン投与を継続しております。これまでの3年7か月、再発の徴候はなく、
 ワクチン以外の治療を受けることもなく、元気に過ごされております。高血圧随伴症状や便秘
 がみられたために、血流改善剤の漢方薬である通導散を長期間服用してもらっております。

 考察:一般的に切除不能Stage IIIb肺腺がんの生存期間(中央値)は診断されてから2年半前
 後とされていることより、この方の場合、肺がんと診断されてから4年4か月、ワクチン投与
 から3年7か月経過していることから、予後は極めて良好と判断されます。 この方は、日中
 農業に従事し夜9時前には睡眠される日々を長い間続けておられます。そのような安定した
 日常生活が少なからず免疫機能維持に貢献し、再発防止に役立っていると推察されます。



 第45回目  肺がんに対する再増大防止ワクチンの症例


 患者さん:70歳代男性、喫煙歴あり。合併症:腹部大動脈瘤、冠動脈狭窄症

 受診までの経過:6年前に肺がん(リンパ節転移を伴う縦隔型肺がん、anaplastic  
 carcinoma)が見つかり、手術適応でないことより、抗がん剤2剤による化学療法及び放射線
 治療を受けられました。これらの治療にて一定程度の腫瘍縮小効果がみられました。腫瘍が
 残存するものの、その後の積極的治療を希望されずに、5年前に、再増大防止のために当方
 ワクチンセンター受診となりました。初診時には腫瘍マーカーは異常値を示し、腫瘍残存や
 軽度胸水も見られましたが、体調は比較的良好であり血液検査でも軽度のリンパ球減少を認
 める以外は異常がありませんでした。

 受診後の経過:ワクチン6回後の免疫反応増強は著明であり、その後更に強い免疫増強がみら
 れました。そして腫瘍サイズや胸水の減少及び腫瘍マーカーの正常化が徐々に認められ、ワク
 チン効果によることが推測されました。当方ワクチンは2年半にわたり14回受けられたのち
 終了いたしました。初診からこれまでの5年2か月の間、増悪や再発の徴候はなく元気に過
 ごされております。この間、抗がん剤や放射線治療などは受けておられません。但し、変形
 性脊椎症に伴う腰痛や便秘がみられたために、血流改善剤の漢方薬である通導散を長期間服
 用してもらっております。

 考察:リンパ節転移を伴う非切除縦隔型肺がんの生命予後も最初の方と同様に不良といわれ
 ております。しかしこの方の場合も、肺がんと診断されてから6年以上経過し、ワクチン投与
 開始後からも5年以上経過しておりますので予後は極めて良好と判断されます。ワクチン投与
 後には抗腫瘍効果もみられております。

 まとめ:近年肺がん治療に対しては急速な進歩がみられ多数の新規治療薬が開発されました。
 そのため当方がんワクチンセンターには、それらの治療薬が抵抗性になったあとに受診され
 る方が大多数であります。そのような方々へのワクチン投与の結果につきましては既に報告
 済みであります。今回の2症例は抗がん剤の副作用(症例1)や合併症(症例2)のために
 中途でそれらの積極的な抗がん治療を断念して、当方ワクチンセンター受診となりました。
 最初の方は再発予防、お二人目は再増大防止の目的で個別化ペプチドワクチンを受けられま
 した。ここで紹介したお二人とも受診後3~5年以上経っておりますが、予後良好であり、
 ワクチン効果が見られた症例と判断されました。お二人ともストレスの少ない安定した日々を
 過ごされていることが、がんに対する免疫機能の維持に貢献していると推察されます。


 週刊:がんを生きよう  ― 第1部 ―


  第1~4回目  :飲むがんワクチン物語マウス版 ①~④
  第 5~ 7回目  :ヒト白血病物語 ①~③
  第 8~11回目 :膵臓がんと口内細菌の物語 ①~④
  第12~14回目 :抗がん治療が出来ない方々 乳がんの方の物語 ①~③
  第15~16回目 :抗がん治療が出来ない方々 肺がんの方の物語 ①~②
  第17~20回目 :抗がん治療が出来ない方々 がん進行が著しく
         がん治療効果が期待できない希少がんの方の物語 ①~④

  第21~25回目 :個別化ペプチドワクチンの効きにくい方々:
                  リンパ球数の少ない方の物語 ①~⑤

  第26回目   :   〃  :血液検査でわかりますか?
  第27回目   :   〃  :血液検査でワクチン効果が分かりにくい方
  第28回目   :   〃  :遺伝子検査でわかりますか?
  第29~32回目 :原発不明がん ①~④
  第33~34回目 :小細胞肺がんの物語 ①~②
  第35回目   :がんと睡眠と免疫機能について
  第36~39回目 :若くして発がんした方の物語①~④
  第40~43回目 :がんを生きた方々の悩みとご家族の悩み①~④